なにを今更ですが、「新世紀ヱヴァンゲリヲン」です。
1995年の誕生以来、世の中が長きに渡り「ヱヴァ、ヱヴァ」と騒ぎ続けようとも、
周りの人たちから勧められようとも、イマイチ食指が伸びず見ないままでいた。
それこそ今更という思いもあったし、
わざわざレンタル屋へ借りに行ってまでして見るのも億劫だ。
そもそも長時間拘束を余儀なくされる連続ものより、
概ね、2時間ぐらいで完結してくれる映画の方が性に合っている。
ということで、今の今まで未鑑賞のままだったのですが、
【伊藤Pの部屋】のファンである親類から、「ヱヴァは見な、アカン」と言われ、
DVDを託されたのを機に見ることに。
何の説明もないまま、使徒だ、初号機だ、NERV(ネルフ)だ、
第3新東京市だ、SEELE(ゼーレ)だと、いきなり訳のわからない世界に放り込まれ、
正直、3話目ぐらいまでは、「はっ?だから使徒ってなんなのさ!」ってな感じ。
かつて父が『マトリックス』を見て、
「意味がわからん。何が面白いんだ」とぶつぶつ文句を言っていた。
こういう頭の堅いオッサンにはなりたくないと思ったんだが、
もしかして、今の自分がその状況?
しかしながら、話が進むにつれ、世界観が少しずつ見えてきたし、
キャラクターたちにも愛着が湧いてきて、気が付いたらすっかりはまっていた。
最初、DVD全8巻のうち4巻まで借りていたんだが、アッという間に消化。
「続きが気になるぅぅぅ〜。はよう5巻を〜」と禁断症状まで出る始末。
オンエア時は、毎週更新なわけでしょ?
リアルタイムで見ていた人たちは、よく一週間も耐えられたね。
そんな渇望状態には到底耐えられないので、
早速、残りの4巻を催促し続きを鑑賞。
とりあえずテレビシリーズは、見終えた。
既に語り尽されているだろうし、
何回も見ていて「ヱヴァ」を知り尽した数多のヱヴァ・マスターに、
浅はかな知識しか持たない新参者の小生が敵うはずもないので、
深くは語り(語れ)ませんが、いや〜、面白いですね。
多くの人たちが虜になるのも分かります。
意味不明なところ、説明不足なところ、未回収なところがたくさんあるんだが、
それ故に様々な解釈ができる。
そして、見終わった直後に、もっと理解したい、
もう一回最初から見直したいと思わせる。
内容はまるで違うが、そういった欲求を呼び起こす点では、
デヴィッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』に近いと感じた。
そして、常識を覆すような演出。
話を重ねるにつれ、やたらとテロップが出てくる。
最終話なんて文字だらけ。
しまいには台本まで出てきちゃう。
アニメは映像表現だ。
映像は活字と違い、登場人物の心情を語るのが難しい。
だからこそ、演出家たちはそれをどうやって映像で表現するかに苦心する。
内なる感情をどう描くのかは、映像演出の醍醐味の一つとも言える。
それを「ヱヴァ」は放棄し、登場人物の心の叫びをテロップで説明している。
普通だったら有り得ない。
静止画にセリフを乗せてるだけのシーンも多々ある。
これらの演出が手抜きなのか、たまたまなのか、
計算した上なのかは知りませんが、
批判されてもおかしくないようなマイナス要素さえも、
プラスに昇華させるマジカルなパワーが「ヱヴァ」にはある。
タイトルは福音を意味する「evangelical」からもじられているようだし、
13の使徒(パウロを含めたキリストの弟子)、アダム(「旧約聖書」のアダムとイヴ)、
マギ(「新約聖書」の東方の三博士)など、
キリスト教の影響を受けていることは明らかだ。
でもそんな上っ面なものではなく、
もっと深遠な何かが、「新世紀ヱヴァンゲリヲン」には存在しているように感じた。
それが何なのかは、テレビシリーズを見ただけでは分らないんだけど、
劇場版を追いかけ、追求することによって少しは分ってくるのかもしれない。
そんな探究心が駆り立てられるのも「ヱヴァ」の魅力なのでしょう。
そして、魅力といえばなんと言ってもキャラクターたち。
内向的な碇シンジ、冷静沈着な綾波レイ、感情の起伏が激しいアスカ等、
EVAの操縦者たちがそれぞれ違った側面を持っていて楽しませてくれる。
シンジ、綾波、アスカの3人は、最初バラバラだったが、
ある使徒との戦いで抜群のチームプレーを見せる。
酒を飲みながら見ており、涙腺が弱くなっていたというのもあるが、
まだ14歳の少年少女たちの成長にちょっと涙してしまった。
泣いたといえば、鈴原トウジ。
何も知らないままトウジと対峙する羽目になったシンジ。
その戦いの虚しさといったら・・・。
洞木ヒカリのお弁当の話も手伝って、泣けた。
そもそも14歳という未熟極まりない年齢で、過酷な使命を負ったシンジたち。
(年齢という点では、いろいろと秘密がありますが・・・)
さぞかし辛かったでしょうよ・・・。
そろそろ37歳なんで、完全に親目線で見ておりました。
そんな彼等を取り巻く
碇ゲンドウ、葛城ミサト、赤木リツコ、加持リョウジといった大人たちの人間関係も面白い。
全員、何がしかの過去があり、それがトラウマや行動の原動力になっている。
そして、それらのほとんどが物語に深く絡んでいて、
彼らの過去が暴かれることによって新たな真実が発覚する。
特に親と子の関係が、主要キャラクターを描く上で、
とても重要な要素になっている。
「ヱヴァンゲリヲン」がスタートした頃、
日本がどういう世相だったのか、記憶があやふやなんだけど、
ひょっとしたら、家族の有り方とか問題になっていて、
時代を反映していたのかな?
そんなこんなで、今更「ヱヴァ」でございました。
因みに好きなキャラクターは、
葛城三佐であります!
朝から一緒にビール飲みたいなぁ〜。