2010年04月21日更新

裏#81 『タイタンの戦い』


タイタンの戦い

『タイタンの戦い』

4/23より丸の内ピカデリーほか全国にて
配給会社:ワーナー・ブラザース映画
(C) 2010 WARNER BROS ENTERTAINMENT INC AND LEGENDARY PICTURES




古代ギリシャ。ゼウス率いる神々が世界に君臨していた時代。


放漫な神に憤りを感じた人間は、反旗を翻した。


神と人間の争いは日常化し、その戦いに巻き込まれた漁師のペルセウスは、
冥界の神ハデスに家族を皆殺しにされてしまう。


神と人間の間に生まれたペルセウスは、
神からの攻撃を受けつつあるアルゴス国の兵士と共に、神と戦うため旅に出る・・・。


タイタンの戦い


最近、【裏部屋】行きはなるべく避けるようにして来たが、これはアカンかった。


作品の規模、世界観、男心をくすぐる巨大スコーピオン、メデューサ、クラーケンとの戦い、
そして、3Dである。


アクションエンターテイメントとして、
否応無しに期待が高まる作品だ。


個人的には『アリス・イン・ワンダーランド』より楽しみにしていただけに、
このポンコツぷりにはガッカリした。


まず物語がまるで面白くない。


それは危機感と緊迫感の欠落が原因だろう。


ペルセウスは家族を殺されて復讐に燃える。
でも家族との触れ合いの描写があまりに少ないので、
家族の喪失に対する悲しみがあまり観客に伝わらない。


一方、神に歯向かった人間は、ハデスから10日後に海の魔物クラーケンを放ち、
アルゴスを滅ぼすと宣告される。


助かる条件はアルゴスの王女アンドロメダを生け贄として差し出すこと。
ところが、この王女アンドロメダがちっとも魅力的じゃない。


“だったら生け贄にしちまいな!”って、思うわ。


タイタンの戦い
私がアンドロメダよ!


ちゅうか、人類じゃなくてアルゴスが滅びるだけの話で、
“規模ちっちゃくね?”って。


ペルセウスは復讐のため、
アルゴスの兵士はアルゴスのために神に立ち向かうんだけど、
その理由が弱いからちっともドラマチックにならない。


ペルセウスは失うものはもう何もなく、守るべきものもない。
だったらアルゴスの王女アンドロメダと恋仲にすれば、
少しは戦う意義も増すだろう。


でもペルセウスは、彼の守護神イオと恋に落ちる。
なんのこっちゃ・・・。


タイタンの戦い
私が元ボンドガールのイオよ。


ペルセウスが神と人間のハーフだということが、いきなり人間たちに伝わってるし、
ペルセウスとアルゴスの兵士たちとの確執から和解、
友情に至るまでの過程の描き方も下手過ぎる。


『第9地区』みたいにじっくりととは言わない。
ベタベタで良いから、感情の逆転をちゃんと描けば、
もっと締まる作品になると思うんだが・・・。


タイタンの戦い


そんなこんなで、陳腐な物語に見切りをつけて、
アクションを楽しもうと思ったら、今度は3Dがそれの邪魔をした。


アクションシーンに限らず、3Dに見えない箇所がたくさんあった。
立体的でもない、奥行もない。
そんなボヤボヤ映像で、スピーディーなカット割のアクションを見せられたら、
ストレス溜まるわ。


この作品で初めて3D映画を体験した人が、
“これが3Dなの?”って、思わないことを強く祈る。


タイタンの戦い


あと、前の方に座ったんだけど、
普段の姿勢で見ると眼鏡のフレームがスクリーン上部を遮蔽してしまう。
そのためいつもよりも顔を上げて見る必要が生じた。
そんなんだから、途中で首と肩がこっちゃって・・・。


鑑賞しながら首とか肩を揉むのは、周りの方々の迷惑になるから出来ない。
仕方ないので眼鏡を両手で持ち上げ、
なるべく首に負担がかからないようにしながら見た。
そしてたまに眼鏡がズリ落ちる。


あぁー!!眼鏡うっとおしい!


映画そのものがつまらないし、
3Dもなんちゃってで、映像&眼鏡が鑑賞の邪魔になるし、
ついでに日本語の吹き替えは酷いしで、久しぶりに途中で出たいと思ってしまった。


タイタンの戦い


オリジナルの『タイタンの戦い』(81)は、
伊藤Pが小学生低学年の時に公開された。


まだ映画に染まる前にも関わらず、
当時、友達の小林くんと2人で吉祥寺の映画館に貼られたポスターを眺めながら、
“見たいね!”と話したことを今でも覚えている。


結局、親のダメ出しを食らい、映画館で見ることは出来なかったんだけど、
後日、小林くんと一緒にビデオで鑑賞し、
レイ・ハリーハウゼンの手によって生を得たペガサスやメデューサに興奮した。
(因みに81年の『タイタンの戦い』は、ハリーハウゼンが手掛けた最後の作品)


今見るとクリーチャーたちはコマ撮りだから動きはぎこちないけど、
当時はCGなんてないし、SFXを使ったこの手の映画もそれ程多くなかったから、
“人間ではないモノ”が動くだけで、子供たちは大騒ぎさ。


しかし、CG技術の向上により、なんでも描ける現在。
凄い映像を見慣れた子供たちは、
リメイク版『タイタンの戦い』に登場するスコーピオン、メデューサ、
クラーケンにときめくんだろうか?


大人が満足できる内容でない分、
せめて子供たちだけでも楽しんで欲しいんだが・・・。


タイタンの戦い


せっかくリメイクして、今の時代に蘇らせるんなら、、
オリジナル版に興奮した世代も満足するような作品にすれば良いのに・・・。


大枚使って、苦労して作って、そりゃ大変だったでしょうに。
でもこれじゃーねぇ・・・って。


鑑賞後、某有名映画評論家の方からご飯に誘われご一緒させて頂いたんだが、
まぁ、ボロカスでしたね。

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「タイタンの戦い」★★★☆ サム・ワーシントン、リーアム・ニーソン、レイフ・ファインズ、主演 ルイ・レテリエ監督、106分 、 2010年4月23日公開、... [詳しくはこちら]

コメント (2)

シン:

いつも楽しく読ませて頂いています。
CM見てタイタン面白そうだなと思ってたんですが、第9地区を観ようと思います!
クラーケンの顔を見るとクローバーフィールドを思い出します。。。

伊藤P:

>シンさん

こんにちは。伊藤Pです。
コメントありがとうございます。
そう!CMを見ると面白そうなんですよ。
本編を見て「つまんない」と思ったのに、「あっ、面白そう!」って騙されそうになりました。
『第9地区』とどちらを強く薦めるかといえば、『第9地区』ですが、
ポンコツぶりを確認するために『タイタンの戦い』を見るのもオツかもしれませんよ。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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