5/14よりTOHOシネマズスカラ座ほか全国にて 配給会社:東宝東和 (C)2009 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED. |
2003年、イラクの首都バグダード。
米陸軍のロイ・ミラー上級准尉は、大量破壊兵器を探す任務に就いていた。
しかし、いくら探しても大量破壊兵器どころか、
兵器の痕跡すら見つけ出すことが出来ない。
上層部からの情報の信憑性に疑問を抱いたミラーは、
隊を離れて独自の調査を開始する。
対立する国防総省とCIAの権力争いに巻き込まれながらも、
ミラーは情報源である正体不明の人物<マゼラン>を洗い出そうとするが、
その先にはとんでもない事実が隠されていた・・・。
「ジェイソン・ボーン」シリーズのうち、
『ボーン・スプレマシー』、『ボーン・アルティメイタム』という大傑作アクションを作り上げた、
マット・デイモンとポール・グリーングラスが三度タッグを組んだ戦争アクション。
ポール・グリーングラスは現役監督の中で、
3本の指に入るお気に入り監督。
更にポール・グリーングラス監督作というだけでなく、、
編集(クリストファー・ラウズ)、音楽(ジョン・パウエル)、撮影(ハリー・アクロイド)と、
「ボーン」シリーズや『ユナイテッド93』でポール・グリーングラスと組んだスタッフが参加。
俄然見たくなる。
このチームに求めるのは、
有無を言わせない高速カット編集、臨場感溢れるハンディカムでの撮影、
緊迫感を助長させるスコアだ。
まずはそこをポイントに置いて見たんだけど、
もう冒頭からバスバスとカットを割るし、カメラもグラングラン。
音楽もまさにジョン・パウエル。
ポール・グリーングラス節炸裂!
“これだよ!これ!!”と歓喜しておりました。
既にこの時点で伊藤Pの期待に十分応えてくれているのですが、
作品トータルとしては、『ボーン・スプレマシー』、『ボーン・アルティメイタム』を越えてはいないかな。
多分、マット・デイモン演じるロイ・ミラーが、
ジェイソン・ボーンみたいに苦悩しないんで、
あまり情感に訴えることがなかったからかな。
でも、『グリーン・ゾーン』は、十分娯楽映画として楽しめる作品だ。
まず、主人公が大量破壊兵器を探しているというのが面白い。
見ている我々はイラクに大量破壊兵器など存在しなかった事実を知っている。
アメリカ政府は大量破壊兵器がなかったことをうやむやにしてしまったが、
本作では一つの回答を提示している。
勿論、フィクションだけど、“そうかもね”というリアリティはある。
また、イラク戦争を扱ったアメリカ映画は今までもたくさんあったが、
アメリカ側の視点で描かれることが多かった。
『グリーン・ゾーン』ではイラク市民の思いが、
重要なファクターとなって作品に重みを与えている。
それからタイトルにもなったグリーン・ゾーン。
これはバグダード市中央部の一等地にある、
多国籍軍、その政府・民間関係者が居住している地域。
アメリカを中心に統治、隔離された地帯で、
ここがイラク復興の拠点となるのだが、
混乱極めるイラクの他の地域との違いは明らかで、
これがまた興味深い。
ちょっと離れたところでは略奪、戦闘が繰り広げられているのに、
グリーン・ゾーンの中はまるで高級リゾートだ。
この辺の痒いところに手が届くような細かい描写を怠らないのが、
ポール・グリーングラスの良いところ。
そして、本作の最大の見せ場であるアクションだが、
これはもう一日の長がある。
サクサクのスピーディーなカット割にも関わらず、
どこに誰がいて、どのような動きをしているのか把握できる。
アクションの流れが理解できるので、
見ていて気持ちが良い。
特にラストに繰り広げられる大追跡劇は、凄い。
舞台は雑多な感じの市街地であり、
様々な人物が絡む追跡劇なのに、まったく混乱しない。
流石です。
混乱と言えば、物語もそこそこ複雑に入り組んでいるんだけど、
追えなくなることはない。
ちょっとラストのオチに向かうまでに、
伏線をばら撒きすぎている感は否めないけど、
ポール・グリーングラスは、ストーリーテラーとしても優れている。
今の日本の映画興行における洋画の立場を鑑みると、
本作が大ヒットすることはまずないと思う。
でも、こういう良質なアクション映画をたくさん見て欲しいな。
日本では絶対に作ることの出来ない作品だと思う。