6/26よりヒューマントラストシネマ渋谷、テアトルダイヤほか全国にて順次公開 配給会社:日活 (C)2010「さんかく」製作委員会 |
いいカッコしぃで、自意識過剰なダメ男・百瀬。
百瀬と同棲中の恋人・佳代。
やや倦怠気味の二人の元に、夏休みを利用して佳代の妹で中学生の桃がやって来る。
三人の共同生活が始まると、
百瀬は中学生とは思えない色気と奔放さを持った桃に魅了され、
遂には完全に虜にされてしまう・・・。
『なま夏』(06)、『机のなかみ』(07)、『純喫茶磯辺』(08)と、
勝手な思い込みや勘違いで、
女性(特に女子高生)に翻弄される男たちの姿を哀愁たっぷりに描き続けてきた
吉田恵輔監督の待望の最新作。
吉田恵輔監督は常に男の恥部というか、
「あぁ、そこを見せてはイカン!」というところを焙り出す。
更にその男の憐れな妄想の対象が10代だったりするから、
ちょっと変態チックで一層たちが悪い。
別に相手が大人の女性だったらお互い子供じゃないんだから、
いっちゃっても良いと思うけど、
流石に少女となると理性が働き、ブレーキがかかる。
しかしながら、男は都合の良い解釈を重ね、
徐々にそのブレーキの踏み込みを緩めてしまう。
この辺の過程の描写が吉田恵輔監督の真骨頂なわけですが、
今回は対象を中学生にまで年齢を落としてきた。
次は小学生か!?
それはさておき、
今回、中坊に熱をあげてしまう30歳の百瀬が滑稽過ぎて笑ってしまうんだが、
あんなことされたら勘違いしても仕方ないかって・・・。
百瀬の気持ちがちょっと分かってしまう自分もなんだかなぁ〜って。
別にロリコンじゃないんだけどねぇ・・・。
そんな感じで、男性の描写に定評がある一方で、実は女性の描き方も上手い。
男が思い描く理想の女性像が、虚像であるところにまで突っ込んでいる点に注目だ。
その理想と現実のギャップが、
吉田恵輔監督作品の特徴であり、面白さでもある。
そして、女性の実像ってのは大概、恐い。
前作『純喫茶磯辺』の麻生久美子演じる素子も、
ある意味、女の恐さを滲み出していたが、今回は更にパワーアップ!
というか、露骨。
十代の少女の無垢な故の恐さと執着心の塊と化した三十路前の女の恐さの波状攻撃だ。
特に、後者には戦慄を覚えた。
怖いよ〜。
中盤移行は雰囲気が少し変わり、見る人によってはホラーと化すんだけど、
かなりのダメージを負いながらも百瀬がやっぱりバカなので、
そこまでヘビーにはならない。
その辺の匙加減が絶妙。
そんな百瀬を演じた高岡蒼甫を筆頭に田畑智子、AKB48の小野恵令奈ら、
主要キャストの演技も素晴らしい。
役者の良さを最大限に引き出し、
より輝かせる手腕にも長けている。
そして、ラストにはきちんと余韻を残す。
そんな感じで、吉田恵輔節が炸裂した一本なので、
吉田恵輔監督ファンは、安心して見て欲しい。
一方、本作で吉田ワールドを初めて体感する人は、
見れば吉田恵輔監督の過去作を見たくなるはず。
中毒性に満ちた監督ですな。
鋭い観察眼を持っているので、
ダメ男に限らず、いろんな人間をリアルに描き続けて欲しい。
■『さんかく』
※吉田恵輔監督 インタビュー