ラッシャー木村さんが、5月24日腎不全による誤嚥性肺炎のため死去した。
享年68才。
またひとり名プロレスラーが、逝ってしまった。
ラッシャー木村さんの試合で一番印象に残っているのは、
1982年11月蔵前国技館にて新日本プロレス時代に行われた、
アントニオ猪木VSはぐれ国際軍団のハンディキャップマッチだ。
ラッシャー木村、アニマル浜口、寺西勇が、3人がかりでアントニオ猪木に立ち向かう。
冷静に考えると、それってアントニオ猪木が強いってことを逆に証明してないか?
ってことなんですが、
強すぎるレスラーよりも、その強いレスラーに立ち向かうレスラーを応援する派だったので、
猪木よりもラッシャー、アニマル、寺西を応援したことを今でも覚えている。
切り込み隊長の寺西勇がいつも通り、あっさり負けて役目を果たすと、
続くアニマル浜口も延髄蹴りで、マットに沈む。
最後の一人となったラッシャーが、
スタミナ切れの猪木にラリアットを決める。
場外に転落した猪木はそのままリングに戻れず、
はぐれ国際軍団の場外リングアウト勝ち。
猪木からスリーカウントを取れない辺りが、
いかにも当時の新日な感じですが、
強すぎる猪木に立ち向かうラッシャー木村さんの姿は、今でも目に焼きついている。
その後、プロレスから少し距離を置いた時期を経て、
大学生の時にプロレス好きの友達・宮ちゃんに誘われて、
全日本プロレスの武道館大会を観戦した。
三冠の試合だったか、チャンピオン・カーニバルだったか、
世界最強タッグ決定リーグ戦だったかは定かではないが、
初の全日生観戦で、一番の衝撃はラッシャー木村さんだった。
猪木と戦っていた時代から、既に10年近く経っており、
全盛期は過ぎていたのかもしれないが、
そのラッシャー木村の戦う姿と試合後のパフォーマンスに愕然とした。
後に全日興行の定番と知ったファミリー軍団VS悪徳商会。
ジャイアント馬場さん、百田光雄、永源遙、渕正信、マイティ井上といった、
ほぼほぼ主力ではなくなってきた選手たちによるユーモア溢れる、
コメディみたいなホノボノとした試合内容。
中でもラッシャー木村さんは、「笑い」を提供していた。
攻撃を仕掛けようとして、仕掛けない。
それの繰り返し。
チョップを受けると「イテェェェ」って感じで、うずくまる。
永源遥のツバを顔面に受けてもがく。
更には試合後のマイクパフォーマンス。
「おい、永源!お前〜」の後に続くコメントは、トンチンカンな内容で、
武道館は大爆笑に包まれた。
猪木と死闘を繰り広げ、かつて金網の鬼といわれたラッシャー木村さんの姿は、
そこにはなかった。
実は結構ショックだったんだけど、
その後、何度も全日本プロレスの会場に足を運ぶにつれ、
ジャイアント馬場さんが掲げた「明るく、楽しく、激しく」のうち、
2つのスローガンを遂行するラッシャー木村さんの試合とマイクが楽しみになった。
試合中は「ラッシャー!!」という声援を送り、
試合後は「マイク!マイク!」とマイクパフォーマンスの促し、
その発言に大爆笑した。
そんなラッシャー木村さんも、
次第に動きが鈍くなり、試合に出ても何もしなかったりすることが多くなった。
体調が悪かったのでしょう、
伊藤Pも観戦した2003年3月1日の武道館大会を最後に長期欠場となってしまう。
そして、2004年7月の東京ドーム大会で引退を表明し、現役を退いた。
その後、麻布十番のスターバックス・コーヒーでラッシャー木村さんの姿を見かけたことがある。
アロハシャツに短パン、サンダルというラフな格好で、
歩道に設置された屋外のテーブル席につき、ボッ〜としながらコーヒーを飲んでいました。
それがテレビでも生でも最後に見たラッシャー木村さんの姿となりました。
今日、訃報のニュースを知り、
先述の宮ちゃん含め、大学時代のプロレス好き仲間にその旨メールで伝えた。
それぞれ返信があった中で、
「天国プロレスの方が面白いんじゃないかってくらい、色々逝ってしまうね・・・」
という塚(女性)のコメントが感慨深かった。
いま現役で戦っているレスラーたちの試合が、つまらないという意味ではない。
自分たちがリアルタイムで接してきたレスラーたちが、
次々と天国へ召されてしまう。
思い入れが強い分、悲しみも強い。
ジャイアント馬場さん、ジャンボ鶴田さん、三沢光晴さん、
更にはラッシャー木村さんが現役時代の全日、ノアで活躍していた、
スティーブ・ウィリアムスもゲーリー・オブライトもこの世にいない。
国際プロレス時代の仲間である冬木弘道、
悪徳商会の一員だった大熊元司もいない。
ラッシャー木村さんが逝ってしまったことは本当に残念だけど、
先に逝った多くの仲間たちと天国で再会できて、
喜んでいるに違いない。
ゆっくり休んで、遺された後輩たちを見守って欲しいと言いたいところだが、
天国でもプロレスをして欲しい。
そして、プロレスが好きでこの世を去った人たちに、
天国でもプロレスの素晴らしさを伝えて欲しい。
今まで多くの感動と笑いをありがとうございました。