2010年01月30日更新

裏#80 『パラノーマル・アクティビティ』ネタバレ編


パラノーマル・アクティビティ

『パラノーマル・アクティビティ』

1/30より池袋シネマサンシャイン、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国にて
配給会社:プレシディオ
(C)2009 Oren Peli d.b.a. Solana Films.




前回、『パラノーマル・アクティビティ』の解説的な文章を掲載したけど、
今回は公開もされたので、感想を述べようと思う。


ただ、本編の内容に触れる文章を読むと楽しみが半減する類の映画なので、
未見でこれから見たいと思っている方は、あまり読まない方が良いでしょう。


以下、ネタバレ。


平凡な一軒家に住む若いカップル、ミカとケイティ(ミカは男でレズではない)。


ケイティは小さい頃から怪現象に見舞われ、家が火事になったという過去を持つ。


そして、不可解な現象が再びケイティを襲い始める。


霊的なことを信じないミカは、ビデオカメラを購入し、
怪現象を映像に収め、事実と原因の究明を試みる。


ビデオカメラは、寝てい間に突然鳴り響く音や、
誰もいないのに動くドアや謎の影を捉える。


更にケイティが夢遊病者のような行動を取る姿が映し出され、
遂には起きている間でも超常現象が起き始める。


何とか解決策を探るミカであったが、その現象はエスカレートするばかり。
やがて二人の身にも危害が加えられるようになる。


という物語をポイント・オブ・ビューで撮影し、
あたかも本当の出来事かのように描いたフェイク・ドキュメンタリー。


見る前は、やっぱり約135万円で作られた作品が100億円を越える興行成績を収めた訳で、
“どんだけ凄い内容なんだ”という期待感があった。


しかしながら一方で、“135万円で良いものが作れるのか?
どうせコケ脅しの内容で、話題先行の凡作じゃないの?”という穿った気持ちも抱いていた。


そんな心境で見たわけですが、前半はとてつもなくダルい。
何度かオチそうになった。


寝室でのシーンが多く、
“あぁ、俺もあのベッドで寝てぇ”ってなぐらい何も起きない。
音が鳴るだけだ。


“起きるかな?”って思わせておいて、やっぱり大したことが起こらない。


しかもミカとケイティの意見がことごとく合わず、口論!口論!口論!


“この映画は痴話喧嘩を見せるための作品だったっけ?”って。


そう言えば、『ブレアウィッチ・プロジェクト』も、
登場人物の3人がいつも言い争っていたことを思い出して、またかと興ざめ。


待つこと30分以上経って、ようやく求める展開となって来る。


がっ、


基本、音で驚かすパターンが多く、ジリジリっと攻めて、
ザワザワとした恐怖を覚えるシーンは一つぐらいしかない。


前にも書いたけど、いきなりデカイ音でドカン!とやられたら誰だって驚くって。


恐怖とビックリって別モノで、
ホラー映画には前者を求めたい主義なので、ちょっと残念だった。
後半は音以外の現象も出てくるが、最後も脅かし系で終わってしまう。


「ヒィッ!」って声が場内の所々から聞こえてきたので、
脅かすという点では作り手の思惑通りだったと言えるのでしょう。


んでもって、ミカとケイティは最後の最後まで意見が合わず口論。
とてもじゃないけど仲の良いカップルとは言えない。


ミカは何とかしようとしているのに、感謝されないで文句言われる。
伊藤Pがミカだったら、「てめー!出てけ!!!」ってケイティに言うな。


怪現象の原因はケイティにありそうなんで、
彼女がいなくなれば安泰だしさ。


で、オチなんだけど、『ブレアウィッチ・プロジェクト』を筆頭に、
『クローバーフィールド/HAKAISHA』『REC/レック』といったこの手の作品がそうだったように、
怪現象の原因がキチンと明かされることなく、
いやーな形で終わるという不完全燃焼なエンディングだった。


一般試写で見たんだけど、後ろで鑑賞していたお兄ちゃんは、
「やっぱりこういう終わり方か」って、ガッカリするように独りゴチっていた。


まぁ、同感だな。


でもね、確かに“やっぱりね”の内容ではあるが、
見ている最中、何度も“本当に135万円で作ったの?”って思ったのもまた事実。


今やパソコン一台持っていて、それなりのスキルがあれば、
誰でも編集が出来る時代だけど、
製作費135万円の割には、なかなかしっかりとしたエフェクトだったし、
サウンドプロダクションもそれなりだった。


オーレン・ペリ監督がアニメ・ゲーム業界出であることは後で知ったが、
今思い返してみても、どうやって135万円で撮ったんだろう?
と思わせるシーンが幾つかあった。


弊社スタッフがペリ監督にインタビューした際、
撮影方法に関しては、一切口を開かなかったという。


なんにしても、結局のところ行き着くのは製作費135万円だ。


本作が注目された時点で、製作費が明らかになっていたかどうかは知らないけど、
多分、アナウンスされていたんでしょう。


“135万円で作った割りには良く出来ている”
“とても135万円で作ったとは思えない”


