あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い致します。
毎年、元日にその年の映画界の展望なんぞを書き綴っておりましたが、
映画界の展望なんかよりも、自分の展望を考えろってことで、
今年は自粛します。
というわけで、2011年一発目は、普通に作品を紹介いたします。
『春との旅』 販売元:東映株式会社 発売元:東映ビデオ株式会社 (C)2010『春との旅』フィルムパートナーズ/ラテルナ/モンキータウンプロダクション |
元漁師で足の不自由な忠男は、孫娘の春と北海の寂れた海辺で暮らしていたが、
春の失業を機に家を飛び出す。
いつまでも自分の世話ばかりを春にさせる訳にはいかぬと、
疎遠となっていた姉兄弟を訪ね、面倒をみてもらおうというのだ。
しかし、忠男のあとを追ってついてきた春ととの旅は、
なかなか思い通りにいかなかった・・・。
見たい見たいと思いつつ、
マスコミ試写会にも劇場にも足を運ばずじまいだった『春との旅』。
DVD化にあたりやっと見ることが出来た。
公開前の段階で、マスコミからの評価は良いものばかりだったし、
劇場公開されるとロングランヒットを記録。
映画に詳しい知り合いのパブ店長は、「この映画は宝物」と言っていた。
こうなると期待するなという方が無理ってもんさ。
冒頭、仲代達矢演じる忠男が、家から飛び出し、
杖を放り投げ、足を引きずりながら早足で歩いて来る。
その後を徳永えり扮する春がドタドタとガニ股でついてくる。
ロングショットの長回しなんだけど、これがとても力強い。
二人の表情、動き、小屋のような家、寒々しい天候や風景から、
今までの苦しい生活が伝わってくるし、
これからの旅が決して楽ではないことを予感させる。
そして、それはその通りになる。
面倒を見てもらおうと姉兄弟の家を訪ね歩くも、みんなそれぞれ事情があり、
自分たちの暮らしだけでも精一杯で、とても忠男の面倒などみる余裕はない。
しかも忠男の態度が良くない。
傲慢で無礼で頑固。
兄から「それが人にものを頼む態度か!」と注意されても仕方がない。
いもかかわらず、忠男は逆ギレさえする。
こりゃあかんわ・・・。
結局、一向に態度を改めようとしない忠男は、どこに行っても爪弾きにあう。
姉兄弟達とのやり取りをみていると、
忠男の性格や今までの決して良好とは言えない関係性が見えてくる。
多分、年齢的に今から性格を変えることはもう無理なのでしょう。
でも、そうは言っても血の繋がった者同士。
ぶつかり合いながらも、忠男のことを心配し、最終的には何がしかの手を差し伸べる。
一方、孫娘の春にとって忠男は、ただ一人の身近な身内だ。
たとえみんなから厄介者扱いされていても、春にとっては大切な存在。
大好きなおじいちゃんのために、来るなと言われても旅について行き、
お金の管理をし、泊まるところを探す。
そんな春がいじらしい。
身勝手で、一人では何も出来ない忠男を、
近親者がサポートする。
家族のあり方を考えさせられるし、
そこにある“情”を感じはするんだが、
その分、忠男がより憐れに見えちゃって・・・。
じいさんだから仕方がないと、割り切ったとしても、
忠男の行動はそれこそ自分勝手で、計画性が無い。
考えも浅はかだし、甘いと思う。
周りの施しに対しても、どれほど感謝しているのかも疑問符がついてしまった。
また、本作が現代社会の老後の問題を描いているようだが、
姉兄弟を遠ざけたのは、忠男自身であり、
孫が身近にいる。
妻も、兄弟も、子供も、孫もいないような、
本当に身寄りの無い老人はたくさんいると思うので、
それに比べたら、まだマシじゃないの?って・・・。
まぁ、この辺の胸中は、自分がじいさんになってみないと分らないかな。
あと、春の父親の後妻が、ある提案を忠男にするんだけど、
その内容があまりに唐突過ぎちゃって、ビックリしてしまった。
これまた“情”なのかもしれないが、
会って直にあんなこと言う人、
実際にいるかね?
てな感じで、いろいろな部分が最後まで引っかかってしまい、
素直に感動できない自分がいたんですよ。
で、賛否両論だったというラスト。
これまた唐突で、「エェェェェッ!!!」って。
スタンスとしては「否」かな。
でも、よくよく考えると、
こうなることの伏線がほとんどなかったことに対して、不満は残るのだが、
実は最高のハッピーエンドなのかもしれないという思いに至った。
ネタバレになるから詳しくは書けないが、
このラストは、ある意味“解放”でしょう。
この発言は不謹慎に思われるかもしれないが、
実際にそういう人生経験をしてしまったので、
こう思っても致し方なしかな・・・って。
(プライベート過ぎて、詳しくは書けませんが・・・)
ということで、
期待していた感動をそこまで得ることは出来なかったものの、
それなりに考えさせられるものがある作品ではありました。
あと役者が素晴らしいですね。
仲代達矢はいるだけで、絵になるし、
春役の徳永えりも、仲代達矢を向こうに回して堂々たる演技を披露している。
忠男が訪ねる姉兄弟たちやその家族を演じる役者たちも、
芸達者な人たちばかり。
仲代達矢と徳永えり以外の出演者をすっかり失念した状態で見たのですが、
それがかえって良くって、次にどんな名優が登場するのかワクワクしながら鑑賞出来た。
なるべくならば、他の出演者をチェックしないで見た方が良いかもしれません。
(って、ジャケ写にモロに出ていますが・・・)
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