7/17、18、19日先行上映 7/23より 丸の内ピカデリーほか全国にて 配給会社:ワーナー・ブラザース映画 (C)2010 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved |
本公開は7月23日だが、17〜19日に先行上映があるので、今週紹介します。
大傑作『ダークナイト』のクリストファー・ノーラン監督の最新作であること。
かなり早い段階から劇場で上映されていた予告編の映像が凄かったこと。
スタジオ側にもその全貌が極秘で、内容がなかなか明らかにならなかったこと。
ただならぬ雰囲気がバリバリ漂っている作品だったこと。
以上の理由から、
『インセプション』は、2010年公開作品の中でも大注目の作品だった。
ことあるごとに、「早く見てぇ〜、早く見てぇ〜」と言っていた。
で、待ちに待った完成披露試写会で拝見。
いつもの様にあまり予備知識がない状態で見たのですが、
いや〜、てこずった。
夢の中に入って何かをするということぐらいの情報は得ていたが、
そこで何が行われるのかまでは知らなかった。
今までにないタイプの作品なだけに、
最初の1時間ぐらいは、登場人物たちの役割、目的、
夢の中でのルールを理解するのに必死だった。
『マトリックス』に似ているところもあるんだけど、
『マトリックス』が「本当の世界」を主人公と一緒に我々も段階的に知って行くのに対して、
『インセプション』は最初からいきなり「夢」の世界へと放りこまれる。
そこで夢の世界のルールや主人公たちの活動内容・目的を説明してくれるんだけど、
何分未知の領域。
理解したんだか、していないんだか・・・
なんとなく消化仕切れないまま、ガツガツと物語が進んで行くので、
付いて行くのがやっと。
何を登場人物たちがやっているのか、またしたいのかが完璧には理解出来ない。
ただ全くわけが分からないというほどの難解さではない。
だから匙を投げることなく見続けることが出来る。
で、段々と物語が進むにつれ、
「あぁ、あそこはそういうことだったんだ」という理解に至る。
でも、見ている最中、登場人物たちの行動目的が不明な場合、
あまりスリルを感じることは出来ない。
感情移入していないから、傍観者になってしまう。
例えば、『ザ・コーヴ』の場合、
夜明けまでに地元の漁師たちの目をかいくぐって、イルカ漁が行われている入江に侵入し、
隠しカメラを設置するという超簡単なミッションなので、
見ているこちらは、登場人物たちのやりたいこと、やっていることが明確。
だから観客は、ハラハラする(まぁ、日本人はハラハラしないけどね)。
『インセプション』は、登場人物たちの行動目的の理解が不十分なので、
常に「何をやっているんだろう?」という雑念がつきまとう。
これは鑑賞する上でかなりのデメリットだ。
よって、これから見る方々は、ある程度の予備知識を持って鑑賞した方が良いと思う。
何も知らなくても集中して見れば、最終的に理解は出来るとは思うが、
見ている間、おいてけぼりを食らわないようにずっと追いかける必要性が生じてしまう。
それでは没頭できずに、
『インセプション』が提示する面白さを満喫出来ない可能性が高い。
そんな感じでちょっと敷居の高い作品ではありますが、
夢に入り、更に幾層にも及ぶ深い夢の中へと入っていきながらも、
ちゃんとルールありきの物語が構築されている。
こんな凄いアイディアを考え出してしまうクリストファー・ノーランは凄い。
確かに今まで誰も見たことも、体感したこともない作品だ。
まだクリストファー・ノーランは、39歳ですか・・・。
正直、夢だからなんでもありという強引で、後付けの設定がなきにしもあらずだが、
発想自体が本当に奇抜だし、
映像のひとつひとつに凄まじいパワーを感じた。
ただ、『ダークナイト』的な深みがあるかというと、ないと思う。
個人的に夢ネタがあまり好きではないというのもあるけど、
ガツンと来る何が欠落している。
エネルギー開発企業のトップである父親が寝たきりで、
間もなく死期を迎え、息子のロバート・フィッシャーはその跡を継ぐことになっている。
ライバル企業のサイトーは、
他人の頭の中に入り、アイディアを盗み出すプロのコブに、
ロバートの夢の中に侵入し、
「父親の築いた巨大企業をつぶす」というアイディア植えつける仕事を依頼する。
コブへの報酬は、アメリカへ帰れるように、コブの犯罪歴を消すこと。
アメリカで待つ子供たちに会いたいがために、コブは命をかけた危険な仕事に着手する。
コブの子供に会いたいという親心には、ちょっと染み入るものがあったけど、
作戦のターゲットとなるロバート・フィッシャーは、決して悪人ではない。
どちらかと言えば、同情に値する可哀想な人物だ。
企業の闘争のため、そして、自分の子供に会いたいという一個人の願いのために、
ロバートの人生が狂わされる。
それが自身の過ちならば納得もいくが、
無意識のうちに夢の中でタネを植え付けられるが故なんて・・・。
ロバートのことを考えると、心が痛む・・・。
ある意味、『ダークナイト』でノーランが提示した、
善悪の曖昧さなのかもしれないが、すんなりと受け入れることが出来なった。
ただ、何度も言うが、
奇抜で複雑ながらも最終的にちゃんと着地さて、
スッキリと理解させる構成・演出力は凄いし、
スペクタクルを感じるVFXシーンや、幻想的な夢の表現など、
見るべきところはたくさんある。
コブを演じたレオナルド・ディカプリオは、
妻の幻影の悩まされるという『シャッター アイランド』と同じ様な役柄で、
ちょっと新鮮味にかけるが、やはり苦悩する男を演じるのは上手いと思う。
渡辺謙、エレン・ペイジ、ジョゼフ・ゴートン=レヴィットといった共演陣も魅力的だ。
大人の鑑賞に耐えうる作品であることは間違いない。
最後に一言。
鑑賞中、たまに解釈に苦しむ字幕が幾つかあった。
作品が作品なだけに、自分の理解力が足りないから仕方がないと思いながら見ていたが、
最後に字幕担当者の名前が出て、ちょっと懐疑的になった。
アンゼたかし。
意味不明な字幕が多発した『シャーロック・ホームズ』でも日本語字幕を担当した人だ。
意味が分らなかったのは、俺のせいじゃないかも!?