という口コミが広がったんだと思う。


だって製作費を知らないで見たら、絶対に“何これ?”って思うはずの内容だもん。


そもそも135万円で作った映画が全米で大ヒットを記録したという話題性がなかったら、
多分スルーしちゃう作品でしょう。


まぁ、『ブレアウィッチ・プロジェクト』以来の大化け映画であることは間違いないし、
大掛かりな宣伝をせずに、口コミだけで大ヒットしたという事実だけでも、
本作に価値を見出すことが出来ると思う。


ただ、二匹目のドジョウを狙って類似作品が出回ったり、
ハリウッド自体が低予算化に向かったりしないことを祈る。
ハリウッドもデフレじゃ悲しいよ。


最後に、幾つか情報を。


本作を見たスピルバーグが、「これ以上のものは作れない」と判断しリメイクを諦め、
追撮を指示して、ほぼオリジナル・バージョンに近い形で公開されたという話を前回書いた。


で、どのシーンが変わったかというとエンディングだ。


***************************************
<エンディングの話なので、読む際はご注意ください>


オリジナル・バージョンのエンディングは、
1階に降りたケイティの叫び声を聞き飛び起きたミカが、1階へと降りる。


二人の叫び声と争うような音が聞こえた後に、静寂。


暫くして、包丁を持った血まみれのケイティが寝室にやって来る。
放心状態で何日も過ごすケイティ。


やがて警官2人が訪れる。


ケイティが警官の方へ行くと、警官は包丁を持っていたためケイティを射殺。


ここで映画は終わる。


更にDVDにはまた別のエンディングが収録されている。


ケイティの異変に気が付きミカが1階に行き、叫び声と騒音が聞こえた後、静かになり、
包丁を持った血まみれのケイティが寝室にやって来るまでは一緒。


その後、ケイティがカメラの前にやって来て、
持っていた包丁で自分の首を掻っ切って倒れたところで終わる。


公開バージョンも含めて全バージョン見たけど、
DVD収録版が一番しっくり行くかな。


あと、パート2の製作がリリースされている。


ペリ監督はプロデューサーに周り、
『ソウ6』のケヴィン・グルタートが監督を務める。


公開は2010年10月22日で、モロに『ソウ7』とかち合う。
(『ソウ7』の監督は『ソウ5』のデイヴィッド・ハックルらしい)


この手の映画って、“初回限定!話題性ありき!”だと思うんで、
あんまり期待しないでおこう。


因みにオーレン・ペリ監督の次回作は、エイリアンものの『エリア51』で、
現在ポスプロ中とのこと。


これもポイント・オブ・ビューで撮影されており、
UFOや宇宙人の噂が絶えない“エリア51”に侵入し、
真実を探ろうとする人たちを描いているらしい。


『パラノーマル・アクティビティ2』よりは興味をそそられた。



■『パラノーマル・アクティビティ』
オーレン・ペリ監督&スティーヴン・シュナイダー(P) インタビュー テキスト
オーレン・ペリ監督&スティーヴン・シュナイダー

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「パラノーマル・アクティビティ」 CS(映画専門チャンネル「ムービープラス」) にて放映してたんで。 題名は「超常現象」の意 モキュメンタリーホラーの... [詳しくはこちら]

コメント (14)

あの:

自分は下調べせず、内容も知らずにおもしろそうだからと見ました。

かなり怖かったです。

これが作られたものだと知らなければもっといい評価を得るのではないでしょうか?

あなたのような人はどのような映画か軽く知って映画を見るためつまらないと言っているんですよ。

あなたのような映画鑑賞スタイルでは一生本当にすごい作品を見つけたとは思えないでしょうね。

伊藤P:

>あのさん

別にやりあうつもりはありませんが、コメント返させて頂きます。
基本、見たい映画に関してはなるべく情報を得ない状態で見るようにしています。
本編上映前にかかる予告編も見たいと思っている作品は、目をつぶって出来る限り見ないようにしているほどです。
『パラノーマル・アクティビティ』も同様で、135万円のバジェットの映画が全米で大ヒットしたということ以外、他にほとんど情報を得ないで見ました。
あなたの言う「軽く知って」がどの程度なのか分かりませんが、
135万円、あるいは超低予算で作った映画だと知っている状態で本作を見た人は少なくないと思います。
それから「つまらない」なんて一言も書いていません。

>「あなたのような映画鑑賞スタイルでは一生本当にすごい作品を見つけたとは思えないでしょうね」

もう既に、本当にすごいと思える作品に何本も出会っていますので、ご心配には及びません。

あや:

私もみましたけど、正直この映画は陳腐でした。
驚かすだけしゃなく、ストーリー性のあるホラーをお望みの方は見るべきではないです。
後悔します。

よう:

同感です。
制作費等どうでもいいですが、去年から楽しみにしてて
最近ようやく見に行ったのにがっかりで怒りすら覚える映画でした。
なぜ、今まで悪評が広まらなかったのかただただ疑問ですね。

けい:

