6/24よりTOHOシネマズ日劇ほか全国にて 配給会社:パラマウント ピクチャーズ ジャパン (C)2011 PARAMOUNT PICTURES ALL RIGHTS RESERVED. |
1979年、14歳の少年ジョーは、母親を事故で失い、
深い悲しみを抱えながら保安官の父と暮らしていた。
ある夜、親友のチャールズと駅で8ミリ映画の撮影をしていたジョーは、
列車の大事故を目撃する。
その日から、ジョーの暮らす町で次々と不可解な出来事が起こり始める・・・。
『M:i:III』、 『スター・トレック』のJ.J.エイブラムスが、
多大なる影響を受けたスティーブン・スピルバーグを製作総指揮に迎え撮ったSF超大作。
確か去年の初夏ぐらいだったと思うけど、
列車と車が激突して、大事故となり、
そこに“何か”がいるという本作のティーザーのトレーラー(特報)をyoutubeで見た。
この特報では、ストーリーが一切語られていなかったし、
監督が『クローバーフィールド/HAKAISHA』の仕掛け人J.J.エイブラムスということで、
割と硬派な内容で、謎に満ちたセミドキュメンタリーみたいな映画という印象を持った。
実際に最後のワンカットに何かが映っているとか、
特報がリリースされるやネットで話題になっていた。
しかし、今年に入ってから届いた予告編を見ると、
子供たちが“未知との遭遇”をする感動系SFアドベンチャーのよう。
映画の作り方もオーソドックスっぽい。
『未知との遭遇』、『E.T.』に近い感じ。
『クローバーフィールド/HAKAISHA』的な作品ではないとわかり、
正直、ちょっとがっかりしたんだけど、
『未知との遭遇』も『E.T.』も好きなので、
そういう映画なんだと気持ちを切り替えた。
そして、気持ちを切り替えておいて本当に良かった。
求めるものが違うと、見てがっかりするからね。
「あれ?こういう映画だったの?」って。
『SUPER8/スーパーエイト』は、予想通り、
『未知との遭遇』+『E.T.』を合体させたような、
子供たちが未知の生命体と接触する話だった。
しかし、この映画はそれだけじゃない。
スピルバーグへのオマージュがオンパレードだ。
謎の生命体がなかなか姿を見せない演出は、『ジョーズ』。
そしてその生物が暴れまわるアクションシーンは、『ジュラシック・パーク』。
街が戦火と化すシークエンスは、『宇宙戦争』や『プライベート・ライアン』。
子供たちが繰り広げるアドベンヤーは、「インディ・ジョーンズ」シリーズや、
スピルバーグが製作総指揮を務めた『グーニーズ』。
少年の成長を描いている点は、『太陽の帝国』。
そして、『未知との遭遇』や『E.T.』でスピルバーグが見せた、
黄色やオレンジの光を効果的に使ったちょっとぼやけた映像の色彩も再現。
他にもカメラアングルや間の取り方、
カット割などいたるところにスピルバーグ・テイストが見受けられる。
映画少年だった頃、スピルバーグ監督作や関連作品を
浴びるほど見て来た者にとって、これはたまらんですよ。
もう全編、“甘酸っぱい”。
37歳にもなると、「昔はね」的なノスタルジーに浸るんだね。
「俺はそんなオッサンにはならねぇ!」って思っている10〜20代のあなた。
あなたもきっとそうなります。
多感な時期に刷り込まれた感覚というのは、
いつまで経っても忘れないし、心地よく感じるんだよね。
特にその色彩感覚は、「あぁ!!これ!!これが落ち着くのだよ!」ってぐらい、
ビンビンきまくった。
3Dの弊害に関する記事で、色彩のことに触れたけど、
やっぱり映画の色彩って大切だと思った。
本作を3Dにしなかったのは大正解(するつもりもなったと思うけど)。
3Dでは絶対に出せない繊細な色使いだと思う。
スピルバーグは、大人になれない映画監督って言われた時期があった。
ピーター・パン・シンドロームだ。
80年代に初の本格的な人間ドラマとなる『カラー・パープル』を撮った。
アカデミー賞にノミネートされるも無冠。
若くして成功したスピルバーグにアカデミー会員は、
良い感情を抱いていないとまことしやかに言われた。
しかし、スピルバーグは『シンドラーのリスト』(93)で、
遂に大人の監督の仲間入りを果たした。
でも、やっぱり根底にあるのは、子供心だと思う。
エイブラムスは、スピルバーグのその部分をフィーチャーして本作を撮ったに違いない
個人的には大人になれないスピルバーグの方が好きなので、
本当にたまらない作品でした。
資料を読むまで知らなかったんだけど、
エイブラムスとスピルバーグには、逸話がある。
エイブラムスが16歳の少年時代に撮った8ミリ映画が注目され、
LAタイムズで取り上げられた。
その記事を読んだスピルバーグが、
自身が15歳の時に撮影した8ミリ映画の修復と完成をエイブラムスに依頼した。
もちろん、エイブラムスはその仕事を請けた。
15歳のときに撮ったスピルバーグの8ミリ映画を、
16歳のエイブラムスが仕上げた。
数十年後、二人のコラボレーションが実現した映画のタイトルは、
その名も1965年にコダック社が開発した8ミリ映画の方式から取った『SUPER8/スーパーエイト』。
劇中でも少年たちがスーパーエイトを使って8ミリ映画を撮影し、
それが物語の大きな核となっている。
8ミリ映画が繋いだ2人の縁が、
今、こうして実を結んでいる。
この話は、『SUPER8/スーパーエイト』の作品そのものを評価するものではないけど、
ええ話ではありませんか。
1966年生まれのエイブラムスにとって、スピルバーグは少年時代から憧れの人。
大人になってから自分のヒーローと一緒に仕事が出来る。
これは本当に幸せなことだと思う。
自分も雑音交じりのFMFUJIで聴いていた映画番組のパーソナリティを務めていた襟川クロさんと、
社会人になってから、一緒に仕事が出来た。
最も影響を受けた映画評論家の一人、淀川長治先生とマスコミ試写会でお会いし、
会話することも出来た。
その淀川先生を“母”と慕っていた映画評論家の方とも仕事をしたし、
仕事外でも良くしていただいている。
そして、永遠の英雄であるジャッキー・チェンに取材出来た。
子供の頃、憧れていた人と出会えて、仕事で関わりあえる。
それはそれは嬉しい出来事だ。
エイブラムスの場合は、
映画製作という巨大プロジェクトで、
ガッチリと憧れのヒーローと仕事が出来たわけだ。
そりゃ嬉しいでしょうよ。
正直、今の映画としては物語の筋とか甘いし、
突っ込みどころもたくさんあると思う。
でもそんな細かいところはどーでもよくて、
この映画で最も大切なのはエイブラムスの“思い”だ。
それが滲み出ている『SUPER8/スーパーエイト』は、
オッサンの心を鷲掴みでした。
きっと、スピルバーグ作品で育った人たちは、
様々な記憶が蘇るはず。
一方、スピルバーグ作品をあまり見ていない人や、
若い人たちが見て、どういう感想を抱くのか?
気になります。