8/21より全国にて 配給会社:東宝 (C)2010 森絵都/「カラフル」製作委員会 |
<ぼく>は大きな過ちを犯して死んだ罪な魂。
天上界と下界の間でさまよっていたらブラブラという名の天使(?)から、
もう一度下界に戻って再挑戦するチャンスが与えられた。
条件は、
自殺をして息を引き取ったばかりの小林真という中学三年生の身体に入り込み生きること。
そして、自分の犯した罪を思い出すこと。
こうして<ぼく>は小林真として生きることになるが、
一見、幸せそうに見える真の家族は、様々な問題を抱えているうえ、
学校生活も決して平穏なものではなかった・・・。
『クレヨンしんちゃん モーレツ!大人帝国の逆襲』、
『クレヨンしんちゃん アッパレ!戦国大合戦』を手掛けた
原恵一監督の『河童のクゥと夏休み』以来3年ぶりの新作。
原恵一監督信者である伊藤Pにとって、
待ちに待った待望の一作であり、
2010年の東宝ライナップの中でも特に重要かつ期待大の一本だった。
そして、原恵一監督は見事その期待に応えてくれた。
小林真の身体を借りて生きる<ぼく>は、
はじめ生き甲斐もなくただ生きているだけだったが、
真として生活することで様々なことを経験し、学び、吸収していく。
真<ぼく>が成長していくにつれ見ているこちらも、
生きること、自分自身の存在意義、今日という日の大切さ、家族、友達など、
様々な事を考えさせられる。
これらのテーマは娯楽映画というオブラートに包まれているので、
決して説教臭くない。
声高らかに主張しないところが、原恵一監督らしい。
その他にも原恵一テイストが随所に見られる。
まずは、前を向いていること。
先に挙げた三作品がそうであったように、未来を感じさせる。
過去は過去として認識し、その経験をバネにして前向きに生きて行こう。
これこそ、原恵一監督の真骨頂だ。
それは一個人だけでなく、文明そのものにも当てはまる。
今の世の中が過去の文明の上に成り立っているという忘れがちだけど、
当たり前な事柄に改めて目を向けさせてくれる。
やっぱり原恵一監督は凄いね。
一本の作品に様々な思いを込め、それを伝えてくれる。
ただ、『河童のクゥと夏休み』がそうであったように、
作品が素晴らしいからと言って、それが必ずしも興行に結びつくかと言えばノーだ。
『カラフル』はタイトルとは裏腹にとても地味な印象を受ける。
あえてそうしているんだけど、全体的なトーンがグレーだ。
更に野原しんのすけや河童のクゥみたいな強烈なキャラクターがいない。
主人公の小林真は普通の中学生だ。
ファンタジーテイストではあるが、
基本的に小林真の日常生活が描かれているので、
派手なアクションはないし、ギャグもない。
萌えキャラも出てこない。
要するに地味なのである。
最も見て欲しいと思う世代は中高生なんだが、
彼らにこのビジュアルが刺さるとは思えない。
アニメといえば、ちびっ子だが、
先述の通り牽引力のあるキャラが不在だ。
仮に作品を見たとしても、内容を理解するまでには至らないだろう。
ではアニオタはどうだ?
なんだか最も遠いような気がする・・・。
となると、やはり一般向けだろう。
一般に浸透させるにはとにかく露出して作品の知名度を上げることだ。
製作にはフジテレビが入っている。
よっしゃ!バンバンとスポット打って、
フジテレビの情報番組ジャックだ!
が、しかし、昨年のフジテレビ出資アニメ『ホッタラケの島〜遥と魔法の鏡〜』ほど、
プロモーションに力を入れているようには見えない。
今日、「めざましテレビ」で特集をやってはいたが、
『ホッタラケの島〜遥と魔法の鏡〜』は、もっとガンガン紹介していた記憶がある。
それでも『ホッタラケの島〜遥と魔法の鏡〜』は大コケした。
『カラフル』は『ホッタラケの島〜遥と魔法の鏡〜』以上に盛り上がっていない。
このままでは危険だ。
昨年は『サマーウォーズ』、『マイマイ新子と千年の魔法』といった良質アニメがヒットした
(と言いながら、2本とも未見なんだけどね)。
『カラフル』も同様に良質アニメということで、ヒットして欲しい。
原恵一監督は、
「見終わった時に、見る前よりも心地よい気分になって欲しい」
という信条を持って映画を作っていると、以前インタビューした際に語っていた。
『カラフル』は正にそんな映画。
地味に見えるかもしれないが、素晴らしい作品です。
見れば心が浄化されます。
是非、多くの方々に見ていただきたいです。
<余談1>
『カラフル』を見た日の帰りに、森絵都の原作を購入して読んだ。
映画化にあたり、残したところ、削ぎ落としたところ、新たに追加したところが、
良く分かった。
見た直後に原作を読むのもなかなか楽しいですな。
<余談2>
小林真の母親役で麻生久美子さんが声の出演をしている。
麻生さんに『夕凪の街 桜の国』で初めてインタビューした際に、
「クレヨンしんちゃん」の話でちょっと盛り上がった。
特に『オトナ帝国の逆襲』と『アッパレ!戦国大合戦』が引き合いに出され、
麻生さんは原恵一監督のファンだと判明した。
数ヵ月後、今度は『河童のクゥと夏休み』で原恵一監督にインタビューした。
その時に原恵一監督に麻生さんが監督のファンであることを伝えた。
すると原恵一監督は「本当ですか!?」とメッチャ嬉しそうだった。
なんと原恵一監督も麻生さんのファンだった。
ということで、今回のキャスティングのきっかけを導き出したのは伊藤Pです。
なーんてね。
上記、記述は嘘ではないのですが、
麻生さんと原恵一監督は、なんかの映画賞の場(毎日映画コンクールだったかな?)で同席し、
お互いに挨拶を交わしたそうな。(麻生さん・談)
多分、その出会いがきっかけなんだろうけど、
大元の大元のきっかけは伊藤Pであって欲しい。
と、勝手な願望を抱いております・・・。
コメント (1)
公開初日に観て来ました!
河童のクゥと夏休みの時もコメントさせていただきましたカミリィです
原恵一監督の作品は大好きです
本当に清々しい気持ちになりました
素晴らしい作品、多くの人に伝えたいです!
投稿者: カミリィ | 2010年08月23日 16:27