正直つまらないです
内容も何もありません
で、面白いと評価してる人もyoutubeのコメントなどでも良く見ますが不思議でしょうがない・・・工作員かと疑います
怖くもないです。これが100年前の人に見せたら怖いかもねってレベルです。
色んな映画や娯楽が散乱してる現代でこの映画が評価されるのはおかしいと思います。
前フリのプロデュースの勝利しか感じられない。詐欺映画と言ってもいいレベル

Anonymous:

ホラー好きが構えて観ると後悔する。
深夜なんとなくテレビを観てたらやってたっていう状況だったら、もっと楽しめたと思う。

以下の点が共感できなかった。
「キレられてるのに、ミカの調査がエスカレートしていく」
「寝るときのポジション変わってやれば?」
「寝室のドア閉しめれば?」
そうしたら、クソ映画になっちゃうけどw

ともてもシンプルな絵なのに、それなりに楽しめた。
作り手側からみたら評価される映画。

ゴーヨシ:

一番最初のコメントした人可哀想だなぁ。
まず断わっておくけど、俺はコメントするのは初めてだ。自演じゃない。
IPとか出てるんだったらわかるだろうけど。

はっきり言って自分も怖かった。
本当に本当に怖かった。
なぜならラストシーンまでフィクションだと知らなかったからだ。
スーパーサイズミーなどのドキュメンタリー映画のすぐ近くに置いたTSUTAYAの店員さんが賢かったのかもしれない。
けどやっぱ、一ミリも情報を持たずに適当に手にとったのが原因だと思う。
タイトルだけ聞いたことあったから見てみた。それだけだ。
単純なドキュメンタリー映画とものすごく雰囲気が似ていた。
そもそもホラーなんて怖くて普段見ないのに、オススメコーナー的な所にあった為に気付けなかったのに後悔だ。

多分、アメリカでは最初に何一つ情報が与えられなかったんだと思う。
BTTFの最初の公開時と同じ状況だったのだろう。
コメント1さんも内容からしてホラーだとすら知らなかったに違いない。

作り物だと知っているか・いないか。

これがこの映画のキモだと思う。
貴方のようなホラー大好きで、映画評論家気取りな、頭の固い人間には向いていない作品ですよ。
ちなみに、冷めた目線とカッコつけた文章でコメント1さんの揚げ足とりしてる様じゃブログも向いてません。

Anonymous:

個人の感想を書いただけなのにw
きっと、自分が怖い(面白い)と思った物を根こそぎ逆の感想を言われて悔しかったんだろうな。
作品なんて、その人がどういうスタンスで見ようと自由だし、作品が余計な情報を流さないなら、余計に受けて側がどういうスタンスで見ようと自由で、結果、見た感想を言ったのに、あのやゴーヨシに蔑んだ言い方されて寧ろ気の毒ですよ。
世の中には、自分の意見以外は認めない人がいるんですね。
まぁ、自分としてはパラノーマルよりも2人の方が面白かったですよ。

paris:

つまらない言い合いしてますね。
どっちの味方でもないですケド
言い争いのしかたが中学生以下ですよ。
読んでて笑えてきたので
コメントさせていただきました。

伊藤P:

>Jさんへ


コメントありがとうございました。


投稿していただいたコメントは、
意味不明なものや実名が分る人に対しての誹謗中傷をしているコメント以外、
どんな意見でもなるべく掲載するようにしております。


しかしながら、Jさんが投稿してくださったコメントを掲載すると、
またつまらない言い合いが始まってしまうような気がしたので、
今回、掲載を控えさせてもらいますね。


でも、Jさんが伝えたいと思ったお気持ちは、きちんと受け取りました。


引き続き、本ブログをご愛好頂ければ幸いです。
そして、また良かったらコメントを投稿してくださいね。
よろしくお願い致します!


※Jさんに気持ちをお伝え出来るツールが他にないので、
コメント欄で返させていただきました。

⊂二二二( ^ω^)二⊃ブーン:

>なぜならラストシーンまでフィクションだと知らなかったからだ。

フィクションに決まってんだろwwwwww

ドキュメンタリーは全てノンフィクションで
実体験をそのまま撮影してるとでも思ってんのかよ

そもそも前情報とか関係なしにホラー映画を借りて
100%実話のノンフィクションだと思い込めちゃうのがスゴいわ

幸せな脳味噌してんなぁw

おれだよ:

今日初めて catvでみた まさに突っ込み所
満載 ドアはかならず開けっ放し だらしねーぞ

昔から ホラーは突っ込み所あるんだけど 被害者が
全速で逃げて 物陰にかくれて ほっとして
振り向くと ドッと現れるパターン それはいいんだけどね
被害者 ハアハアいってるんだから お前も息切らせよ
息一つ乱さない どれだけ鍛えてんだよ

おれだよ:

今日初めて catvでみた まさに突っ込み所
満載 ドアはかならず開けっ放し だらしねーぞ

昔から ホラーは突っ込み所あるんだけど 被害者が
全速で逃げて 物陰にかくれて ほっとして
振り向くと ドッと現れるパターン それはいいんだけどね
被害者 ハアハアいってるんだから お前も息切らせよ
息一つ乱さない どれだけ鍛えてんだよ

たこさん:

DVD版に稲川淳二のコメント入りが収録されてますが、
めちゃくちゃ笑えます。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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