6/5より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて 配給会社:アスミック・エース (C)2010シーサイドモーテル製作委員会 |
海もないのに“シーサイド”という名のついた山奥のさびれたモーテル、
“シーサイドモーテル”。
そこに偶然集まった11人の男女。
“シーサイドモーテル”の四つの部屋で繰り広げられる騙し合いの一夜を描く。
見終わった直後に思ったことは、「だから何?」。
“シーサイドモーテル”とその近辺という限られた場所が舞台で、
シチュエーション・コメディ的な要素が強い。
更に11人の登場人物ということで群像劇でもある。
しかしながら四つの部屋が絡み合っているかというと、
それ程深く絡み合っていないように思う。
登場人物たちも同様だ。
個性豊かな登場人物たちが、
“シーサイドモーテル”で、最終的にどう結実して終わるのか?
シチュエーション・コメディで最も重要なポイントが、
ちゃんと押さえられていないから、
ラストのオチが「だから何?」になってしまう。
更に言うと、映画が訴えるテーマ的なものも「だから何?」ってぐらいチープ。
そもそもシチュエーション・コメディに、
琴線に触れるようなテーマとかを期待しちゃいないんだけど、
シチュエーション自体を上手く活かしきれていないから、
余計にダメさが目立ってしまう。
とは言うものの、
見ている最中は、つまらないとか退屈するとかは全くなく、
楽しんで見ることが出来たのもまた事実。
多分、それは“ラストどう集約されるのか?”
という楽しみがあったからなのでしょう。
あと、豪華キャストたちもその一端を担った。
生田斗真、麻生久美子、山田孝之、玉山鉄二、成海璃子、古田新太などなど、
主役クラスが大挙して出演。
いるだけで絵になる俳優さんたちが、
一癖も二癖もあるキャラクターを楽しそうに演じている。
■103号室:生田斗真&麻生久美子
「恋と仕事の騙し合い」
初めて生田斗真の演技を見たけど、
なかなか良いではないですか。
インチキ美容クリームのセールスマンを演じているんだけど、
変なキャラが多い中で、一番まともな役だ。
他の人たちと違って大仰な芝居は許されないし、
かといってあまり静か過ぎても埋もれてしまう。
なので、実は生田斗真が一番難しい役柄だったように思う。
そんな生田斗真に対するのは麻生久美子。
贔屓目に見なくても、最高です。
麻生さんはやったことがないような役柄にトライする女優さんですが、
今回も今までにない麻生久美子を見ることが出来ます。
80年代アイドルの振り付けみたいな動きで、
「お電話ありがとうございまーす。ラブミーコールミーのキャンディです!」
ってなセリフを言って、
寒さとギャグの間の真ん中らへんに落とせる女優さんは、麻生さんぐらいじゃないの?
一方で、
本気なのか、からかっているだけなのかわからないアンニュイな雰囲気とかは、
麻生さんの真骨頂のような気がする。
改めて素敵な女優さんだなぁ〜と思いました。
■202号室:山田孝之、玉山鉄二、成海璃子、柄本時生、温水洋一
「金と命の騙し合い」
山田孝之、玉山鉄二は『手紙』でも共演しているが、
『手紙』ではほとんど共演シーンがなかったので、
2人の絡みがバンバンあるのは嬉しい。
しかもそこに成海璃子、柄本時生、温水洋一たちもいる。
この5人が一部屋に納まっているだけでも凄い。
■203号室:古田新太、小島聖
「マンネリと束縛の騙し合い」
EDに悩むスーパーの社長と欲求不満な社長夫人。
小島聖の出番が少ないのは残念だが、
その分、古田新太が頑張る。
というか、古田新太の独壇場だ。
元々、存在感のある役者さんなうえに、
今回は○○まで施すので、強烈なインパクトを与えてくれる。
■102号室:池田鉄洋、山崎真実
「下心と欲望の騙し合い」
このパートが一番不要に思えたのだが、
一方で一番面白いと感じてしまった。
キャバ嬢とやりたいだけの池田鉄洋はキモさ全快。
そして、本作で一番の収穫だったのが、
キャバ嬢を演じた山崎真実だ。
『少林少女』は出ているだけだったし、
『テケテケ』も微妙で、まだまだ女優という感じはしなかったんだけど、
本作では完璧に“女優”だと思えるぐらい芝居をしていた。
演技の良さもさることながら、
抜群のスタイルと体の柔らかさという山崎真実の“武器”が、
ちゃんと生かされているのもグッド!
本作の後、『ボックス!』を見たんだけど、
『ボックス!』での山崎真実も良かった。
市川隼人演じる天才ボクサー、カブのヤンキー風ネーちゃん役で、
出番は少ないものの、強い印象を残している。
もしかしたら今後、大化けするかもしれない。
期待大!
ということで、
豪華俳優陣を見ているだけでも、楽しい作品なのですが、
先述の通り、各部屋同士の絡みがあまりなく、
必然的に役者同士の絡みもない。
豪華スター共演なのに共演シーンがなくてガッカリした
『NINE』と同じような心境に陥った。
役者と彼らが演じるキャラクター、
そしてシチュエーションをもう少し活かしていたらなぁ〜。
見ている間は楽しいだけに、惜しくて残念だ。