3/19より角川シネマ新宿ほか全国にて 配給会社:角川映画 (C)2011「漫才ギャング」製作委員会 |
正直、今の日本の惨事を思うと映画の記事を書く気分にはなれないんだが、
仕事として見た映画は、全部書くをモットーにしているので書きました。
デビュー作『ドロップ』(09)を大ヒットさせた品川ヒロシの監督第二作目。
10年間組んできた相方とコンビを解消した売れない漫才師・飛夫は、
ひょんなことから留置所送りとなる。
そこで出会ったヤンキー・龍平にツッコミのセンスを感じ取った飛夫は、
コンビを組み、漫才の頂点を目指す。
品川ヒロシ監督は、前作の『ドロップ』で自身の学生時代のルーツを描き、
本作では本業である“お笑い”をテーマにしている。
しかも今回は漫才師とヤンキーが主人公。
自分の分身を二人登場させたようなものだ。
物語を創作するうえで、身近なところから取り掛かるのは、
スマートなやり方だと思う。
元々、精通しているわけだから、
いちいち調べる必要がなく、書きやすい。
品川ヒロシ監督は相当忙しいはずなのに、
幅広いフィールドで活躍できるのは、
器用なだけでなく、要領が良いからというのもあるような気がする。
そんな品川ヒロシ監督が作り上げた物語の大枠は、
比較的オーソドックスなんだけど、
細かいところでちょいちょい捻りがあり、
よくあるサクセスものとは違った赴きがあって面白かった。
で、本作の2大見所は、“漫才”と“ケンカアクション”で、
まさに品川ヒロシ監督の面目躍如という感じ。
飛夫と龍平をそれぞれ演じた佐藤隆太と上地雄輔が、漫才をステージで披露するシーンは、
ライブなお笑いを収めたいという品川ヒロシ監督の意向によって、
リハなしのいきなり本番、一発撮りだったという。
佐藤&上地のお二方にインタビューをしたんだけど、
漫才のシーンは、メチャクチャ緊張したと言っていた。
お客さんがエキストラとはいえ、本物のお笑いライブみたいなもんだから、
そりゃ緊張するでしょう。
でもそんな緊張感が良い感じに作用して、
まさに“生”の笑いが伝わってきて、普通に面白くって笑ってしまった。
アクションの方はというと、
ジャッキー・チェンを意識したと思しき商店街のケンカアクションや、
龍平がひたすら横スクロールしながら戦っていく冒頭のアクションなど、
『ドロップ』以上に凝った演出が成されている。
特に冒頭部分は、漫才とケンカを交互に見せるカットバックの手法が、
凄まじい効果を上げている。
センスが良い。
センスといえばキャスティングも良い。
特にオリエンタルラジオ以外のお笑い芸人の配役は絶妙だった。
個人的にはロバートの秋山が最恐。
キモモモォォォ〜って思わせておいて、
そのキモさをきちんと意味のあるものにしているのも凄い。
そこでしっかりと自分が「ガンダム芸人」であることもアピール。
品川祐は、映画監督としてだけでなく、様々な分野で秀でた能力を示しているし、
知識も豊富だが、あからさまにドヤ顔はしない。
しかしながら、「俺って凄いでしょ」ってのがちょいちょい滲み出ていて、
そこが鼻につくっちゃつくんだけど、
『ドロップ』、『漫才ギャング』の出来栄えを見ちゃうと、
その才能は認めざるおえないなぁーって。
キャストを見ると人徳もありそうだしね。
見る前は、上映時間137分にちょっとピヨったが、
笑いあり、涙あり(泣かなかったけど)、友情あり、恋愛あり、アクションありで、
一気に駆け抜けていき、まったく時間を感じさせない。
詰め込みすぎてもいない。
『ドロップ』の出来がまぐれではないということを証明しつつ、
早くも次回作が楽しみと思わせる。
うーん、やっぱり凄い才能の持ち主なんだなぁ〜。