1/15 セルDVD【\5,040(税込)】 Blue-ray【\6,300(税込)】& レンタル 販売元:東宝 (C)2009「ハゲタカ」製作委員会 |
巨大中国系ファンドが、大手自動車会社アカマの買収のため送り込んだ刺客・劉一華。
アカマは日本の産業の象徴であり、
アカマが買収されることは「日本が買い叩かれること」を意味する。
そんな未曾有の買収を阻止するために呼び出されたのは、
徹底した合理主義で幾多の企業を買い叩き“ハゲタカ”と呼ばれた男・鷲津だった。
二人の天才ファンドマネージャーが、
使命のため、そして、己の意地のために壮絶なバトルを開始する。
2007年に放送されたNHKドラマ「ハゲタカ」の劇場版。
ドラマは見ていないし、そもそも金融系には疎い。
かつて『金融列島腐食〔呪縛〕』を劇場で見て、
さっぱり意味が判らず、己の頭の悪さを痛感した過去があるので、
「果たして理解出来るのか?」という不安が先行した。
しかしながら、『金融列島腐食〔呪縛〕』から10年。
その間、自分自身も少しばかり企業買収の渦中に置かれたし、
ここ1、2年には、ごくごく身近でそのようなことが頻繁に行われていた。
よって、なんとなーくではあるが、必然的に知識を得ていたようで、
ほぼほぼ理解することが出来た。
鷲津と彼にアカマの危機回避を依頼する芝野、
鷲津が協力を求める元IT企業社長の西野。
そして、テレビキャスターの三島。
これらのドラマに引き続き登場する人物たちの人間関係を知らなくとも、
劇場版を見ればなんとなくその背景は判る。
それでもやっぱりドラマ版は見ておいた方が良いでしょう。
ドラマ版を見ていた人だったら響くであろうセリフや、
登場人物の行動が多々あるように思った。
そういった意味では、
本作を心底堪能できたかと言われれば、ノーなのかも知れない。
それでも十分楽しめることが出来るのは、
本作がドラマを見ていない人にも配慮がなされた作りになっているからでしょう。
そんなわけで、経済=難しそうという先入観を持っている人や、
ドラマを見ていないといった人にとっては、
ちょっと敷居が高く感じてしまう作品かもしれないけど、
あまりその辺は気にしなくても大丈夫でしょう。
で、本作最大のキーポイントは、劉一華のキャラクター造形でしょう。
劉の金に対する執着心は凄まじい。
中国残留孤児であり、貧しい生活に耐えてきた男の生い立ちが伺える。
最初は“敵視”していたんだけど、
いつの間にやら鷲津ではなく、劉に感情移入していた。
そして、アカマに対する劉の真意が明らかにされた時、
鷲津だけでなく、見る者に去来する思いとは・・・。
熱いぜぇ!!
切ないぜぇ!!!
はるか昔に忘れてしまった“何か”を思い出させてくれた。
それは別に経済界に限ったことではなく、
多くの“仕事”にも共通するもの。
情熱だけじゃ飯は食えないけど、
情熱がないのもわびしい・・・。
まさか経済映画でこんな感情を呼び起こされるとは思いもよらず、
良い意味で驚いた。
あと、やっぱり役者陣が言うこと無しだった。
鷲津を演じた大森南朋は、本当に何にでも化けられるカメレオンみたいな俳優だ。
冷徹だけどその心の奥底に抱えた感情が、そこはかとなく漂ってくる。
対する劉役の玉山鉄二も良い。
前半は鷲津を意識してか、コピーロボットのような感じだけど、
中盤から感情を激白させるが、一人の人間としての統一感を損なっていない。
その他、柴田恭平、栗山千明、松田龍平といったレギュラー陣はもちろんのこと、
アカマ自動車社長を演じた遠藤憲一はさすがの貫禄だったし、
劉にほだされるアカマの派遣工・守山を演じた高良健吾も良い演技を見せている。
そして、何といっても社会派エンターテインメントとなっている点が、
個人的にはとても重要だったりする。
ここ最近、邦画で社会派エンターテインメントと呼ばれる作品が、
極めて少なくなったように思う。
色々な政治的な理由があって、製作が困難なんだろうけど、
社会に一石投じるような映画がもっとあっても良いと思う。