7/10よりテアトル新宿ほか全国にて順次公開 配給会社:東京テアトル (C)2009「恐怖」製作委員会 |
全く意味が分かりませんでした。
崇高過ぎちゃって出来の悪いアタクシには到底理解不能でございます。
“Jホラーシアター”なるレーベルの最後を飾る作品と言うが、
正直、一瀬隆重プロデューサーが立ち上げたこのプロジェクトの作品群は、
どれも微妙だった。
『予言』(04/鶴田法男)、『輪廻』(06/清水崇)はギリギリホラーだったが、
怖いかと言われると否だったし、
『感染』(04/落合正幸)は途中から迷走してコメディと化してしまった。
一番怖いシーンが本当に映り込んだ(?)幽霊のシーンだったりする。
『叫』 (07/黒沢清)は、黒沢清節が炸裂しまくっていて嫌いじゃないけど、
ホラーという点ではかなり微妙で、恐怖と笑いが紙一重の幽霊映画だった。
続く『怪談』(07/中田秀夫)に至っては、
「このレーベルの作品だったっけ?」という認識すらなかった。
そんな“Jホラーシアター”の最後を飾るのが、
この『恐怖』だ。
監督は『リング』の脚本家であり、
終盤にある貞子の衝撃シーンの生みの親である高橋洋。
“Jホラーシアター”作品の多くは、
破綻していたり、論理的でなかったりする。
全ての映画が理詰めである必要はないと思うけど、
高橋洋監督の思いが詰め込まれた『恐怖』は、
わけの分からなさに拍車がかかり、
到底凡人には理解できないような、ハイレベルで深遠な作品となっている。
あと“Jホラーシアター”の特徴としては、
ホラー映画という割にはあまり怖くない点も共通している。
今までのホラー映画とは違う観点で描きたいという気持ちは分かるけど、
そうは言ってもホラーなんだから「恐怖」という根本を置き忘れられては困る。
そして、まさにその「恐怖」という言葉がタイトルとなった本作は、
輪をかけて怖くない。
怖くなくて、チンプンカンプン。
もうどうして良いのか分かりません・・・
小さい頃、両親が見ていた人体実験のモノクロフィルムをたまたま見てしまった姉妹。
姉のみゆきはそれ以来、死の影に追われ、26歳の時に集団自殺を決行する。
しかし、自殺決行中のみゆきは拉致され、
みゆきの母親で脳外科医として高名な悦子の元へと連れて来られる。
悦子は自身の研究のために、迷うことなくみゆきを手術台に乗せ、
脳手術を施す。
その頃、謎の失踪を遂げた姉を探すために上京してきた妹かおりは、
手がかりを求めてみゆきの自宅へと訪れる。
その部屋に泊まったかおりは、夢の中でみゆきと再会するが、
みゆきは「この人が来る。とても危険よ」という警告を発する・・・。
と書くと、まったく難解ではないのですが、
徐々にわけの分からない世界へと引きずり込まれていくのですよ。
後半の30分は、ただただ受身の態勢で見ているだけで、
「おら、なにがなんだか・・・」と思っているうちに、映画が終了。
で、頭の中は更に「????????????」となる。
今までも、難解といわれる作品に出会ってきた。
流石にデヴィッド・リンチの『エンパイア・ランド』は、
始まって10分で匙を投げたけど、
同じくリンチの『マルホランド・ドライブ』や、
最近だと横浜聡子監督の『ウルトラミラクルラブストーリー』とかは、
見終わった後に、「解き明かしたい」、「解き明かさなければ」という衝動に駆られた。
頑張れば解けるかもしれないという見込みがあったから、
シーンを思い出して、解き明かそうと頑張ったんだけど、
『恐怖』に関してはその気力さえも起こらなかった。
恐怖は自分自身というか人間の中にあるということは、
なんとなく理解は出来たんだけど、
正直、あんまりピンと来ないというか、
そこに怖さを感じなかった。
清水崇監督の名を世に知らしめた『呪怨』も、
物語の時系列が滅茶苦茶で、実は難解だったりするんだけど、
それ以上に「怖さ」が前面に出ていたから、
ホラー映画としての本来の目的を果たしていたと思う。
『恐怖』も難解なのは別に構わないから、
もう少し分かり易い「怖さ」を提示してくれても良かったんじゃない?
と思ってしまった。
さて、そんな感じで怖くない『恐怖』ですが、
一点だけ怖いというか、
ちょっと背筋が冷たくなるのが、脳外科医で姉妹の母・悦子を演じた片平なぎさでしょう。
我々の世代で片平なぎさといえば、
勿論、「スチュワーデス物語」。
1983年から84年にかけて放送された、
スチュワーデス訓練生と教官の絆と愛を描いたテレビドラマだ。
片平なぎさ演じる新藤真理子は、
教官の村沢浩の婚約者で、ピアニストを目指していたが、
村沢とスキーに行った際に、村沢と衝突し、両手を粉砕骨折。
両手共に義手となり、ピアニストの夢を絶たれてしまう。
以降、新藤真理子は黒い手袋をはめ、
登場するごとに「ひろしぃぃぃ、あなたのせいよぉぉぉ」と恨み節を炸裂させる。
放送当時、この片平なぎさの演技が超話題となり、
小学生だったオイラにも強烈なトラウマを与え、
以来、片平なぎさ=「ひろしぃぃぃ」となった。
伊藤Pだけでなく、多くの人たちがそうであるはず。
そして、『恐怖』で演じた悦子もちょっと気がふれてしまっているし、
手術の際に手袋をはめている。
しかもその手の格好は新藤真理子に通ずるものがあり、
「わぁ!!!ひろしぃぃぃぃだ!!!!!」と、
興奮するのであります。
って、全然怖がってないじゃん!!!!
でも、片平なぎさは凄いなぁーって思うのですよ。
新藤真理子を引き合いに出されることを承知の上で、
こういう役を引き受けて、更には貫禄の演技を見せ付けるわけですからね。
あと、本作には姉みゆき役で、
伊藤P“超”ご贔屓の中村ゆりが出演している。
しかも凄い顔で。
この強烈なインパクトを放つビジュアルは、
ポスターにまでなってしまっている。
「おぉ、なんで美しい中村ゆりをこんな顔にしてしまうんだ!!!」
と怒るわけもなく、
こういうヘンチクリンなメイクにも臆することなく、
果敢にチャレンジする中村ゆりに、より一層の好感を持つのであります。
中村ゆりと片平なぎさ。
新旧女優の怪演対決という点では、
とても魅力的な作品でございました。
■『恐怖』
※中村ゆり インタビュー テキスト