1/29より新宿ピカデリーほか全国にて 配給会社:ギャガ (C)2011 映画「白夜行」製作委員会 |
昭和55年、廃ビルの密室で一人の男が殺された。
事件は被疑者死亡で解決をみるが、担当刑事の笹垣は、ひとり腑に落ちないでいた。
子供とは思えないほど大人びた容疑者の娘・雪穂と、
どこか暗い目をした被害者の息子・亮司の姿が脳裏に焼き付いて離れずにいた。
数年後、笹垣は、美しい女子高生に成長した雪穂の周辺で、
不可解な事件が起きていることを知る・・・。
言わずと知れた東野圭吾の同名ベストセラー小説の映画化。
重量感のある、しっかりとした映画に仕上がっていると思う。
まず、時代の空気をよく捉えている。
昭和の時代を15年間生きた身としては、
「あぁ〜、昭和だぁ〜」って。
映画で描かれている家屋ほど酷くはないが、
自分の家含め、ボロい木造の家とか、たくさんあった。
小学生の時とか、
雪穂ほどではないが、経済的にも、
両親にも恵まれていない(今で言うネグレクト)クラスメイトも数名いた。
自分の記憶にある昭和の風景が、おぼろげに蘇った。
本作では、昭和の雰囲気を出すために、
『プライベート・ライアン』など、戦争映画でよく使われる銀残しの手法を用いているんだけど、
この手法、昭和とマッチするんですね。
それから構成力。
容疑者の娘、被害者の息子。
そして、事件を追う刑事。
この3人と彼等を取り巻く人々の19年に及ぶ物語をソツなくまとめ上げている。
監督・脚本は深川栄洋。
聞けば撮影当時33歳。
ひょえぇぇぇぇ、若いのに凄いなぁって。
既に原作を読んでいたので、
謎解きの楽しみはだいぶ減だったんだけど、
原作を読んでいない人は、きっとラスト30分、大いに楽しめることでしょう。
ただ、雪穂と亮司の関係性や年少時代の彼等を取り巻く環境に関しては、
あまり踏み込めていないように感じた。
2人が暮らしていた地域の貧困と偏見。
これをもっと明確に描かないと雪恵と亮司の“動機”と“繋がり”が弱くなるし、
2人の“悲劇”が盛り上がらない。
見ているこちらがやるせないと思ってしまうような、
哀切を極めた物語になれば、もっとズッシリと心に染みたはず。
それがあれば『砂の器』のように、
日本映画史に残る名作になっていたかもしれない。
役者たちは概ね良いのだが、
雪穂役の堀北真希がやや惜しい。
高校生ぐらいまでは、まぁ、はまるんだが、
後半はちょっと無理があるというか、
背伸びしているのが見えてしまう。
私、頑張っています!!って。
ファム・ファタールを演じるには、もう少し年季が必要か?
じゃあ、他に誰か雪穂役に相応しい同年代の有名女優がいるかと問われると、
あんまり思い浮かばんのだが・・・。
やっぱり高校生から成人した雪穂を演じるとなると、堀北真希か・・・。
堀北真希も亮司役の高良健吾も、
雪穂と亮司を演じるのは、かなり精神的にしんどかったという。
確かに難しい役だろうなぁーと思った。
あと、笹垣刑事を演じた船越英一郎がいい。
よくよく考えてみると、
船越さんの演技をきちんと見たことがなかったことに気がついた。
テレビのサスペンスとかは全く見ないので・・・。
バラエティ番組で見せる明るさや、
優しいお父さんのイメージを覆すような、
真逆な役柄を演じている。
何はともあれ、2時間30分の長丁場ですが、
ダレることもなく、見ることが出来るサスペンス映画だった。
こういう大人の鑑賞に堪えうる日本映画が、
どんどん作れることを祈ります。
ただ、ラスト近くで笹垣が亮司にする提案は、
あまりに唐突で、ちーとびっくりした。