2/26よりTOHOシネマズシャンテ、Bunkamura ル・シネマほか全国にて 配給会社:ギャガ (C)2010 See-Saw Films. All rights reserved. |
子供の頃から吃音の悩みを抱え、人前で話すこともままならない弱気な男が、
王より愛を選んだ兄に代わり、イギリス王の座に。
望まぬ王位を即位する羽目になり、悩み、怯え、葛藤するジョージ6世と、
彼の吃音を治そうとするスピーチ矯正の専門家ライオネル、
献身的な妻エリザベスとの関係を描いた人間ドラマ。
第83回アカデミー賞で、最多となる12部門のノミネートを受け、
更に第64回英国アカデミー賞では、14部門でノミネートされ、
作品、主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞、脚本賞など主要な部門を総なめにしているんだが、
それも納得の出来栄えだった。
まず、何よりも物語が良い。
ジョージ6世と妻エリザベスの夫婦関係は、
美化している部分もあるとは思うが理想的だ。
エリザベスがいなかったらジョージ6世は、もっと内向的な男になっていたに違いない。
吃音のジョージ6世と対等に接し、
ぶつかりあいながらも信頼関係を築いていくライオネルとの友情もグッとくる。
エリザベス、ライオネル、
そして、娘たち(うち一人は後に王位を継承するエリザベス2世)といった、
周囲の人々の支えと励ましと、自身の努力によって真の英国王になっていくジョージ6世の姿に感動し、
ちょっと涙腺が緩みかけた。
また、ライオネルの治療によって、ジョージ6世が吃音になった原因が明らかにされる。
これが、なるほどねと思わせるし、王室の厳しさを伺い知ることが出来てとても興味深かった。
そのライオネルのスピーチ矯正法は、
ジョージ6世に歌わせたり、汚い言葉を吐かせたりとかなりユニークで、
2人とも真剣に取り組んでいるのだが、思わず笑ってしまう。
ユーモアもいいアクセントになっている。
ジョージ6世を演じたコリン・ファースは、多分、オスカーを受賞すると思う。
吃音に対する悩み、上手くいかない苛立ち、王としてのプレッシャー、
自信の父親や兄に対する劣等感、妻や子供への愛情、
ライオネルに向けられる不審感とやがて芽生える絆、
といった様々な感情をナチュラルに表現している。
「どや、俺の演技、凄いやろ」というのを全く感じさせない。
ごくごく自然。名演です。
そんなコリン・ファースと絶妙な掛け合いをみせるジェフリー・ラッシュが名優であることは、
今更言うまでもなく、
とぼけたところがありながらも、強い信念と優しさを併せ持ったライオネルを巧みに演じている。
ジョージ6世を支える妻エリザベスには、ヘレナ・ボナム=カーター。
このところ、「ハリー・ポッター」シリーズのベラトリックスや、
『アリス・イン・ワンダーランド』ほか、夫のティム・バートン監督作品で、
いっちゃったキャラを演じる機会が多かったけど、本作では久しぶりに落ち着いた演技を披露。
脚本、演出、役者、撮影、編集、衣装、音楽と、
そのどれもが一級。
でもそれをこれみよがしに主張してはいない。
それぞれが上手く作品に溶け込んでいる。
映画は総合芸術と呼ばれているが、
本作はまさにその言葉があてはまっているような気がする。