5/11よりTOHOシネマズ日劇ほか全国にて 配給:20世紀フォックス映画 (C)2010 Twentieth Century Fox |
難役のプレッシャーから、次第に混乱し始め、
現実と悪夢が交錯してしまうバレリーナ・ニナの姿を描いた『ブラック・スワン』。
随分前にちょっとだけ予告編の映像を見た際に、
「なんだか得体が知れない映画」という印象を持った。
アート作品?人間ドラマ?サスペンス?
それともホラー!?
なんだか分らないけど、凄そうだと思った。
その後、日本でマスコミ試写が周り始め、
知り合いのライターさんから、評判が良いという情報をもらい、
追って『ブラック・スワン』を見たそのライターさんから「凄かった」という感想を聞いた。
さらに、第83回アカデミー賞で、ニナを演じたナタリー・ポートマンが、主演女優賞を獲得。
凄そうだし、評判も良いし、賞も受賞している。
俄然、期待指数もUPする。
でも、あまり期待し過ぎちゃうと、
そのハードルを越え切れなくて、「思ったより・・・」ということになるケースが多々ある。
過度な期待は禁物なんだが、
『ブラック・スワン』は、そんな危惧を吹っ飛ばした。
形容するならば、やっぱり“凄い”。
演技、映像、演出、衣装、音楽、セットなどなど、
映画を作るうえで必要な要素の全てが凄い。
そして、鑑賞後に「内容をほとんど知らないで見て良かった」と思った。
『ブラック・スワン』の“得体が知れない”部分を知ってしまっては、
面白さは半減していただろう。
本作は、普通のドラマのようにスタートするが、
序盤から見るものを不安にするような演出が随所にインサートされる。
カット割りや音響効果を巧みに使い、
まるでホラー映画のようにびっくりさせるシーンもある。
でもニナのプリマとしての試練と孤独と性への目覚め、
母の寵愛、ライバル・リリーへの憧れと嫉妬、芸術監督ルロイとの微妙な師弟関係、
元プリマのベスとの確執など、
話の軸は人間ドラマであり、決して、ホラーではない。
また、バレエの稽古のシーンもじっくりと見せてくれる。
まるでアート映画を見ているようだ。
様々なジャンルが混在している作品になっている。
で、練習しても黒鳥をうまく演じきれないニナは、
次第に錯乱していくんだけど、
見ているこちらまでも、現実と悪夢の境界線が定かじゃなくなり、
本当に彼女が錯乱しているのかどうなのかが、わからなくなってくる。
全てニナのメンタル的な混乱が引き起こす悪夢なんだけど、、
バリエーションがあるから、見ている方も混乱するんだと思う。
自分の分身を見てしまうまさにメンタル的なもの。
背中かから変な黒いものが出てきたり、
指から突然血が出たりとフィジカルなもの。
動くはずのない部屋に飾ってある絵が動くという、
対物的なもの。
これらはどちらかというと視覚に訴えるホラーに近い古典的な描写だ。
これに、母親の異変、態度が二転三転する掴みどころのないライバルのリリー、
なにをしでかすか分らない元プリマとのやり取りなど、
リアルにありそうな対人関係が生み出すサスペンスも加わる。
これも悪夢なのか?
ありえないような悪夢とありえそうな悪夢が、交互に押し寄せ、
時にミックスして襲い掛かってくるので、
我々もわけがわからなくなってくるのだ。
そして、それは、「白鳥の湖」の舞台初日というクライマックスに向かって、
益々エスカレートしていく。
もうクライマックスは圧巻の一言。
「白鳥の湖」と見事にシンクロしながら、
現実と悪夢が交錯し、怒涛のラストを迎える。
まさに圧巻で、
圧倒されまくった。
終わった瞬間、「凄いものを見てしまった・・・」って。
悲劇なのに、なんだか達成感があってスカッとさえする。
悲しみよりも快感が先に立つってのも凄い。
で、改めて思い返してみると、
「白鳥の湖」とニナだけでなく、
母親も、リリーも、ルロイも、ベスも、
白と黒が表裏一体化していることに気が付く。
うーん、なかなか深いではないか。
間違いなく『ゼブラーマン』よりは深いね。
そして、よく言われていることだけど、
ナタリー・ポートマンがアカデミー賞を受賞したのは大・大納得だ。
バレリーナになりきるだけでも大変なのに、
プリマで、しかも白鳥と黒鳥も演じ、
更にニナの微妙な心の機微まで表現しなくてはならない。
ニナを理解するために、撮影中は孤立していたというから、
肉体的にも精神的にも相当ハードな役だったと思う。
その役者根性に脱帽です。
ナタリー以外のキャストも素晴らしい。
ナルで軽薄なところもあるんだけど、
実力者である芸術監督ルロイを演じたヴァンサン・カッセルは、説得力があった。
リリーを妖艶に演じたミラ・クニスのアニュイな雰囲気は、
作品の重要なファクターだ。
世代交代を余儀なくされ、
自暴自棄になる痛々しい元プリマ役柄のウィノナ・ライダーも、
堂に入っている。
そして、なんと言っても母親を演じたバーバラ・ハーシーでしょう。
なんでアカデミー助演女優賞にノミネートされなかったんだろう?
まじでおっかない。
ただ、そこにいるだけなのに・・・。
凄まじい存在感だ。
間違いなく『ブラック・スワン』で一番怖いです。
でも怖いだけじゃない。
母親が最後にニナに放つセリフと、
ラスト前の客席での表情は、“母”なのです。
このメリハリが良いのです。
母は偉大です。
ちょっと泣けました。
演技も良ければ、演出も良い。
話的にはいくらでも陳腐で、滑稽になり得るんだけど、
それを格調高い一級の芸術作品に仕上げたダーレン・アロノフスキー監督のセンスも凄い。
文章中に、“凄い”が頻発していますが、
本当に“凄い”と思える作品でした。
この“凄さ”を感じるためには、
何度も言うが、何も知らないで見ないとダメなのだ。
因みに本作の予告編は、最悪です。
見せすぎ。
コメント (1)
なんでセブラーマンwwww
しょせんパーフェクトブルーのパクリだろ
投稿者: 匿名 | 2017年09月30日 13:37