5/22より全国にて 配給会社:東宝 (C)2010 BOX! Production Committee |
やんちゃなで天性のボクシング・センスを持つ高校生ボクサー・カブ。
カブの幼馴染みで、その強さに憧れボクシング部に入部する気弱な優等生ユウキ。
ボクシングに賭けた少年たちの熱い友情とそれぞれの栄光を描いた青春映画。
この映画は凄いです。
何が凄いかというと市原隼人と高良健吾が凄い。
ボクシングの練習を相当こなしてきたことは、一目瞭然。
二人が繰り出すボクシングの動きを見て、驚かない人はいないんじゃないかな?
特に市原隼人は、本物のボクサーかと思ってしまう程。
ボクシング・シーンは吹き替えじゃないし、
短いカットを重ねた編集で誤魔化すようなこともしていない。
ある試合のシーンでは約2分間、なんとワンカットで撮っている。
本当の試合を見ているかのような錯覚を覚えた。
細かくカットを割るシーンもあるが、役者たちの動きが良いので、
そこに嘘を感じさせない。
長回しと細かいカット、
更にはスローモーションやフラッシュバックなど様々な演出を駆使することで、
ファイトシーンにメリハリがついているし、飽きもこない。
もうこのボクシング・シーンだけでも見る価値があると思う。
同じくボクシングを題材とした『ラブファイト』の林遣都と北乃きいもそうだけど、
本当に最近の若い役者さんたちのガッツ溢れる役者魂には感銘を受けるね。
物語は挫折、苦悩、成功、友情、ライバル、仲間の死など、
青春映画のお決まり要素がふんだんに入っているが、あまり青臭くない。
湿っぽくもならず、サラッとしているのが良い。
でも熱さは伝わるし、大阪が舞台だからか人情も多分に感じる。
このバランスがよい。
そして、キャスティングもドンピシャだ。
百田尚樹の原作を読んでいないので、小説でのカブの造形がどうなのか判らないが、
やんちゃな天才ボクサーで、人情に厚いカブのキャラクターは、
あて書きと思うほど市原隼人にピッタリ。
市原隼人は一見、チャラくてチンピラ風だけど、明るく元気で、人懐っこいところもある。
演技に対する情熱は強く、その演技もあれこれ考えず直感でやっている。
2度インタビューをしたことがあるんだけど、
『天使の卵』の時に役作りについて聞いたら、
「現場で!」と即答したことを良く覚えている。
更に『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』でインタビューした際、
その辺を更に突っ込んで聞いてみたら、
「現場でのぶつかり合いが楽しい」と答えていた。
もう一人の主人公ユウキを演じた高良健吾も良い。
『蛇にピアス』の人体改造を施した青年アマ、
『フィッシュストーリー』のパンクバンドのボーカルといった、
ややエキセントリックで過激な役柄をやったかと思えば、
『ハゲタカ』では地味な暗い青年を演じてしまう。
本作でも今までにない役柄を見事に自分のものにしている。
若きカメレオン俳優だ。
現在、共に23歳である2人、が高校1年生を演じるのには少々無理はあるものの、
その辺は目をつぶりましょうってぐらいの熱演だった。
『神様のパズル』でも共演してますぅ
谷村美月、清水美紗、宝生舞、香椎由宇、
山崎真実、筧利夫といった2人を取り巻くキャストも安定していて、
「あぁー、演技へたぁ」という鑑賞の邪魔になるような思いをすることは、
見ている最中一度もなかった。
あっ、嘘、嘘。
ひとりいた。
友情出演をした亀田興毅。
製作TBSだし、亀田の試合のリングアナを市原隼人がやっていたし、
亀田興毅が出演する流れは理解できるが、
完全に浮いていた。
かなり好きな作品だったけど、
これだけはちょっといただけなかった。