2/19より丸の内ピカデリーほか全国にて 配給会社:ワーナー・ブラザース映画 (C) 2010 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC. |
休暇先の東南アジアで津波に飲み込まれ、
呼吸が停止した際に不思議な光景を見たパリを活動拠点としているジャーナリストのマリー。
かつては霊能者として活躍していたが、死者との対話に疲れ、
今はサンフランシスコの工場でひっそりと仕事をしているジョージ。
突然の交通事故で双子の兄を喪い、
母親と引き離され里子に預けられたロンドンに暮らすマーカス。
死と関わることで、孤独感を募らせるの3人が、
やがて導かれるように接点を持ち、巡り会う。
その時、3人が感じることとは?
製作総指揮スティーブン・スピルバーグ、監督クリント・イーストウッド。
「硫黄島」二部作以来となる二大巨頭が手掛けたスピリチュアルな人間ドラマなんだが、
この2人の名前を外したらトンデモ映画の部類に入れてしまいたくなるような、
なんとも形容しがたい不思議な作品だった。
スピルバーグは、ラストにトンデモ映画と化す
『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』での前科があるし、
元々、宇宙とか霊とかUFOとか好きなんで、まだ納得できなくもないが、
イーストウッドが、この手の作品を手掛けたことはあまりない。
勿論、重厚で、風格があって、演出が丁寧で、
スクリーンに映し出されている『ヒア アフター』の映像は、
いかにもイーストウッドなんだけど、
扱っているテーマがらしくないというか、なんと言うか・・・。
映像はイーストウッドなんだけど、テーマが・・・って、
見ている最中、ずっと違和感を覚えながら見ていた。
マリーは、自分が見た不思議な光景によって、人生が大きく変わり、戸惑い悩む。
ジョージは、他人の手に触れるだけで、死の世界と交信が出来てしまうため、
人と普通に接することさえできない。
マーカスは、双子の兄の死を受け入れられないうえ、
里子に出され、心を固く閉ざしてしまう。
この3人がそれぞれを求め、交わることで、救われていく。
別にスピリチュアルを否定するとか、理解出来ない訳ではない。
マーカスみたいに、死者を身近に感じるような不思議な体験をしたこともある。
でも、自分自身は臨死体験をしたことがないし、
死者と交信出来る能力を持っていないし、
双子じゃないし、兄弟を亡くしてもいない。
死者を尊ぶ気持ちは常にあるし、すでに実父や何人かの友人を失っているが、
マリー、ジョージ、マーカスのような体験や心境に至ったことはない。
自分の経験値を重ね合わせて映画を見る傾向が強いので、
あまり彼らに感情移入出来なかったのかもしれない。
てな、感じでして、メチャクチャ心に響いて感動したとかはなかったのですが、
本作を絶賛している人たちが、たくさんいることも理解出来る。
ちょっと変わった作品だが、
80歳を越え、いまなお貪欲に進化し続けるイーストウッドの作品というだけでも、
見る価値ありだ。
見所のひとつである津波のシーンの臨場感と恐怖は、
『TSUNAMI−ツナミ−』の比じゃない。
こういうシーンをシレッと撮ってしまうイーストウッドって、やっぱり凄いなぁって。
『グラン・トリノ』もそうだったけど、
素人に近い子役を輝かせる先見の目とスキルも流石の一言。