1/15より丸の内ピカデリーほか全国にて 配給会社:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント |
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「フェイスブック」の創始者マーク・ザッカーバーグ。
2003年、ハーバード大学に通っていた19歳の腕利きハッカーだった彼が、
全世界の登録会員数5億人以上(2010年7月時点)、
会社評価額500億ドル(2010年12月時点)という巨大SNSを生み出したことで、
何を得て、何を失ったのかを描く。
2011年1月11日時点で、34の映画賞で96の賞を受賞し、
来週発表のゴールデン・グローブ賞にも作品賞などでノミネート。
これから発表になるアカデミー賞でも、間違いなく複数の部門で候補に選ばれるでしょう。
ということで、かなり高い評価を受けている作品だ。
それに迎合するわけではないが、やはり傑作だと思った。
ネット上で見知らぬ者同士が繋がり、情報交換や意見し合える場所を作る。
その発想のきっかけから、野望、仲間との共同作業と確執、邪魔者との戦い、
そして、裏切り・・・。
「フェイスブック」が急速に成長していく過程を巧みに描いていく。
まず驚くのはセリフの多さ。
資料には「字幕量2,165枚、3秒に1枚の字幕カード)と明記されていた。
それが他の作品と比較してみて、どれぐらい多いのかは分からないが、
とにかく言葉の洪水だった。
日本語字幕は文字数が限られていて、
登場人物たちのセリフを全部翻訳している訳ではないんだけど、
それでも凄いと思ったんで、英語がわかる人だったら、尚更その量に驚くんじゃないかな。
セリフで多くを語る説明過多の作品はあまり好きじゃないんだが、
製作側は最初からセリフ劇になることを想定して作っているし、
よく見るとジェシー・アイゼンバーグ演じるマーク・ザッカーバーグは、
肝心なところで口をつぐむ。
だから表情や仕草から感情を読み取らなくてはならないシーンも多い。
特にセリフのないラストシーンが秀逸。
マークのこれまでとこれからの未来を的確に表現している。
「スクリーンジャンキーズ・ドット・コム」のフレッド・トペルという人が、
“IT時代の『ゴッドファーザー』だ!!”というコメントを出していて、
いたく共感した。
巨万の富や権力を得た者は、その代償として大切な何かを失う。
そして、決して望んでいない境地へと自らの身を追いやっていく。
『ゴッドファーザー』のマイケル・コルレオーネもそうだし、
マーク・ザッカーバーグもそうだ。
ただ、映画で描かれているマイケルとマークには相違点もあった。
映画のアプローチの仕方の違いなだけで、
作品のどっちが良いとか悪いとかそういう判断基準にはならないんだが、
マイケルには感情移入出来たけど、マークには感情移入出来なかった。
マイケルについての言及はここではしないけど、
『ソーシャル・ネットワーク』は、意図的にマークをニュートラルな立場で描いている。
共感し難いが、嫌な奴とまでは思えない。
良い奴とは思わないが、そこまで悪人には見えない。
凄い偉業を成し遂げたヒーローでもあるが、アンチヒーローでもある。
見る人によって、また見方によって、
マークの捉え方が変わるような描き方をしている。
これがまた良かった。
あと、物語は時系列通りに進まない。
「フェイスブック」が立ち上がるまでと、
その後のマークに降りかかった2つの訴訟を同時進行で描いている。
この構成が絶妙。
構成を考えるもの、演出するのも、編集するのも大変だっただろうなぁ〜って。
練りに練りまくったんでしょう。
そんな困難な映画にチャレンジしたのは、デヴィッド・フィンチャー。
ギミックや特殊効果好きな監督だけど、
正攻法でいった『ゾディアック』以上に、
“らしさ”を封印している。
『ゾディアック』でも使っていたが、
高速度カメラで撮影したシーンが少しあるぐらいだ。
本作に取り掛かるにあたり、
フィンチャーは映画の古典的技法を徹底的に追求したという。
監督としての幅を広げたに違いなく、
今後の作品が益々楽しみになった。
しかし、「フェイスブック」が世に出てからまだ7年足らず。
マーク・ザッカーバーグの人となりや、
「フェイスブック」の誕生秘話を知ることが出来て大変興味深かったんだけど、
一方で、世の中の急激な変化にびびる自分がいた。
たった7年前・・・。
この後、世の中ってどこに向かっていくのかな?
不安で不安で仕方がないよ。