12/4よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて順次公開 配給会社:日活 (C)2009 BY MANAGEMENT ALL RIGHTS RESERVED. |
失業中のトラヴィスは、ある高額な報酬が受けられるという心理実験に参加する。
それは被験者24人を囚人役と看守役に分け、
刑務所と同じ環境でルールに従って14日間過ごすというものだった。
最初は単なる役割を演じていた被験者たちだったが、
次第に理性を失いはじめ、ルールを破りだし、
遂には擬似刑務所内の秩序が崩壊してしまう・・・。
1971年アメリカ・スタンフォード大学の心理学者フィリップ・ジンバルド博士が
行なった監獄実験を題材にした心理スリラー。
ドイツ映画『es[エス]』の元にもなったこの実験は、
普通の人が特殊な肩書きや地位を与えられると、
その役割に合わせて行動しようとすることを証明するために行われた。
ジンバルド博士の予測通り、
日ごとに被験者たちはその肩書きに添って行動するようになったが、
被験者たちの多くが精神的破綻をきたしたため、
当初の予定の14日間に満たない6日間で中止された。
実験の初期段階で、被験者が過度に変貌してしまったのにも関わらず、
実験を続行させたジンバルド博士は、多くの批判を浴びたが、
彼が証明しようと思ったことが、実際に証明され、
心理学的には重要な実験と見なされている。
で、この映画は、この実験の目的を知っているかいないかで、
受け取り方が変わってくるように思う。
『エクスペリメント』には、実験の目的が一切描かれていない。
『es[エス]』は随分前に見たのでうろ覚えだが、
確か、実験する側の描写もあり、
重要な役割を果たしたと記憶している。
今回は、そこをあえてバッサリと落としている。
目的が分らない=恐怖倍増
となるんだけど、最後の最後まで目的が描かれず、
スッキリしない、残尿感が・・・。
なにせ『es[エス]』も見ているし、
実際に行われた実験であることも知っていたんだが、
肝心の実験の目的を完全に失念しておりまして・・・。
また、冒頭に実験者たちは登場するものの、
実験が開始されると、彼らは姿を現さなくなる。
変わりに「赤のランプ」が監視役を務め、
点滅したら実験が中止となる。
で、「暴力行為が行われたら即座に中止」というルールがあるのだが、
実験開始からわずか2日でそれが破られる。
しかし、赤のランプは点滅しない。
つまり監視者が、その暴力を黙認したということになる。
被験者たちはもちろん、見ている我々も「なんで?大丈夫なの?」という気持ちになる。
暴力行為がエスカレートしても、一向に赤いランプは点滅しない。
基準が全くわからなくなるので、観客も被験者、特に囚人役の人たちと同じような、
不気味で絶望的な気分に陥る。
これは中々、上手い演出だと思ったんだが・・・、
やっぱりラストがスッキリしないんだよねぇ・・・。
(あまり書くとネタバレになる)
『es[エス]』のリメイクとはうたっていないから、
比較するのもどうかと思うが、
やはり『es[エス]』のインパクトが強かったので、
割を食ってしまっている感は否めない。
しかしながら、囚人役となるトラヴィスを演じたエイドリアン・ブロンディと、
善良な男だったのに看守役になってから、
完全に我を忘れてしまうバリスに扮したフォレスト・ウィテカーの頑張りもあって、
97分間、緊迫感を持って見ることが出来る。
なんにしても、こんな実験には絶対に参加したくないですな・・・。
やるなら看守役が良いけど、
でもねぇ・・・
やっぱりどっちも嫌だな・・・
自分だったらどんな行動を取るのだろう?
あっという間に理性を失ってしまうような気がする・・・