9/25より新宿ミラノほか全国にて順次公開 配給会社:ブロードメディア・スタジオ |
「伊藤さん、凄いの買っちゃいました!中国産台風デイザスターです!」
という配給担当者さんのコメント付きで、
オリジナル・トレーラーが掲載されているYouTubeのアドレスが送られてきた。
早速、アクセスしてトレーラーを見た。
中国語なので、役者たちが何を言っているのか不明だったが、
そんなことはどうでもよいと思えるぐらい強烈なインパクトだった。
台風による高波と暴風雨によって、港に停泊中の船舶や駐車中の車が押し流され、
建物が木っ端微塵に倒壊!
そのどれもがミニチュアだとまるわかり!
CGが当たり前のご時勢で、時代を逆行!
かと思えば本当に火薬を使って大爆発!!
更に登場人物たちが避難したらしい倉庫に船が突き刺さり、
その隙間からサメが宙を舞って飛びこんで来る!!
「おぉ!超見てぇ!!
中国映画の中では超大作に違いないんだろうけど、
どこかバッタモン臭い、偽物感がいかにもお国柄って感じだ!」
と思ったのが、数ヶ月前。
そして、先日遂に見たわけですが、
予告編の段階で安っぽさがバレてしまうような映画を生真面目に見るわけもなく、
一生懸命作った製作陣には申し訳ないが、バカ映画を見る感覚で本編を見た。
序盤から中盤にかけては、多少突っ込み所があるものの許容範囲内だ。
迫り来る超大型台風への対応に追われる市長のエピソードをメインに、
出産間近の妻に会いに行けなくなってしまった夫や、
陣痛が始まってしまったその妊婦を診ることになってしまった研修医。
私、私生活では監督の奥さんあるよ。
『ツイスター』のパクリとしか思えないキャラである、
台風の目を撮影することに躍起になるバカ丸出しのアメリカ人。
台風が接近しているのにも関わらず、
娘の結婚式に出席し酒を飲んでしまったがために、
役職を解任されてしまう町長。
更にあろうことか市長に罪をおっかぶせようとしたスリ男などが登場。
この人たちのエピソードが、『TSUNAMI−ツナミ−』同様、
台風襲来とともに生かされるパニック群像劇が展開されるのかと思ったら、大間違い。
市長が避難しようとしない漁師たちを説得するために、
港に行った辺りから本作の迷走が始まる。
120万人が住む都市の市長であり、
司令室で全体を把握し指示を出すべき立場のはずなのに、
市長は、「人名は何よりも増して尊いものだ」をモットーに、
港へと繰り出す。
船が心配で避難しようとしない漁師たちに対して市長は、
レインコートを投げ捨て(しかもスローモーション)、
膝をついて避難するよう頭を下げる。
その市長の後ろでは、東映映画のオープニングのように、
どどーん!と波が打ち寄せ、バシャァァァァ!!!と波しぶきが!
大・大・大爆笑!
やっぱりバカ映画だ!!
しかも、その姿に漁師たちは「市長が俺たちのために・・・」と感動してしまう。
大・大・大爆笑!
かなりのバカ映画だ。
そして、ここから市長はスーパーヒーローと化す。
先日、自らの犯罪を擦り付けようとしたスリ男が危機に瀕していたら、
命を顧みず助けに行き、
避難した倉庫にサメが舞い込んできたら、角材を持って打ちのめす!
市長、スゲェェェェェ!!!!!
サメも退治し、「さぁ、これかどうしよう!」という時に、
(都合よく)台風の目に入り、一休み。
市長はこの隙を利用して、妊婦の救助へと向かわせる。
そして、その後は・・・うううっ・・・語りたいが、
もうこの時点で上映時間94分のうち1時間以上語ってしまっている。
あまり語りすぎるのは良くないんだが・・・。
でも、どうしても言いたい。
この後、クライマックスがない!!!!!!!!
妊婦救出作戦の下りで多様、見せ場はあるものの、
それ以外はトレーラーで見たシーン以上のものがないのだよ。
騙されたぁ〜。
いや、騙された方が悪いのか!?
大きな声じゃいえないけど、だってこの映画、中国産だよ。
しかも、整合性が取れていない。
台風の目に入った後、
一体、台風はどこへ行ったのだ!?
ミニチュアの特撮を含め、
本当に突っ込み所が満載だ。
(まぁ、ミニチュアは愛くるしいので、許せるが)
更に、ラストで巨大台風が発生した原因について説教を垂れる。
その原因を作っている最大の要因国はどこですか!?
2007年にアメリカを抜いてトップになった国はどこですか!?
「あんたらに言われたくないよ!」
と、最後の最後まで突っ込みを入れたくなる作品だ。
しかも、後から知ったんだけど、この『超強台風』、
2008年の第21回東京国際映画祭で上映されているのね・・・。
しかもコンペティション部門で・・・。
「良いんですか!?こんな作品をコンペに出して!!」
と、過去のことまで突っ込みを入れたくなる作品だ。
で、本編を見た後、資料を読んだ。
そこにはフォン・シャオニン監督のコメントが載っていた。
「昨今のVFXはCGに頼りすぎている。
私は実写のほうがもっと観客に衝撃を与えることが出来ると思う。
この映画の特撮の80%は実写だ。
本当に撮ったから、観客はリアルに感じるだろう」
あなたが与えた衝撃は、「衝撃」でも「笑撃」でもなく「笑劇」です!
ちゅうかさ、CGを使う金もないし、
ハリウッドクラスのCGを作る技術もないだけの話なんじゃないの?
って、監督のコメントにまで突っ込み入れたくなる作品だ。
実写で撮ったから迫力があります!!
更に、ちょっと前に初日決定のお知らせが届いたんだが、
見ると9月25日(土)だった。
『TSUNAMI−ツナミ−』の公開日も9月25日(土)。
完全に狙ってこの公開日にしたんでしょ!
って、配給会社にも突っ込みを入れたくなる作品だ。
(そんなセンスが好きだったりもするんだが・・・)
と、いろいろ書きましたが、『超強台風』。
「嫌いか?」と問われれば、迷うことなく「好きです」と答えます。
ただ、バカ映画という前提で見ないと、
「なんだこれ!!!」と怒り狂う可能性があるので、
その点、見る際にはご注意下さい。
いやー、とにもかくにも、予告編から感じ取った通り、
いろんな意味で中国っぽい映画でした。