3/12より丸の内ルーブルほか全国にて 配給会社:ワーナー・ブラザース映画 (C)2009 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED |
名探偵と言えば、シャーロック・ホームズ。
頭脳明晰で、スマート。
身なりは鳥打ち帽に、ステッキとパイプ、
洒落たスーツとロングコートといういかにもなイギリス人紳士。
そんなイメージだ。
しかし、本作のホームズはそれを見事に覆す。
探究心旺盛で頭が良いのは変わらないが、
無精ヒゲをはやし、身なりも着崩した感じで、ちょっとだらしがない。
事件がない時は部屋から一歩も外に出ず、怠惰な生活を送っている。
室内で銃をぶっ放し、武術の達人という豪快で荒くれ者の一面もある。
本作のキャストとスタッフは、ホームズの人物像を掴むために、原作を読みふけり、
これがコナン・ドイルが描いたシャーロック・ホームズの原点だと確信したという。
ホームズ=紳士という風に刷り込まれた身としては、
この映画で描かれたホームズ像はとても新鮮だった。
そして、ホームズに散々振り回されながらもコンビを組み続けるワトソン医師と共に、
難事件に挑む訳ですが、今回は、黒魔術的な事件と対峙する。
やっとのことで捕まえ、絞殺刑に処せられた連続猟奇殺人犯ブラックウッド卿が生き返り、
自らの野望を達成するべく再び殺人に手を染め始める。
拘留中も看守に呪いをかけ、処刑後、重たい墓石を破壊して復活するブラックウッド卿。
これだけでも「どうやって?」となる。
更に19世紀末のイギリスでは解明出来ないような不可解な出来事が次々と起こり、
様々な謎がホームズとワトソン、そして、観客に投げ掛けられる。
この謎への興味は尽きることがなく、見る者を最後まで牽引していく・・・
のだか・・・
その謎解きにはちょっと納得がいかなかった。
特に絞首刑で死亡が確認されたのに生き返ったという謎が、一番気掛かりだったのに・・・。
でも本作は、そんな謎解きの温さも“まぁ、良いか”と思わせてしまうパワーがある。
それは先述のホームズの斬新で強烈な人物像、その機転と推理、
ホームズとワトソンのコンビネーション、
ヒロインであるアイリーン・アドラーとホームズのつかず離れずの関係、
そして、格闘シーンや爆発、倒壊シーン、スリリングな危機脱出、優れた美術とセット、
石畳みから始まるタイトルや凝ったエンドロールといった随所に見られるセンスの良さ等、
見所が満載だからだ。
役者も良かった。
主演のロバート・ダウニー・Jrは、
シャーロック・ホームズに新しい息吹を吹き込むことに成功している。
ゴールデン・グローブ賞は受賞したけど、なんでオスカーにノミネートされなかったのか?
ジュード・ロウも冷静沈着で理性のあるワトソン役にピッタリだった。
レイチェル・マクアダムスはどこかミステリアスで勝気なんだけど、
たまに女性らしい弱さを見せるアイリーンを愛らしく演じていて、好感が持てた。
本格ミステリー映画なのだから、謎解きを大切にして欲しいと思いながらも、
娯楽要素が満載の第一級のエンターテインメント作品だと感じた。
間違いなく作られるであろう続編が早くも楽しみだ。
世界中で大ヒットを記録している本作が、
ちょっと洋画復調の兆しが見え始めているここ日本で、
どのように受け入れられるのか、そこもまた興味深い。
最後に、本編そのものとはあまり関係がないが、
日本語字幕で分かり難い箇所が度々あったことを明記しておきます。
(完成披露試写会で見たので、その後改善されているかもしれません)