12/3よりシアターN渋谷ほか全国にて順次公開 配給会社:キングレコード、ビーズインターナショナル C)2010 Lemmy Movie LLC photo by Wes Orshoski |
随分前の2006年9月の記事、
【裏部屋】「第1部:ツインタワー 〜 オリバーおっちゃんとボクと、時々、サマンサ・フォックス」にて、
中学生の時、渋谷パンテオンでベトナム戦争映画『プラトーン』を鑑賞した帰りに、
サマンサ・フォックスのグラビア・ヌードが掲載されていた「ペントハウス」を買ったと書いた。
サマンサ・フォックスは当時、「タッチ・ミー」という扇情的な歌で、
大ヒットを飛ばしていたイギリス人シンガー。
キュートな顔立ちと巨乳の持ち主で、
「Touch me, touch me....I wanna feel your body」とセクシーに歌う彼女に、
中坊は一発爆沈!
そんなわけでサマンサ・フォックスのヌードが掲載された「ペントハウス」を購入し、
お目当ての裸を見た思春期真っ只中の中坊は、ただただ「スゲー」って。
「ペントハウス」にはそんな爆乳ヌードの他に、
サマンサ・フォックスとイカツイ顔をしたオッサンが、
スタジオのミキサールームで仲睦まじそうに寄り添っている写真が掲載されていた。
「なんだ!このオヤジは!」
写真の下には、「モーターヘッドのレミー」という説明コメントが。
これが伊藤Pにとって、初めてのレミーとの接触だった。
(前置き、ながっ!)
その頃はまだそれほどハードロック/ヘビーメタル(HR/HM)を聴いておらず、
モーターヘッドというバンドすら知らなかった。
それから数年後、
なんかの音楽番組で「エース・オブ・スペイド」を演奏するモーターヘッドの映像を見た。
疾走感溢れる骨太なサウンド。
そして、マイクスタンドを高くして、マイクを見上げるようにしながら仁王立ちでベースを弾き、
表情を変えずにダミ声で吠える大男の姿にぶったまげた。
「こ、これが、あのレミーかっ!」
その後、メタリカがモーターヘッドの大ファンで、かなり影響を受けていることや、
多くのアーティストたちが、レミーをリスペクトしていることを知った。
しかしながら、数多のHR/HMのCDをコレクションしているのにも関わらず、
モーターヘッドのアルバムは一枚も持っていない。
それ以前に、誰もが知っているヒット曲が、
「エース・オブ・スペイド」ぐらいしかないのに、
何故、レミーがみんなからそこまで慕われるのかが理解出来なかった。
メタルファンを名乗るな!というぐらい不届き者なのかもしれないが、
モーターヘッドやレミーの凄さをほとんど知らないまま、
レミーの魅力に肉薄するドキュメンタリー映画『極悪レミー』を見た。
そして、この映画を見て、
メタリカのメンバーをはじめ、多くの人たちが彼に心酔する理由が分った。
レミーは、スゲェ。
まず、自分を持っている。
迎合しない。
これだと思ったことは、
信念を持って突き進む。
それは音楽的なアティチュードだけでなく、生き様もだ。
レミーは、前バンドのホークウィンドを解雇されて、
1975年にモーターヘッドを結成して以来、
一貫してその音楽的な志向を変えていない。
スピード!爆音!ロックンロール!!
ベースを歪ませて、ブリブリと爆走!
