10/2より新宿バルト9、梅田ブルク7ほか全国にて 配給会社:ヴィレッジ、ティ・ジョイ (C)2010 松竹/ヴィレッヂ |
無実の罪で監獄島に幽閉された伊達土門は、
濡れ衣を着せた者たちへの復讐心を燃やしながら、10年にも及ぶ投獄生活を続けていた。
監獄島の奥深くに捕らえられていたサジと名乗る男の助けを借り、
脱獄に成功した土門は復讐の鬼と化し、故郷・鳳来へと向かうが・・・。
デュマの「モンテ・クリスト伯(岩窟王)」をモチーフにした、
劇団☆新感線の時代活劇「蛮幽鬼」の「ゲキ×シネ」版。
(「ゲキ×シネ」とは?)
「ゲキ×シネ 新感線☆RX『五右衛門ロック』」を見て以来、
「ゲキ×シネ」に魅了され、本作もかなり楽しみだった。
結果から言うと、今回も抜群の面白さだった。
毎度の事だが、役者が凄い。
復讐に燃える伊達土門には、上川隆也。
「ゲキ×シネ 新感線☆RX『五右衛門ロック』」の北大路欣也も目力が凄かったけど、
上川隆也も凄いぞ。
全ての感情が目から滲み出ている。
恨み辛みの権化となったがゆえ、
まるでブラインド・ガーディアンのボーカル、ハンズィ・キアシュの如く、
セリフの一つ一つも力(りき)が入りまくる。
その力強さに、ただただ圧倒。
対照的なのがサジを演じた堺雅人。
飄々としていて、捕らえどころのない男を演じたら右に出るものはいないが、
今回も「笑顔の裏になんかありまっせー」ってな感じのサジを不気味に演じている。
軽やかに、そして鮮やかに人を殺しまくる殺陣も見事。
改めて器用な役者さんだと感じた。
土門と愛し合いながらも、運命のいたずらで対峙することとなってしまうヒロイン、
大王の妃《美古都》役には稲森いずみ。
見る前は、
「ゲキ×シネ 新感線☆RX『五右衛門ロック』」の松雪泰子や、
「ゲキ×シネ『蜉蝣峠』」の高岡早紀、
「薔薇とサムライ〜GoemonRock OverDrive」の天海祐希等に比べると、
ちょっと線が細くて、インパクトに欠けると感じていた。
案の定、出てきたはいいが、声も動きも小さくて、「なんか心もとないなぁー」って。
ところが、中盤からいきなりドカァーンと炸裂する。
世間知らずで、か細い美古都は、
ある事件をきっかけに豹変する。
その対比をより明確にするため、
最初の方の演技は抑え目にしていたのね。
そして、今回、キャストの中でもっとも注目していたのが、
美古都を守る剣の達人・刀衣を演じた早乙女太一だ。
随分前だけど、情報番組で彼の特集をやっていて、
舞台で女形として踊っている姿を見た。
その華麗で美しく、妖艶な舞に見とれてしまった。
まだ十代と聞き、とても驚いた記憶がある。
「ゲキ×シネ『蛮幽鬼』」でも、その美しすぎる舞を見せてくれるのかな?
と期待せずにはいられない。
で、やってくれた。
しかも女形と男の両方で魅せてくれた。
女装の設定で踊った舞は美しく、
男の剣士としての殺陣は華麗。
ひとつひとつの動きにキレがあって、流れている。
この4人がメインとなり牽引していくんだが、
そこに橋本じゅん、高田聖子、粟根まことら劇団☆新感線メンバーに加え、
山内圭也、山本亨、千葉哲也ら個性派俳優たちが絡み、
物語を大いに盛り上げてくれる。
復讐、恨み、謀略、裏切り、
様々な思いが交錯するストーリー展開も秀逸で、
泣きそうになってしまうところも数箇所あった。
エンターテイメントとして優れたshowであり、
劇団☆新感線、そして「ゲキ×シネ」ならではの面白さが詰まっていた。
ただ、劇団☆新感線特有のユーモアがやや薄いので、
もう少し笑いが欲しいと思ってしまったのは、贅沢な望みってヤツですかね・・・。
そして、見る前から懸念していたんだが、やっぱり古田新太不在は、寂しいッス。