2010年12月25日更新

『アブラクサスの祭』スネオヘアー 取材記


アブラクサスの祭

『アブラクサスの祭』


12/25テアトル新宿ほか全国にて順次公開
配給会社:ビターズ・エンド
(C)「アブラクサスの祭」パートナーズ




ごく稀に未知数の取材にぶち当たることがある。


『アブラクスの祭』のスネオヘアーさんがそれに該当する。


というのは本作を見るまで全くスネオヘアーさんと接点がないのだ。


もちろん映画を見て、知る人もたくさんいる。
新人俳優や初めて映画を作った監督とかだ。


でも彼らの場合、キャリアがない分、
その取材対象となる映画さえ抑えておけば、
特に問題は無い場合が多い。


仮に端役などで、出演作があったとしても、
その本数は限られており、ある程度の後追いは可能だ。


しかしながら、スネオヘアーさんは、
俳優としてのキャリアはないものの、
ミュージシャンとしてのキャリアを築いてきている。


ところが、失礼ながら、そのスネオヘアーさんの曲を一曲たりとも知らないのだ。


唯一『のんちゃんのり弁』の主題歌を耳にしているはずなのだが、
全く覚えていない。


更に言うと、スネオヘアーさんが、テレビを筆頭にして、
メディアで話したり語ったりしているのを見たことも読んだこともない。


どんな人物かという情報がまるで皆無の状況だった。


しゃべるのか?しゃべらないのか?
社交的なのか?内向的なのか?
怖いのか、温厚なのか?
気難しいのか、フレンドリーなのか?


まるで判らない。


ということで、下調べをするも、
「あぁ、こういう感じの方なのね」という確信がまるで得られず・・・。


というか、YouTubeにあがっていた「ダウンタウン」の音楽番組の動画を見て、
かえって不安になった。


質問に対して妙な間があり、すぐさま松ちゃんに突っ込まれていた。


「うわー・・・、喋らないし、独特の世界がありそう・・・」って。


キャリアがあるのに、まるで接点が無い。
どんな人柄かもわからない。
更にどちらかというとマイナス的な要素を見てしまった・・・。


今までいろんな人をインタビューさせてもらっているけど、
情報皆無+不安要素となれば、やはりそれなりの緊張感が湧き上がる。


アブラクサスの祭


で、迎えた取材日。


冷たい雨が降る中、取材場所である都内某所の映画制作会社へと向かった。


時間帯は夕刻で、既に何個か取材をこなしているようだったので、
宣伝担当のGさんにスネオヘアーさんの人柄や、
今日の取材の様子を聞いてみたところ、
「よく喋りますよぉ〜」とのこと。


そいつは良かったと思い、取材部屋へと案内されると、
その部屋に既にスネオヘアーさんがいるではないか。


これから取材する対象者がいる中でのセッティング。


貪欲なインタビュアーだったら、
その間を利用して「こんにちは。今日取材させて頂く○○ですぅ」てな感じで、
お近づきになろうとするんだろうけど、
それが出来ない。


もともと人見知りが激しいというのもあるが、
なんか媚びているような感じがするし、
頂いている取材時間外の行動になるので、“反則かな?”って思ってしまう。


これがインタビュアーとしての欠点なのかもしれないが、
あくまで取材時間内で勝負したいという変な気負いもあったりする。


そんな胸中のままセッティングが終了し、
取材がスタートした。


“ちょっと気難しいのでは?”と構えてはいたが、
Gさんの言うとおり、
スネオヘアーさんは圧迫感も無く、普通に喋ってくれた。


でもシャイだね。
それは間違いないと思う。


本作は、音楽にのめり込むあまり鬱病に陥り、
僧侶として新たな人生を歩みだした男・浄念の物語。


プロデューサーは、音楽をやっていた浄念役に本物のミュージシャンをキャスティング
したいと思っていたらしい。


で、以前、そのプロデューサーが製作した映画の音楽を担当したスネオヘアーさんに、
白羽の矢が立った。


知り合いだったからこそのキャスティングかもしれないが、
プロデューサーが、スネオヘアーさんを指名した理由が判るような気がした。


アブラクサスの祭


浄念は引込み思案だが、
人を引き付ける魅力がある。


その辺がスネオヘアーさんとイコールで結ばれる。


浄念は僧侶だから丸坊主だったけど、
目の前にいるスネオヘアーさんには、それこそ“スネオのように髪の毛”があり、
見た目の風貌は浄念と程遠い。


それでもインタビューで直接話してみて、
「あぁ、浄念さんだ」だと感じた。


誰が浄念を演じるか?は、
本作で相当重要だ。


演技初挑戦となるスネオヘアーを抜擢した製作陣は凄いと思う。


どう考えてもリスキーだもん。


プロデューサーがスネオヘアーさんとかつて一緒に仕事をしていなかったならば、
このキャスティングは有り得なかったことでしょう。


もちろん、スネオヘアーさんの佇まいと浄念がニアだったからなんだろうけど、
音楽を担当してきちんと仕事をこなしたスネオヘアーさんに対しての信頼感もあったはず。


今回のインタビューで出演の経緯を聞いて、改めて人脈の大切さと、
仕事に対しての誠実さがいかに大切かを思い知った。


また、初演技でしかも初主演というプレッシャーの中、
見事に浄念を演じきったスネオヘアーさんにも拍手を送りたい。


演技の経験のないミュージシャンが、
いきなりプロの俳優たちと演技しろ、
しかもあなたは主演ですって・・・


俳優が逆の立場だったら、同じように大変だと思う。


プロのミュージシャンと一緒にステージに上がって、
演奏しろ、しかもリードをとれと言われているようなもんだ。


インタビュー自体は、未知数だったのと、自分の力量もあって、
淡々としたものになってしまったが、
仕事に対する取り組みに関して、改めていろいろと考えさせられる取材となった。


■『アブラクサスの祭』
※スネオヘアー インタビューテキスト
スネオヘアー

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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