2010年09月30日更新

#519 「ゲキ×シネ『蛮幽鬼』」


蛮幽鬼

「ゲキ×シネ『蛮幽鬼』」

10/2より新宿バルト9、梅田ブルク7ほか全国にて
配給会社:ヴィレッジ、ティ・ジョイ
(C)2010 松竹/ヴィレッヂ




無実の罪で監獄島に幽閉された伊達土門は、
濡れ衣を着せた者たちへの復讐心を燃やしながら、10年にも及ぶ投獄生活を続けていた。


監獄島の奥深くに捕らえられていたサジと名乗る男の助けを借り、
脱獄に成功した土門は復讐の鬼と化し、故郷・鳳来へと向かうが・・・。


デュマの「モンテ・クリスト伯(岩窟王)」をモチーフにした、
劇団☆新感線の時代活劇「蛮幽鬼」の「ゲキ×シネ」版。
「ゲキ×シネ」とは?


「ゲキ×シネ 新感線☆RX『五右衛門ロック』」を見て以来、
「ゲキ×シネ」に魅了され、本作もかなり楽しみだった。


結果から言うと、今回も抜群の面白さだった。


毎度の事だが、役者が凄い。


復讐に燃える伊達土門には、上川隆也。


「ゲキ×シネ 新感線☆RX『五右衛門ロック』」の北大路欣也も目力が凄かったけど、
上川隆也も凄いぞ。


蛮幽鬼


全ての感情が目から滲み出ている。


恨み辛みの権化となったがゆえ、
まるでブラインド・ガーディアンのボーカル、ハンズィ・キアシュの如く、
セリフの一つ一つも力(りき)が入りまくる。


その力強さに、ただただ圧倒。


対照的なのがサジを演じた堺雅人。


飄々としていて、捕らえどころのない男を演じたら右に出るものはいないが、
今回も「笑顔の裏になんかありまっせー」ってな感じのサジを不気味に演じている。


軽やかに、そして鮮やかに人を殺しまくる殺陣も見事。
改めて器用な役者さんだと感じた。


土門と愛し合いながらも、運命のいたずらで対峙することとなってしまうヒロイン、
大王の妃《美古都》役には稲森いずみ。


見る前は、
「ゲキ×シネ 新感線☆RX『五右衛門ロック』」の松雪泰子や、
「ゲキ×シネ『蜉蝣峠』」の高岡早紀、
「薔薇とサムライ〜GoemonRock OverDrive」の天海祐希等に比べると、
ちょっと線が細くて、インパクトに欠けると感じていた。


案の定、出てきたはいいが、声も動きも小さくて、「なんか心もとないなぁー」って。


ところが、中盤からいきなりドカァーンと炸裂する。


世間知らずで、か細い美古都は、
ある事件をきっかけに豹変する。


その対比をより明確にするため、
最初の方の演技は抑え目にしていたのね。


蛮幽鬼


そして、今回、キャストの中でもっとも注目していたのが、
美古都を守る剣の達人・刀衣を演じた早乙女太一だ。


随分前だけど、情報番組で彼の特集をやっていて、
舞台で女形として踊っている姿を見た。


その華麗で美しく、妖艶な舞に見とれてしまった。


まだ十代と聞き、とても驚いた記憶がある。


「ゲキ×シネ『蛮幽鬼』」でも、その美しすぎる舞を見せてくれるのかな?
と期待せずにはいられない。


で、やってくれた。
しかも女形と男の両方で魅せてくれた。


女装の設定で踊った舞は美しく、
男の剣士としての殺陣は華麗。


ひとつひとつの動きにキレがあって、流れている。


この4人がメインとなり牽引していくんだが、
そこに橋本じゅん、高田聖子、粟根まことら劇団☆新感線メンバーに加え、
山内圭也、山本亨、千葉哲也ら個性派俳優たちが絡み、
物語を大いに盛り上げてくれる。


復讐、恨み、謀略、裏切り、
様々な思いが交錯するストーリー展開も秀逸で、
泣きそうになってしまうところも数箇所あった。


エンターテイメントとして優れたshowであり、
劇団☆新感線、そして「ゲキ×シネ」ならではの面白さが詰まっていた。


ただ、劇団☆新感線特有のユーモアがやや薄いので、
もう少し笑いが欲しいと思ってしまったのは、贅沢な望みってヤツですかね・・・。


そして、見る前から懸念していたんだが、やっぱり古田新太不在は、寂しいッス。


蛮幽鬼

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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