3/26 DVD セル【\3,990円(税込)】&レンタル 発売・販売元:アミューズソフトエンタテインメント (レンタル販売元:メディアファクトリー) (C)2009「クヒオ大佐」製作委員会 |
米特殊部隊ジェットパイロットのジョナサン・エリザベス・クヒオ大佐。
華麗なる経歴と流暢な日本語で次々と女性をおとす彼は、
実は名前も経歴もでっちあげの稀代の日本人詐欺師だ。
今は弁当屋の女社長・しのぶを夢中にさせているにも係わらず、
博物館の学芸員の春や、銀座のホステス・未知子もその毒牙にかけようとしていた。
しかしそんな中、しのぶの弟・達也に、クヒオが詐欺師だと見抜かれてしまい……。
(シーエスGyaO 「最新映画ナビ」作品原稿より)
いきなり第一部として、湾岸戦争のニュース映像から始まり、
内野聖陽演じる外交官とアメリカ政府の「自衛隊出さんのなら、金出さんかい」という交渉が、
バカバカしく描かれる。
“あれ?パイロットと偽り、女性たちを騙していた実在の詐欺師の物語じゃないの?”って、
一瞬、間違えて違うDVDをターンテーブルに乗せたのかと思ってしまった。
しかし、程なくして、第二部「クヒオ大佐」がスタート。
どうやら間違っていなかったようだ。
時代は、第一部に引き続き、1991年。
「母はエリザベス女王の妹の夫のいとこ、父はカメハメハ大王の末裔」などと言って、
女性を騙す詐欺師ということで、もっと古い時代の話しなのかと思っていたら、
意外にもそんなに昔の話ではないと知り、ちょっと驚いた。
こんな胡散臭い話に騙されてしまう現代人がいるんだね。
そんなことを思いつつ見たわけですが、
変なイントネーションで「嘘」を並べるクヒオ大佐と、
それを信じてしまう女性、騙されない女性、
金ではなく心を奪われる女性のやり取りが面白く、
かなり眠い状況下で見たのにも関わらず、一度も睡魔に襲われることがなった。
本作の面白さを牽引したのは、役者の演技に因るところが大きいと思う。
堺雅人は、つかみどころのない怪しいクヒオ大佐をトボケた感じで演じ、
映画の世界観を決定付けている。
そのクヒオ大佐と絡む女性陣を演じた
松雪泰子、満島ひかり、中村優子も役柄にドンピシャはまっていた。
松雪泰子の持つ危うさ、満島ひかりの陰影の魅力、中村優子の芯の強さ。
女優さんたちのそれぞれの良さが、引き出されていたように思う。
特に満島ひかり。
たまりまへんなぁ〜。
そして、クヒオ大佐をゆする達也を演じた新井浩文が素晴らしい。
演技と思わせない演技で、完全に達也に成り切り、
作品に溶け込んでいた。
吉田大八監督の演出は、
基本、正攻法だが、時たま印象的な短いショット挟み込み、
“ハッ”とさせられる。
特にレストランでの親子の客とクヒオ大佐のカット割が印象に残った。
いつも平穏なクヒオ大佐が取り乱す。
その理由がクヒオ大佐の生い立ちに大いに関係しているという重要なシーン。
見る者に強いインパクトを与えために、
今までのテンポを突然変えている。
こういう演出は大切だ。
また、冒頭に湾岸戦争のパートを入れることによって、
クヒオ大佐がアメリカ、しのぶが日本を象徴していることを指し示し、
未だアメリカの言いなりである日本の現状を皮肉っていることが判る構成になっている。
ドラマも役者も演出も良くて、風刺も効いている。
これは中々良くできているなぁーと思いながら見ていたのですが、
ラスト10分で、思いっきりひっくり返された。
なんですか、この突然のファンタジーは?
クヒオ大佐のこう成りたかったという悲しい妄想は理解できるが・・・。