3/18よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国にて 配給会社:パラマウント ピクチャーズ ジャパン (C)2010 PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved. |
強い責任感と信念を持った14歳の少女マティは、雇い人のチェイニーに父親を殺されてしまう。
父親の形見の銃を譲り受け取り復讐を決意したマティは、
逃亡したチェイニーを追跡するため、
凄腕だが独眼で大酒飲みの連邦保安官ルースターに協力を求める。
そこに若きテキサス・レンジャーのラブーフも加わり、3人の追跡が始まるが、
それは3人にとって“真の勇気(トゥルー・グリット)”が試される旅となった・・・。
『ノーカントリー』で、アカデミー賞監督賞を受賞したジョエル&イーサン・コーエン兄弟の最新作。
製作総指揮にはスティーブン・スピルバーグが名を連ねている。
コーエン兄弟といえば、初の原作有きの作品となった『ノーカントリー』以外、
オリジナル脚本の作品ばかりだが、
本作はチャールズ・ポーティスが1969年に発表した「勇気ある追跡」を映画化している
このポーティアスの「勇気ある追跡」は、
ジョン・ウェイン主演で1969年に映画化されており、
今回が2回目となる。
ジョン・ウェインに念願のアカデミー主演男優賞をもたらした『勇気ある追跡』は、
見たような、見ていないような・・・
という感じで曖昧なんだが、見ていたとしても全く覚えていないわけだし、
『勇気ある追跡』のリメイクではなく、同じ原作の再映画化と謳っているので、
全く別物として見た。
で、まず感じたのは「復讐の代償とその意味」。
ネタバレになるので多くは語れないが、
父親を殺害され、復讐を誓ったマティは、
自身の復讐を達成しようとする過程において、多くのことを学んでいく。
自分の希望を叶えるために、どれだけ人にリスクを負わせていたのか?
何人の命が奪われたのか?
彼女と一緒に行動を共にするルースターとラブーフは、
意図的であろうとなかろうと、マティにそのことを教えていく。
そして、マティ自身も、大切なものを失い、
復讐に伴う代償の大きさとその意味を知る。
方法論は違うが、復讐の代償を描くという点では、
先日取り上げた『悪魔を見た』と同じだ。
以前より、「仇を討ったら復讐は達成されるのか?」
という疑問を抱いていた。
復讐が全うされたとしても、
失った者は帰って来ない。
「憎き相手を殺しました、目出度し目出度し〜」
というような単純なものではないと思う。
チェイニーに罪を償わせることしか考えていなかったマティが、
追跡の旅を通して、成長し、意識を変えていく。
『トゥルー・グリット』は、単なる復讐劇ではなく、
復讐の代償と意味を描いており、作品に大きな深みを与えている。
また、そのマティの成長を示す演出が素晴らしい。
大きな意識変化があったであろうと思われるシーンにセリフはなく、
マティの表情とカメラアングルだけで表現している。
その瞬間は「おぉ、すげぇ〜。これぞ映画だ!」と思った。
やはり数々の名作を世に送り出してきたコーエン兄弟は違うなぁ〜って。
そんなコーエン兄弟の下に集結した役者たちも、凄いぞ。
ジェフ・ブリッジス、マット・ディモン、ジョシュ・ブローリン、
バリー・ペッパーと演技派揃い。
そして、特に注目なのは、オーディションを経て、
本作で映画デビューを果たしたマティ役のヘイリー・スタインフェルドだろう。
『トゥルー・グリット』はマティの視点で描かれており、マティが主人公だ。
観客が納得できるようなマティ像を作り上げるのは、
そう簡単なことではないと思うのだが、
1996年生まれのスタインフェルドは、それをやってのけてしまっている。
キャリア十分のベテラン勢相手に、全く引けを取らない。
マティ同様、スタインフェルドは強い精神力を持っているに違いない。
一流のスタッフとキャストによる一級の作品でございました。