12/17よりTOHOシネマズ日劇ほか全国にて 配給会社:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン (C)Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved. |
宣伝的にはあまり触れられていないが、
1982年に製作された『トロン』の続編。
『トロン』は、初めてCGを本格的に取り入れた映画として有名ではあるが、
世間一般的に誰もが知っている知名度抜群の作品ではない(と思う)。
更に28年も前に作られたわけで、
例え見ていたとしても、細かい内容なんて覚えちゃいないでしょう。
ある程度の映画ファンだったら、言われなくても『トロン』の続編か、
関連作品だってわかるだろうし、宣伝で続編を前面に押し出す必要はない。
宣伝方針としては正しいと思う。
斯く言う小生も、遥か彼方の昔にゴールデン洋画劇場で『トロン』を見ているんだが、
なんとなくバイクシーンのCG映像を思い出すぐらいで、
ストーリーは全く覚えてない。
アメリカでの『トロン』の認知度がいかほどか分からないけど、
きっと日本と同じようなもんでしょう。
ってことは、『トロン:レガシー』の製作陣は、
『トロン』を知らなくても、見ていなくても、忘れていても楽しめる映画を作ろうとするはず。
ということで、改めて『トロン』を見直さないまま鑑賞してみた。
まず、オープニングがカッチョ良い。
ゾクゾクした。
このド頭だけで掴みはOKだ。
期待が膨らむ中、物語が始まる。
1989年、デジタル系企業の最大手エンコム社のCEOケヴィン・フリンは、
息子のサムに、コンピューター・システムの内部の話をする。
この前作『トロン』の説明も兼ねているのと思われる導入部分は、
唐突だが、結構重要なので集中して見た方が良いでしょう。
そして、ケヴィン・フリンが突然謎の失踪を遂げてから20年後、
27歳に成長したサムは、父からのメッセージを受け取る。
指示されて行ったゲームセンターで秘密の研究所を発見したサムは、
コンピューター・システムの世界へと迷い込む。
ここからの描写は、正に圧巻で、
『ブレードランナー』や『マトリックス』がそうであったように、
今まで見たこともないような唯一無二な世界観が広がる。
闇の空間の中で、白、オレンジ、青、黄色の光が交差し、
有機体である人間もサム以外は、まるでロボットのよう。
全てが無機質で、不気味なんだが、美しい。
あまりテクノは好きじゃないけど、
ダフトパンクによる音楽も超マッチしていて、
なんとも言葉に出来ないような世界観を作り上げている。
で、その世界は、若かりし頃のケヴィンにそっくりな独裁者クルーに支配されていた。
サムは、サムがケヴィンの息子だと知ったクルーから、
生死を賭けたライト・サイクル(バイク)のレースを挑まれる。
このゲーム・グリッドと名付けられたレースシーンは、
恐らく『トロン』で印象に残っていたレースのグレードアップ・バージョンなのでしょう。
なんの説明もないまま始まるので、最初は戸惑うが、
すぐにルールは理解出来る。
ルールが分かれば、レースに集中!なのですが、
このチェイスシーンは、「映画史に残るんじゃないか?」ってぐらい斬新で面白い。
これだけでも一見の価値がある。
レースは一回しかないんだが、「もう一度見たい!やってくれ!」と思ったほどだ。
続いて、このレースでサムは窮地に立たされてしまう。
そこに謎の女クオラが現れサムを救う。
クオラに導かれ、辿りついた場所で、サムは年老いた父・ケヴィンと再会する。
と、ここから先も、見所満載で、
『マトリックス』のリンボーダンスで銃弾を避けるシーン見たいに、
何度でも見たくなるようなキラーショットが随所に登場する。
映画を見て、こんな風にワクワクしたのはいつ以来か?
テクノロジーの進化に伴い、
もうこういう感動を映画からは得られないとさえ思っていたよ。
そういた点では、映画小僧だった頃に持っていた熱いハートを甦らせてくれたんだが、
サムがケヴィンと再会してから以降の物語は、かなりグダグダだ。
サムたちは現実の世界へ戻ろうとするが、戻るための手段や段取りは、
コンピューター・システム内のことだから、
作り手(製作陣営)が好きなように作れる。
だからこそ、出口に辿り着くまでのプロセスを観客にきちんと説明すべきなのに、
それがない。
よって、見ている我々はサムやケヴィンにただただついて行くしかない。
一つ一つのピンチには、ハラハラするんだけど、
そのピンチは唐突にやってくる。
単発だから物語の展開でスリルを感じることはあまりない。
ぶっちゃけなんでもありのご都合主義が連発する。
良く考えるとサムとケヴィンとの再会シーン以前もそうだ。
サムはコンピューターのパスワードを簡単に解除しちゃうし、
運動神経抜群でメチャクチャ強い。
敵の追跡能力とかも、「あっ、そんなこと出来るんだー」ってな感じだし、
ケヴィンに至っては、「あんたはジェダイの騎士か?」って。
その辺がとても残念なんだが、
こうやって理詰めでしか物語を追えない自分がつくづく嫌になるね。
これじゃ、いつまで経ってもファンタジー映画を心のそこから楽しむことは出来ないだろう。
『トロン:レガシー』みたいな作品はその世界に身を委ねて、
細かいところなんか気にしないで見た方が、断然良いって分かってるんだけどね・・・。
で、マイナス・ポイントが出たついでにもうひとつ言っちゃうと、
サムを演じたギャレット・ヘドランドにまるで魅力を感じなかった。
異性が見たらカッコイイのかね?
ヒロインであるクオラ役のオリヴィア・ワイルドも微妙。
作品のカラーに合わせて、温かみのないメイクをしているからかな?
『ブレードランナー』のハリソン・フォードとショーン・ヤングみたいな
絶妙なキャスティングは難しいんだねぇ。
で、そんな穴を埋めるのが、ジェフ・ブリッジス。
『トロン』に続いての出演だが、
今回は、悟りを開いた優しくも信念を持ったケヴィンと、
野心的で欲深いクルーの二役を演じ分けている。
クルーは、CGで顔の皺を消していて、
『サンダーボルト』(74)の頃の若々しくてちょっと悪そうなジェフ・ブリッジスを思い出し、
嬉しくも懐かしさを感じた。
一本の作品で、今と昔のジェフ・ブリッジスを味わえるなんて贅沢だ。
とにかく、ジェフ・ブリッジスの存在感は絶大だ。
てな訳で、ところどころ不満はあるものの、
未知の体験が出来る映画であることは間違いない。
「あそこがイマイチ!」とか「微妙!」とか思いながら見ると、その分、損する。
頭空っぽにして見るにはちょっとハードルが高い知的な部分もあるので、
ほどほどに神経を研ぎ澄ませて見るのが良いでしょう。
最後に3Dですが、正直、「おぉ!3Dだ!」というのはあまりなかった。
見慣れたのかな?
もしかしたら、3Dを3Dと感じさせない領域を目指したのかもしれない。