6/12より角川シネマ新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて順次公開 配給会社:ビターズ・エンド (C)『ACACIA』製作委員会 |
元覆面レスラーの大魔神は、
息子を亡くし独り寂しくさびれた団地で余生を過ごしていた。
そこに母親に置き去りにされ、
同級生たちからいじめられているタクロウが転がりこんでくる。
親子のように暮らし始めた二人は、やがて現実に向き合う勇気を手にしようとする…。
辻仁成が監督と脚本を務め、主演にアントニオ猪木を迎えて撮った人間ドラマ。
以前、辻仁成の著作を手にしてみたものの、肌に合わず直ぐに投げ出してしまった。
以来、食わず嫌いというのもあるが、
触れた関連作品と言えば、映画『冷静と情熱のあいだ』ぐらい。
監督作品は一本も見ていない。
てな訳で、辻仁成のことを大して知りもしないんだけど、
現在の妻である中山美穂と出会った時の第一声が、
「やっと会えたね」だと知って以来、ナルシストでキザというイメージを抱いている。
本作もそんなんかなーと思いながら見たんだが、
静かで詩的な作品だった。
見方によっては、その作風自体がキザなのかもしれないが、
見ている最中はあまり辻仁成を意識しなかった。
大魔神はタクロウに自分の亡き息子を、
タクロウは大魔神に離れて暮らす父を重ねる。
年齢こそ離れているが、共に虚無感を抱いた人間が触れ合うことで、
自分を見つめ直し、新たな道を歩もうとする。
「危ぶむなかれ、危ぶめば道はなし。迷わず行けよ、行けばわかるさ」
正にアントニオ猪木の引退試合で朗読された「道」だ。
プロレスという仕事に没頭し、家族を失った大魔神と、
親に見捨てられたタクロウの気持ちは分からんでもない。
彼らが相乗効果で前向きになる姿も共感できる。
しかしながら、息子を亡くしたことも、離婚したことも、
両親に見捨てられたこともないので、
そこまで深く突き刺さるものはなかったかな。
修羅の道を歩んで来ていない温室育ちの伊藤Pには、まだ崇高過ぎたのかも…。
茨のの人生を歩んで来た人たちは、
きっといろいろと感じることの出来る作品なのでしょう。
プロレスファンとしては、
アントニオ猪木が本格的な演技に初挑戦している点も見逃せない。
正直、上手いとは思わなかったけど、
そのたたずまいからは大魔神が背負ってきたものが、滲み出ていたし、
やはり存在感がある。
役柄が元プロレスラーということで、
アントニオ猪木のそれと重なり中々興味深いものがあったのも確か。
元妻役を倍償美津子がやっていれば、完璧だったね。
やるわけねぇーって。
因みに元妻役は石田えり。
石田えりはかつて前田日明とちょっとだけ噂になったっけ。
そんなどうでも良い話はさておき、
「元気ですかぁ〜!!」って、こっちが言いたくなるぐらい静かな作品なので、
見る際は元気な時に見た方が良いかもしれません。
大魔神やタクロウは自分自身と戦ったけど、伊藤Pは睡魔と戦った。