10/9より角川シネマ新宿ほか全国にて 配給会社:角川映画 (C)2010「死刑台のエレベーター」製作委員会 |
ルイ・マル監督の『死刑台のエレベーター』を
日本映画としてリメイクするというニュースを聞いた時、
“なんと無謀なこと”をと思った。
あまりこのブログでクラシック映画に触れる機会はなかったけど、
学生の頃、名作と言われる作品は見境なく見まくった。
もちろん『死刑台のエレベーター』も見た。
随分前に見たから細かいところは覚えていないが、
クールな映画だなと思ったのは覚えている。
愛人関係になっている男女二人が主人公なのにも関わらず、
共演シーンが、○○だけというイカした(死語?)演出に唸った。
世間一般的にも名作と言われている本作をリメイクする必要が、
果たしてあるのだろうか?
でも日本が舞台ということでどんな作品になるのかという期待もあった。
監督は緒方明で、主演は阿部寛と吉瀬美智子だしね。
阿部寛が素晴らしい俳優さんであることを今更語る必要はないでしょう。
吉瀬美智子に関しては、
「ニベアボディ」のCMにおける爽やかな色気に悩殺されたクチなんだが、
(特に今のCMじゃなくて、2年ぐらい前のCMね。背中から抱きつくバージョン)
演技をちゃんと見たことがなかったので、大役をどう演じるのか楽しみだった。
そんなちょっとした期待を胸に見た日本版『死刑台のエレベーター』ですが、
オリジナルの細部がスッカリ抜け落ちており、比較は出来ないんだけど、
比較云々以前にちょっと不自然なところがたくさんあり過ぎて、
イチイチ気になってしまった。
手都芽衣子と時籐隆彦は恋仲であり、
芽衣子の夫で時籐の上司でもある手都グループ会長手都孝光の殺害計画を練る。
それは密室での自殺と見せかけた完全犯罪。
しかし、完全犯罪と言う割には、殺し方とか甘すぎる。
鑑識がちょっと調べれば、どのくらいの距離から銃が撃たれたのか分るから、
他殺だってすぐにばれるよ。
まぁ、この変はオリジナルもそうだから良しとしよう。
逆にオリジナルでは疑問となる日が沈む前の計画実行する理由と、
主人公が犯行に使用したロープの回収を忘れるというミスというかドジを、
きちんと処理し、説得力を持たせている。
“なかなか頑張っているな”と思ったのも束の間、
時籐がエレベーターに閉じ込められてからの芽衣子の行動が、良く理解出来ない。
時籐の友人とバーで会うシーンとかどうなんだろう・・・。
またもうひと組カップルが出て来て、犯罪へと突き進むんだが、
これがあまりに酷い。
玉山鉄二扮する警官・赤城邦衛は、
現代社会で行き場を失った若者の気持ちを体言する役割なのは理解出来るが、
あまりにもアホ過ぎる。
これが今の若者の具現化と言うのなら、若者が可哀想だ。
彼と行動を共にする北川景子演じる松本美加代のキャラクターもイマイチ掴めなかった。
仕事もしているし、刹那的に生きるような子には見えなかった。
なんで彼女がわざわざ危険な道を選択するのか?
疑問符がつきまくった。
また、犯罪が明るみになってからの警察側の調査はかなり強引で、
都合良く話が進んでいく。
柄本明扮する刑事は感だけで、事件を解明してしまう。
これじゃ犯罪映画としてのスリルはあまりない。
細かい演出も微妙だ。
車によるそれなりに長距離な尾行が2回出てくるが、
他にほとんど車が走っていないし、あまり車間距離をあけていない。
これじゃ尾行される側は気付くでしょうよ。
これ以外にも符に落ちないところが幾つもあり、
丁寧な演出をする緒方明監督ぽくないなぁ〜って。
あとで資料を読んで知ったんだけど、
本作はプロデューサー主導で、監督は職人に徹するというスタイルだったらしい。
それも影響しているのかな?
かなり雑な脚本&演出だが、
キャストに関しては概ね良かったんじゃないかと。
特に吉瀬美智子。
映画初主演だけど、役目は果たせたように思う。
芽衣子は情熱的であるがゆえ、
欲しいものは何が何でも手に入れないと気が済まない強欲な女だ。
残酷で危険な女と分かっていても、男たちは虜になる。
そんなファム・ファタールを演じた吉瀬美智子は「ニベア」と違ってまた魅力的。
ジャリには出せない大人の色気です。
時籐でなくても溺れる。
堂々としているのがまた良いですね。
パンティ下ろして便器に座っているシーンとか最高。
バン!といきなりこのシーンがカットインしてくるので、
ドキッ!とさせられた。
緒方明監督は、吉瀬美智子を徹底的に美しく撮りまくってくれたので嬉しい限り。
「綺麗な人のアップ、見たいでしょう?」
これはアップ多用に関しての緒方明監督の弁。
「はい!見たいです!」と即答ですよ。
細部はイマイチ締まりがないが、吉瀬美智子が綺麗なので、よしとしますか。
しかし、オリジナルもこんなに粗い作りだったっけ?
久しぶりに見直してみようかな。