8/27より全国にて 配給会社:角川映画 (C)2011「日輪の遺産」製作委員会 |
終戦間近の昭和20年8月。
「900億円(現在の貨幣価値で約200兆円) にものぼるマッカーサーの財宝を、秘密裡に隠匿せよ」
という極秘任務の命を受けた帝国陸軍の真柴少佐ほか2名と、
勤労動員として呼集された20名の少女たちの運命を描く。
「鉄道員」、「地下鉄に乗って」の浅田次郎が、1993年に発表した同名小説を映画化。
本作で、軍のトップは、敗戦が濃厚となり、
マッカーサーの財宝を復興費用に充てようと考える。
この話はフィクションだし、
3.11以前に製作された作品なので、
たまたまなんだけど、タイムリーな作品となった。
今、日本は戦後最大の危機に瀕している。
今こそ、一致団結をしなければならないのに、
日本の政府は、各党が攻撃をし合い、
党内でさえ足の引っ張り合いをしている。
菅首相はスケープゴートと化しているし、
菅首相自身も、人徳がなくまるでリーダーシップを発揮できていない。
本当にこの人たちは、被災者のことを考えているのだろうか?
日本の未来を案じているのだろうか?
政治家でなく、被災した人以外の一般人の多くも、
段々と被災地に目を向けなくなっているような気がしてならない。
(自分も含めてね)
『日輪の遺産』に登場する軍人たちは、
強い信念を持っている。
人の財産を盗んで、その金をお国の復興資源にしようとする行為は、
正直、いかがなものか?と思わなくもないが、
マッカーサーの財宝を活かして、日本の未来を次世代に託そうとする。
日本を立ち直らせるためには、形振り構っていられない。
愛国精神が成せる業なのかもしれない。
しかし、一方で、軍上層部は、非情な命令を真柴少佐に下す。
一体、人間の命とはなんなのか?
そして、財宝を隠す作業を担った20名の少女たちの純真な言動は、
今を生きる我々に、様々な思いを沸き立たせる。
戦争なんて愚行だとは思うけど、
戦時下の子供たちは、現代の子供たちなんかよりも、
ずっと逞しいし、しっかりしている。
健気で真摯な彼女たちに、強く心を打たれました。
本作の監督は、
戦争と人間をテーマにした『出口のない海』、『夕凪の街 桜の国』の佐々部清。
一度、『カーテンコール』の時に取材をさせてもらったことがあるんだけど、
物凄い熱くて、誠実で、優しくて、映画を愛している方でした。
あまりに情熱的なので、取材中、
お話を聞いているこちらが思わず涙ぐんでしまうぐらいだった。
往年の日本映画を見て育ち、強い影響を受けてきた佐々部清監督は、
オーソドックスな手法を用いる、今の日本映画界において貴重な監督の一人だ。
そして、“常に人を撮る”を信条として映画を作っている。
『日輪の遺産』も、その思いがムンムンと漂ってくるような、
まさに佐々部清監督ならではの作品になっている。
奇しくも太平洋戦争開戦直前を描いた『シャンハイ』が公開中だ。
それぞれタイプの違う作品だけど、
終戦前夜を描いた『日輪の遺産』と合わせて見るのも良いかもしれない。
共通するのは「混乱」か?