世の中がディスコブームになろうと、
パンクムーブメントが起ころうと、ニューウェーブが来ようと関係ない。
80年代のHR/HMブームが終わっても、
グランジをぶっ飛ばし、ラウド・ヘヴィネス系をも蹴散らす。
というか、後発組がモーターヘッドから影響を受けているのだ。
『極悪レミー』には、メタリカのメンバーや、
アンスラックスのスコット・イアン、メガデスのデイヴ・エレフソンが登場し、
レミー(モーターヘッド)からの影響を語っている。
レミーが結成したモーターヘッドがいなければ、
メタリカもメガデスもスレイヤーもアンスラックスも存在しなかった(かもしれない)。
このスラッシュ四天王がいなければ、
ラウド系も・・・となる。
ハードロック・ファンが毛嫌いするグランジに至っても、
本作には元ニルヴァーナのデイヴ・グロールや、サウンドガーデンのジェイソン・エヴァーマン、
アリス・イン・チェインズのマイク・アイネズといったグランジを支えたアーティストが登場し、
レミー(モーターヘッド)の魅力を語っている。
オジー・オズボーン、アリス・クーパー等、共にロックを牽引してきた盟友たちや、
元ガンズ・アンド・ローゼスのスラッシュ、
スティーヴ・ヴァイ、モトリー・クルーのニッキー・シックスといった、
HR/HMファンにとっては馴染み深い人たちも、もちろん登場する。
その他、ラモーンズのマーキー・ラモーン、クラッシュのミック・ジョーンズといったパンク勢、
ニューウェーヴ系である元ジョイ・ディヴィジョンのピーター・フック、
ロカビリーバンド、ストレイ・キャッツのスリム・ジム・ファントムなど、
もうジャンルを超越して、様々なミュージシャン達がレミーをリスペクト。
そして、なぜ、彼等がレミーと、レミーが作り出す音楽を愛するのかが、
このドキュメンタリー映画を見れば分る!
レミーは彼等に「オレを尊敬しろ」などと強要していない。
レミーの預かり知らぬところで、勝手に周りが影響を受けたのだ。
その影響力の強さは音楽だけではなく、
レミーの人柄に拠るところも大きいと思う。
レミーはとにかくポリシーを変えない。
ベースはリッケンバッカーしか使わない(ビートルズの影響)。
アンプはマーシャル直結で、音色はLOWとHIGHをゼロ、ミドルをマックスが定番。
私生活ではマルボロ、ミリタリーグッズ、ブーツ、ゲーム、
好きなものはとことん極める。
女も大好きで、「今までに1000人以上の女と寝た」という。
酒も大好きで、コーラのジャックダニエル割りは、水みたいなもんだ。
糖尿病と診断されたのに、調合の割合を変えただけで飲み続けている。
義理堅く、気配りも出来て、ユーモアも忘れない。
ファンを大切にする。
だからみんなレミーを慕うんだ。
ってことがこの映画を見れば分る!
そんな影響を撒き散らしながら、
35年間、ひたすらレミーらしさ、モーターヘッドらしさ貫き通し、
尚且、日々、精進し続けている。
そんなレミーがスゲェ。
その凄さは『極悪レミー』を見れば分る!
モーターヘッドなんて知らない、レミーなんて知らない、
この手の音楽に興味がないという人は別に見なくていいけど、
HR/HMに触れたことのある人たちは、絶対に見た方が良い。
たったの2時間弱でレミーが好きになります。
ちゅうかさ、この前のさいたまスーパーアリーナでのメタリカの公演を見に行った人たちは、
見るべきだと思う。
この映画を見ずしてメタリカ・ファンと名乗るべからず。
(といいながら、メタリカのライブに行っていない、俺・・・)
さいたまスーパーアリーナのキャパがナンボかしらんが、
万単位でしょ?
大挙してメタリカのファンが『極悪レミー』を見に行ったら、
シアターN渋谷は大盛況だ!
『極悪レミー』の中での個人的なハイライトは、メタリカとの共演シーン。
メタリカの練習中に現れたレミーとラーズ・ウルリッヒ、カーク・ハメット、
ジェームズ・ヘットフィールドとのやり取りは感動的だ。
そして、メタリカのライブにレミーが客演し、
「ダメージ・ケース」を演奏するんだが、
こんなに楽しそうにしているジェームズを見たことがない。
本当に、本当に嬉しい!
オレはレミーが大好きだ!!
ということが、全身から伝わって来る。
それはカークも、ラーズも、新しいベーシストのロバート・トゥルージロも一緒。
帝王メタリカのメンバーの顔を破顔させてしまうレミー。
やっぱりスゲェ〜
さて、余談ですが、
冒頭にサマンサ・フォックスのことを書きました。
“そういえば、最近どうしているんだろう?”と気になり、
調べてみたら、なんとレズビアンであることをカミングアウトし、
更には結婚したとか、しないとか。
しかもその仲介人をレミーが務める(た)との情報も。
やっぱりレミーはスゲェ〜。