2010年05月27日更新

『ヒーローショー』 井筒和幸監督 取材記

井筒和幸監督にインタビューしてください。


と言われたら、
多分、多くの人がびびるのでは?


テレビでのコメントは辛らつだし、
撮影現場でもおっかないって話をよく聞くから。


しかしながら、一度でも井筒監督に取材をしたことがあったり、
その場に立ち会ったことのある人ならば、
びびる必要などまるでないということを知っているはず。


伊藤Pは、井筒監督のインタビューに2度携わったことがある。


一回目は、『パッチギ!』か『ゲロッパ!』の時で、
当時、伊藤Pが担当していたテレビ番組のパーソナリティーを務めていた襟川クロさんが、
井筒監督と対談した際に、スタッフとして立ち会った。


2人は気心知れているので、和気藹々とした現場だった。


ニ回目は『パッチギ! LOVE & PEACE』の時。
主演の中村ゆりとツーショット・インタビューで、
インタビュアーをやらせてもらった。


襟川クロさんとの対談を生で見ていたので、
それ程、気負うことはなかったけど、
あの和やかな雰囲気は、襟川クロさんだから作り出せたのかも?
という思いがあり、インタビュー前はちょっと緊張した。


でも、実際に話をさせて頂き、
井筒監督がとても気を遣ってくれていることがわかった。


「映画は見た?」
「どうだった?」
「感動した?」


といった感じで、開口一番、逆に質問してしてくる辺りも、
その気遣いの一部のような気がする。


質問の狙いも理解してくれて、
こっちが欲しいと思うようなコメントをしてくれた。


そんな経験のお陰で、
今回、『ヒーローショー』で再びインタビューさせて頂くことになった際、
以前よりは気が楽だった。




ヒーローショー

『ヒーローショー』

5/29より角川シネマ新宿ほか全国にて
配給会社:角川映画
(C)2010『ヒーローショー』製作委員会




しかし、そうは言っても井筒監督に通り一辺倒な質問ばかり浴びせたら、
「お前、アホかぁ?」と思われるに違いなく、
それなりの準備が必要となる。


よって、いつもは比較的パッパッと質問事項が思いつくんだけど、
『ヒーローショー』のテーマ的が重いというのも相まって、かなり熟考した。


取材の時に、自分の意見や感想ばかりを言うインタビュアーがいる。
個人的にはそれはあまりやりたくない。


何故なら、インタビューはインタビュー対象者から、
限られた時間内でいろんな話を引き出すことが、
最優先事項だから。


インタビュアーが筑紫哲也さんとかおすぎさんとか、
名の知れた人であるならば、意見のぶつけ合いは成立するけど、
自分はそんな立場ではない。


ということで、
質問事項はなるべく簡潔にするよう心がけているんだが、
今回はなんだが長くなってしまった。


それだけ練って、準備したってことか?
と自己弁護。


そして、迎えた当日。


予定していた時間からちょっと遅れて、井筒監督が登場。


早速インタビュー!と行きたいところだったが、
おもむろに携帯電話を取り出し、
誰かに連絡を取り始める井筒監督。


しかし、つながらない。


「あれぇ、おかしいなぁ〜」と言いながら、
何度もかけ直す。


「あの〜・・・インタビューなんっすけどぉ・・・」と内心思うも、
そんなことは言えるわけもなく、ひたすら待っていると、
こちらの思いが伝わったのか、
「ごめんなぁ〜。ちょっと待っててぇ」と言われる。


結局、電話はつながらず、
「ごめん、ごめん」と謝られる。


正直、井筒監督の行動は非常識なんだけど、
そこに微妙な気遣いがちょいちょいあり、
「まぁ、いいっか」となってしまう。


井筒監督のキャラなんでしょう。


続いて、ピンマイクをつけるべく、
カメラクルーが井筒監督に近付くと、
「こんなん意味ないわぁ〜。手で持ってやるよぉ」という。


いや・・・そういう訳には・・・


更には宣伝スタッフに、
「なぁ、のどか湧いたわぁ。ヤクルトない?」とオーダー。


お茶、コーヒー、水といった飲み物ならば、
まぁ、用意してあるでしょう。


でも“ヤクルト”なんだよね。
普通、あるか?ヤクルト。


で、結局、ピンマイクは付けるし、
ヤクルトもなくて、妥協してお茶になる。


こういうプチ我侭が、また井筒監督らしいといえばらしい。


そして、前回同様、
「映画見た?」
「面白かった?」
「飽きずに見られた?」
と質問攻め。


この辺の匙加減が、上手いんだよねぇ。


そんなこんなで、ようやくインタビューが始まった。


練り練った質問が活かせたかどうかは、ちょっと判断つかんのですが、
まぁ、インタビューとしては、
短い時間の中で、聞きたいこと聞けたし、
欲しいと思っていたコメントももらえたんで、良かったんじゃないかと。


そして、井筒監督の話の中に、
アメリカン・ニューシネマという言葉が何度も出てきた。


「若い頃はアメリカン・ニューシネマばかり見ていた」
「アメリカン・ニューシネマが自分の原点」
「今回、アメリカン・ニューシネマを意識してつくった」


伊藤Pもアメリカン・ニューシネマが大好きなんで、
いろいろと話がしたかったんだけど、
時間がないし、先述の通り伊藤Pの意見なんてのはこの場ではドーデモいいので、
自粛した。


こういう自己抑制は、インタビューの際にチョイチョイある。
毎度毎度もどかしいねぇ。


「あぁー!!!飲み屋で話しテェ!!!!」って思う。


最後にWEB用に写真撮影。


学生時代に写真を勉強した女性スタッフにお願いしたんだけど、
井筒監督が食いついた。


「女性カメラマンなの?」
「大変だねぇ」
「でも昔はもっと機材が必要だったからね。デジタルになって大分楽になったよね」


「今回の映画もデジタルで撮ったんだよ」
「でもね、やっぱりフィルムはいいよね。黒の色の出方が違う」
「デジタルも良いけど、フィルムの良さを忘れたらダメだよ」


などなど、結構長いこと井筒節を展開。


「なんてね、ゴメンな。関係ない話長々として。ほな、ありがとう」
と言って、照れながら取材部屋を出て行きました。


なんだかんだとオチャメで憎めない。
そこが井筒監督の良いところだと思う。


■『ヒーローショー』
※井筒和幸監督インタビュー テキスト
井筒和幸監督

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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