2/20より池袋シネマ・ロサにてレイトショー 配給会社:アムモ (C)2009アムモ |
ダラダラと毎日を過ごすだけで、何をやっても中途半端な男ヒデジ。
そんな彼氏を困らせるため、狂言誘拐を企てる女アザミ。
弟に歪んだ対抗心を燃やし、自らの肉体を鍛えることに執着する寡黙な兄祐一。
都合よく使われるだけの情けない男・田辺。
女にいいように振り回されるグダグダな男たち。
どこにでもいそうな男女の歪な関係が次第に暴かれていく様を、
ナンセンスな笑いと空虚感が混じりあった独特の世界観で描いた作品。
監督は自主映画『まだ楽園』で脚光を浴び、
脚本を手掛けた『休暇』で高い評価を得た佐向大。
前作『まだ楽園』にもちょっと抜けた感覚はあったが、
この新作ではその部分が突き抜けており、
とぼけた感が全編を支配している。
基本、みんなアホでしょうもない奴等ばっかり。
どいつもこいつもが浅はかで滑稽。
登場人物のやり取りから生まれる“間”が絶妙で、
大笑いではないクスクス笑いを見る者から引き出す。
特に大杉蓮の出演シーンの間は最高に素晴らしかった。
こういう間を活かした演出をする場合、
やはり役者にかかってくるウェイトも大きい訳だが、
全役者が自然な演技を披露し、
アホだけど味のある人物に仕上げている。
小林且弥と杉山彦々がそれぞれ演じるヒデジとか田辺とか、
本当にその辺にいそうなキャラだ。
そして、男たちを翻弄させるアザミを演じたみひろが、
(多分に贔屓目だけど)素晴らしい。
これだけ演技が上手いと、
彼女が出演しているAVのドラマパートの芝居も見たくなるよ。
ということで、見よっかなぁ〜・・・てな欲望が芽生える。
そんな役者たちによって息吹を吹き込まれた魅力的な登場人物たちが、
間の抜けた珍騒動をマッタリと繰り広げるんだけど、
ヒデジが実家に帰って親に金の無心をした辺りから、
展開がガラリと変わり、突然疾走しだす。
オチもそう来るかい!って、
良い意味で裏切られた。
『まだ楽園』同様、若者の生態を照射した佐向大監督。
本作ではそれを笑いというオブラートに包んだ分、見易くなっているし、
プロの役者を使った結果、クォリティも高くなった。
みひろにはちゃんと濡れ場も用意するなど、
ファン心理もちゃんと理解している。
コンビナートを上手く使った表現とか、
センスの良さを感じた。
そして、何よりも希望と絶望の間を巧みに切り取る作家性を、
今後の監督作品でどう昇華させていくのか?
次回作が楽しみでたまらない。
■『ランニング・オン・エンプティ』
※みひろ インタビュー テキスト
※みひろ 取材記