2/5より全国にて 配給会社:松竹 (C)2011映画「毎日かあさん」製作委員会 |
西原理恵子の代表作である自伝的同名漫画の実写映画化。
漫画家のサイバラは、6歳の息子と4歳の娘の母親。
夫のカモシダは元戦場カメラマンで、現在はアルコール依存症で入退院を繰り返している。
一家の大黒柱であるサイバラは、仕事、子育て、夫の世話に大忙し。
騒がしい毎日だけど、笑いに満ち、
幸せを感じる日々を送っていたサイバラだったが、
カモシダのアルコール依存症が悪化し・・・。
日々の日常を描いており、ストーリーというストーリーはないんだけど、
夫カモシダのアルコール依存症と、また別の病の進行が物語の核となり、
家族の絆やちょっとした幸せの大切さを描いている。
家族の絆全否定で、幸せのかけらもない『冷たい熱帯魚』を絶賛しておいてなんですが、
『毎日かあさん』結構、好きです。
これはこれでありかと。
他人(ここではサイバラ)が感じる幸せを共有し、
自分に置き換えて、「あぁ、自分も幸せなひと時があるんだぁ〜」って、
再認識させてくれる。
そういうのも映画の力であり、
見る楽しみでもある。
“日々の家族との暮らしが幸せであり大切”
というテーマ的にはごくありふれた内容なのですが、
あまり押し付けがましくない。
夫カモシダの病気というシビアな部分も、
それがメインではなく、
物語の一部として捉えている点にも好感が持てる。
そこを前面に押し出してしまうと、
大嫌いな「お涙頂戴映画」に成り下がってしまう。
そして、何よりも笑いが絶えないのが良い。
アルコール依存症の更生施設を抜き出して、再び酒を飲んでしまったカモシダに、
「おかしゃん(お母さん)」と言われたサイバラが、
「私はあんたのおかしゃんじゃないよ!!!」と、
頭をひっぱたくシーンとか最高です。
幾らでも暗く出来るのに、そうしない。
常に根底には笑いがある。
例え、泣かせのシーンであっても、
アッサリしている。
肩肘はらずに、軽い気持ちで見られるし、
全体的なトーンも暖かくて、心地よい。
1時間54分という上映時間がアッという間だった。
「もう少しこの世界観に浸っていたい、終わって欲しくない」
という気持ちになった。
誰でもそうかもしれませんが、
こう思える映画は、勝手に「良い映画」と判断していたりします。
役者もドンピシャのキャスティングだった。
サイバラ、カモシダをそれぞれ演じた小泉今日子と永瀬正敏は、
プロフェッショナルだなと思った。
元夫婦の共演は、一歩も違えると、
単なる話題づくりの客寄せパンダになってしまう可能性がある。
もちろん、それもこのキャスティングの目的の一つなんだろうけど、
それだけでは終わらない、2人だから出せた間と雰囲気と説得力があった。
舞台挨拶で、子役たちは本当の家族のようだったと語っていた。
小泉今日子は、子供たちの自然な演技を引き出すために、
撮影現場で家族でいることを心がけたと言っていた。
精神的なリスクもあったと思うんだけど、
それを押し殺して、子持ちの夫婦役に挑戦した2人が凄い。
もしかしたら、この2人、
子供がいたら離婚していなかったんじゃないか?って、
思ったりして・・・。
で、その子供たちは反則ですね。
大いに笑いと涙を提供してくれた。
名子役と言われている芦田愛菜は演技しているけど、
矢部光祐、小西舞優の2人は演技していない。
小泉今日子の狙いは、ドンピシャだったようだ。
あと、アルコール依存症を題材にしているのに、
あまりお酒を否定していないのも良い。
サイバラは酒飲みながら、ベッドで子供たちに絵本を読む。
なかなかやりますなぁ〜。
そして、自分も猛烈にお酒が飲みたくなった。
もちろん、帰宅してから飲んだ。
それはさておき、概ね好印象の作品なのですが、
サイバラさんが感じている幸せを掴みたくても掴めない人たちがいたりします。
まぁ、言ってしまうと結婚したくても結婚できない女性や、
結婚していて、子供が欲しいと思うのに出来ない女性だ。
そういう方々が、本作を見てどういう感想を抱くのかが、
とても気になります。