2/5より丸の内ルーブルほか全国にて 配給会社:ワーナー・ブラザース映画 (C)2010 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES |
マサチューセッツ州ボストンの一角にあるチャールストン。
タウンと呼ばれる犯罪多発地帯で暗躍する強盗団の姿を描いたクライムアクション。
監督、脚本、主演は、『アルマゲドン』(98)、『パール・ハーバー』(01)、のベン・アフレックで、
本作が『ゴーン・ベイビー・ゴーン』(07)に次ぐ、監督二作目となる。
『ゴーン・ベイビー・ゴーン』は日本未公開で未見だが、
高い評価を受けたことは知っていた。
『ザ・タウン』も批評家から絶賛されたうえ、
2010年9月に全米で公開されるやボックスオフィスで全米初登場ナンバー1を獲得し、
興行的にも成功を収めているという情報を耳にしていた。
そもそもベン・アフレックは、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(97)で、
マット・デイモンと共にアカデミー脚本賞を受賞しているし、
自身が設立したプロダクションで、テレビ番組や新人監督の作品をプロデュースしており、
俳優だけでなく、作り手としての意識も高い。
そんなベン・アフレックがメガフォンを取った『ザ・タウン』ですが、
評判どおり面白かった。
口が半開きなことが多いけど、ボクは才能あるんです!
小さな街の犯罪ドラマをイメージしていて、
地味な人間ドラマが繰り広げられるのかと思っていたら、
意外にもカーアクションと銃撃戦がてんこ盛りで驚いた。
勿論、Welcomeだ。
市街地で繰り広げられるリアル志向のカーチェイスと銃撃戦は、
それぞれ『RONIN』(98)と『ヒート』(96)を彷彿させる。
アクション監督と編集マンに才能があったからか、
激しいアクションにも関わらず、どこで何が行われているかが把握でき、
アクションシーンで全くストレスを感じなかった。
マイケル・ベイと真逆。
ベン・アフレックは、マイケル・ベイと2度仕事をしているが、
これじゃダメだってところをちゃんと学んでいたようだ。
マシンガン持っていても口は半開きなんです!
そして、そのアクションを引き立てるのが、
アフレック演じるダグを中心に綴られる物語だ。
ある日、ダグは3人の仲間と銀行を襲撃するが、無音警報を発令されてしまう。
焦ったダグの幼馴染で親友のジェムは、銀行の支店長クレアを人質に取る。
無事に逃走に成功した4人は、クレアを解放するが、
奪った免許証からクレアがタウンの住民だと知る。
クレアが何を見て、知っているのかを探るため彼女に近づいたダグは、
次第に彼女に惹かれ、恋に落ちる。
クレアのためにも、足を洗い、この街を出て、
新しい人生を歩みだす決心をしたダグだったが、
タウンがそれを許さなかった・・・。
ダグはクレアを愛する。
しかし、彼女は自身が起こした銀行強盗の被害者だ。
本当のことを伝えたいが、言えばこの恋は終わってしまう。
秘密を胸に秘めたまま、もう犯罪には手を出さず、
別の街に飛び出そうとするが、
タウンのしがらみがそれを阻止する。
クレアとのやり取りだけでなく、ジェムに対する絆と反発心や苛立ち、
やはり強盗で終身刑で投獄されている父親への複雑な感情、
6歳の時に家出をしたまま行方知らずの母親に対する思い、
ジュムの妹で元恋人のクリスタとの愛のない関係を描き、
ダグの葛藤を浮き彫りにし、物語に深みをもたらしている。
やっぱりこういうドラマがあるとアクションが引き立つね。
ただ、タウンという街が、抜け出したいほど酷い街なのかどうか、
いまいち良くわからなかった。
日本にはチャールストンほど、治安の悪い街はない。
銀行強盗や現金輸送車襲撃なんてここ最近、聞いたことが無い。
なので、犯罪の温床と言われても、
ちょっとピンと来なかった。
これは日本人だから仕方がないのかもしれない。
『シティ・オブ・ゴッド』で描かれたブラジルのスラムとまでは行かないが、
ダグがどうしてもこの街から這い出したいという思いに、
もっと共感できるような描写が欲しかった。
これは『白夜行』でも感じたことなんだけど、
這い出したい理由が明確であればあるほど、もっとカタルシスが生まれると思う。
さらに、それは強盗が家業となってしまっているダグの負い目や、
父親との関係性もよりディープになる。
あと、ダグたちはボストンの町で、
あまりスパンを空けずに強盗を行う。
ちょっとリスク高すぎないか?って。
追う側のFBIも、もう少しやりようがあるだろうに・・・ってぐらいヌルイ。
あそこまで容疑者を絞り込めているのならば、徹底的に4人を行確(行動確認)して、
強盗に及んだ瞬間に取り押さえて、現行犯逮捕できるんじゃないっすか?
