7/23より全国にて 配給会社:東宝 (C)2011 フジテレビジョン 東宝 FNS27社 |
2000年8月に起きた三宅島大噴火。
全島民に避難勧告が出され、島で民宿を営んでいた野山一家は東京で暮らすことに。
飼っていた犬のロックも一緒に暮らせないながらも、東京へ避難するはずだった。
しかし、出発を前にゲージから逃げ出してしまう。
果たして島に取り残されたロックは無事なのか?
野山一家はいつ島に帰れるのか?
フジテレビの朝の情報番組「めざましテレビ」の人気コーナー「きょうのわんこ」で取り上げられ、
注目を集めた実在の犬ロック(既に他界)のエピソードを映画化した実録感動物語。
そもそも犬を題材にしたお涙頂戴ものの映画は、
あまり好きではないんだけど、麻生さんが出ているので見ることに。
結果、見て良かったです。
まず、無理に泣かせようとはしていないのが良い。
“犬の映画=泣かせる映画”という方程式が、
すぐに出来上がってしまいがちだが、そうではなかった。
いや、もちろん、目頭が熱くなるシーンはいくつもある。
でも強引じゃない。
犬と人間の絆というよりも、
人間ドラマとしての印象が残った。
そう感じるのは、ロックではなく、
あくまで人間の視点で描いているからなのでしょう。
例えば、三宅島に取り残されたロックのサバイバル生活とかの描写は一切ない。
『南極物語』みたいな演出をやろうと思えば出来たはず。
でもやらなった。
これに限らずロック単体での描写がほとんどない。
いわゆる犬映画とはちょっと違ったアプローチをしている。
このちょっと突き放した感じが、ベタベタにならず好感触。
ちょっと語弊があるけど、ロックはアクセント的な存在だと感じた。
ロックがいるからこその課題や難題を家族が一致団結して解決していく。
ロックは、野山一家の結束とひとり息子の芯の成長を促すような役割だ。
特に芯は、つらい選択を強いられる。
小学生が下す決断としてはあまりに重い。
でもその反面、命の尊さ、我慢すること、思いやる気持ち、
そしてロックにとっての本当の幸せを知る。
ロックのお陰で少年は色んなことを学んでいく。
また両親もそんな芯をきちんとサポートするし、
芯によって逆に元気付けられ、しかるべき行動に出る。
野山一家はみんな前向きだ。
お互いに励ましあい、支えあっている。
たまに酷く落ち込むことがあっても、いつか島に帰れると信じて生きている。
でもキチンと現実とも向き合っている。
野山一家から、様々な思いを受けとることができる。
そんな野山一家を演じたキャストがまた素晴らしかった。
真面目で、人が良くって、優しい一家の大黒柱である野山松男を演じた佐藤隆太は、
ドンピシャな配役でしょう。
夫を支える貴子役の麻生久美子は、
『アキレスと亀』やアニメの『カラフル』(声の出演)で母親役をやったことはあるが、
これほどガッツリ母親を演じたのは、初めてではないでしょうか?
“常に新しい役柄にチャレンジしたい”と言っていたが、
今回も有言実行したようだ。
持ち前の“らしさ”だけでなく、新たな魅力を振り撒いている。
やはり良い女優さんだ。
それから、頑固だけど、優しくて、家族のことを思っているおばあちゃん役の倍賞美津子も素敵だ。
やはり映画が締まるね。
そして、芯を演じた子役の土師野隆之介くんが、とても表情豊か。
子役は、“演技してます!”っていうよりも、ナチュラルな方が良いよ。
この野山一家だけでなく、全てのキャストたちから、
この作品の存在意義をちゃんと理解し、
良い作品にしたい、何かを伝えたいという誠実な気持ちが伝わってきた。
また、たまたまタイムリーになってしまったわけだが、
野山一家の体験は、東日本大震災によって避難生活を送っている人たちを否応なしに思い起こさせる。
いつ故郷に帰れるのか?
いついつもの生活に戻れるのか?
今もそういう不安の中で生活している人が、たくさんいるという事実が重い。
自分は避難生活をしたことがないし、
震災後も、ほぼ今までと変わらない生活を送っているので、
避難生活をされている方々の気持ちや辛さを本当に理解することは出来ません。
でも、避難生活をしている方々が、
この映画を見たら少し元気になるんじゃないかな?
って思った。
避難生活をしている人たちが、
日々どんな思いで過ごしているのかを改めて認識出来るので、
避難生活をしていない人たちにとっても、意味のある映画だと思う。
完全フジテレビ印の作品で、ちょっと癪だけど、
良いものは良いということで、
老若男女を問わず、多くの人たちに見て頂きたい一本。