この辺がもう少しどうにかなっていれば、
歴史に残る傑作になっていたと思うんだが・・・。
まぁ、十分面白いんですけどね。
あと、ジェムの妹でダグの元恋人クリスタを演じたブレイク・ライブリーが良い。
随分前にネットでたまたま彼女の写真を見て、
「綺麗な人だなぁ〜」って思っていた。
出演作はほとんど見たことがなく、
今回が初と言っていいぐらいなんだが、
だいぶ憐れな状態のクリスタを見事に演じていて、
綺麗なだけでなく、演技も上手いんだと知った。
新鋭の女優さんに、こういう役を与え、
しかも当の本人が演じきってしまう。
アメリカの映画業界の懐の深さと、
才能豊かな俳優たちの数の多さを改めて感じた。
最近は、新しく外国人女優になびくことがほとんどなかったんだけど、
ブレイク・ライブリーは、ちょっとキタかも。
ダグの親友ジェムを演じたジェレミー・レナーも、
『ハート・ロッカー』に引き続き、何をしでかすかわからない怖さを醸し出している。
次回作はトム・クルーズ主演の『ミッション4』。
ジェレミーが、シリーズを引き継ぐなんていう話も出ているみたいだし、
どんな演技を披露してくれるのか、今から楽しみだ。
それから、先日亡くなった名優ピート・ポスルスウェイトも出演している。
これまたいい味出しています。
役者が良いと映画がしまりますね。
【追記】
「銀行強盗や現金輸送車襲撃なんてここ最近、聞いたことが無い。」
と書きましたが、家に帰って夕刊を開いたら、
「福島県二本松で1億1000万円強奪」という記事が。
ここ日本でもありました・・・
ポスターでも口半開きだぜ!
【余談】
全米での評価も高いし、信頼のおける知り合いのライターさんも褒めていた『ザ・タウン』。
見たいと思いつつ見そびれていたんだが、
宣伝担当の方が気を利かせてくれて、夜の一般試写を案内してくれた。
日程的にも大丈夫だし、せっかくだったので、ご好意に甘えることにした。
そして、会場に着くと受付に顔見知りである某媒体さんのKさんが立っていた。
「てことは、“○○(媒体名)”さんの独占試写ですか?」と聞くと、案の定だった。
招待者数を分割して様々な媒体で応募を募る一般試写会(サス試写という)なら、
試写会の運営費はほぼ配給持ちなのでそれほど気兼ねしなくて済むんだけど、
流石に独占試写となると、なんだか申し訳なく思ってしまう。
伊藤P「なんだか別の媒体の人間がお邪魔しちゃってすみません」
Kさん「大丈夫ですよ。いらっしゃる旨、お聞きしていましたから」
伊藤P「ホントにすみません。ありがとうございます」
Kさん「いえいえ、カップル限定試写会ですけど、見ていって下さい」
カ、カップル限定試写!?
勿論、アイ・アム・アローンだ。
恐縮から萎縮に。
肩身せまぁ〜。
場内を見ると、若いカップルがたくさん。
気後れしまくった。
でももう一方、マスコミとおぼしき男性がいたので、少し気が楽になった。
まぁ、上映が始まって場内が暗くなれば、わかんないわけだし、
そんなに自意識過剰になる必要もないんだけどね・・・。
小心なもので・・・
さて、最近、映画館での鑑賞マナーの悪さを耳にする。
今回、若いカップルが多かったから上映中イチャイチャしたり、
携帯見たりするのかなと思ったんだが、
「マスコミ試写の方がよっぽどマナー悪いんじゃないか?」って思ってしまうほど、
みなさんお行儀よく静かに見ていた。
それは『ザ・タウン』が面白くって、みんな集中していたからかもしれない。