マーキー・インコーポレイティドビクター
定価:4,800円
Disc2はアコースティックの「Two Steps Behind」から始まる。
隠し子が発覚しちゃって大変な元カリフォルニア州知事の
アーノルド・シュワルツェッネガー主演『ラスト・アクション・ヒーロー』のサントラ提供曲だったってことは、
もはや誰も気にとめていないよね。
いや、メタルファンにはたまらないサントラなんですよ。
AC/DCとかテスラとかカッコイイのですよ。
未だに売らずに持っていますが、ブックオフではよく250円のコーナーで見かけます(涙)。
話が逸れましたが、この曲が発表された頃、
Mr.Big、エクストリーム、テスラ、ポイズン、
先日、元ヴォーカルのジェイニー・レインが亡くなってしまったウォレントといった、
ハードロック/ヘビーメタルバンドのアコースティック・ソングが大ヒットを飛ばしていて、
メタル界は、ちょっとしたアコギブームだった。
この「Two Steps Behind」は、デフ・レパードがブームに乗っかった感があって、
当時はちょっと受け入れ難かったんだけど、今改めて聴くと良い曲だね。
次もアコースティックによる「Bringin' On The Heartbreak」。
セカンドアルバム『ハイ&ドライ』に収録された、
ここ最近のライブではほぼ100%演奏される重要曲。
スティーヴ・クラークのライティング能力が開眼した瞬間を捉えた曲のような気がする。
かつてスティーヴ・クラークは、ライブでこの曲を演奏する時に、
ギブソンSGのダブルネックを使用していた。
なので、やはり“ノーオ!”以降の終盤は、エレキを欲するんだが、
来日公演がそうだったように、ちゃんとエレキに変わる。
素晴らしい泣きのギターソロ。
たまらん。
やはりスティーヴはすごい。
決してテクニカルなギタリストじゃないけど、センスが良い。
そして、スティーヴのフレーズを壊さず、
自分らしさを吹き込むヴィヴィアンのギターが好きだ。
多分、テクニック的にはヴィヴィアンの方が、スティーヴよりも上だと思う。
それをひけらかさないんだよ。
でもちゃんと主張している。
それは、スタジオアルバム同様メドレー形式で続くインストの「Switch 625」でも聴き取れる。
スティーヴがいた頃のデフ・レパードの楽曲は、
構成重視でフレーズやギターソロはあくまでも曲の一部であり、
アドリブで自由に引きまくることができないものが多かった。
最近は大分分散されてきたけど、ヴィヴィアンがスティーヴのパートを弾くことが多い。
人が作った曲であり、曲の構成上、好き勝手に弾けない。
その中でいかにギタリストとしてのアイデンティティを出すか。
見事に出しているのが、ヴィヴィアン・キャンベルだ。
かつてスティーヴが死んだ時、ジョン・サイクスの加入が噂された。
多分入ってもすぐに辞めてしまったと思う。
ジョン・サイクスはもちろん好きなギタリストだけど、
孤高すぎて、デフ・レパードには合わないでしょう。
ヴィヴィアンで良かった。
デフ・レパードは、メンバー同士が尊重しあっている。
『炎のターゲット』の後、
リック・アレンが事故で片腕を失った時、
バンドはリック・アレンを見捨てなかった。
忘れられがちだが、フィル・コリンも途中参加メンバーだ。
セカンドアルバム『ハイ&ドライ』発売後に、
ピート・ウィリスに代わって加入したわけだが、
これ以降、メンバー間の確執とか方向性の違いとかで、
メンバーが代わったことはない。
数多のバンドが、仲違いでメンバーチェンジを繰り返し、
その都度ファンを裏切ってきたが、
デフ・レパードはそうなじゃい。
今や、デフ・レバードの看板ギタリストとなっているフィル。
彼のライブならではのセンスの良さがわかるのが、
続く「Hysteria」だ。
イントロとAメロ部分の単音ビブラートとミュートアルペジオ。
浮遊感があって、幻想的。
美しいっす。
これだけで泣けてくる。
泣けると言えば、ユニゾンのギターソロ。
何度聴いても痺れる。
電流が走る。
ライブならではのアレンジが光まくる名曲だ。
いきなりドンと始まるのではなく、
昔のライブみたいにベースラインから始まって、
ギターがハーモニックスをかまして、タメた後にスタートして欲しい気もするが、
欲張り過ぎかな。
この「Hysteria」以降は、デフ・レパードのヒットチューンの雨あられ。
(このアルバムのほとんどがヒット曲ばかりなんだけどね)
ヴィヴィアン・キャンベルの紹介の後、
奏でられるのは耳に馴染んだリフ。
「Armageddon It」。
Aメロ、Bメロのリフで、
フィルとヴィヴィアンがそれぞれ“らしい”手癖を入れている。
これがまたかっこいい。
さっき、デフ・レパードの曲のギターソロはアドリブが利かないと書いたが、
この曲なんかはその最たるもののような気がする。
続いて、彼らの代表曲の中でも知名度が一番であろう「Photograph」。
この曲の最大のポイントはジョー・エリオットのヴォーカル。
ジョーは、2000年代に入ってから歌い方を明らかに変えたと思う。
元々声量のあるボーカリストじゃないので、
「Photograph」みたいな高音バリバリの曲だと、
どうしてもがなりたてる感じが否めなかった。
それが鳴りを潜め、伸びやかなボーカルになっている。
チューニングが半音下げなので、その分負担が減ったのかもしれないが、
断然、今の方が良い。
ベストアルバム『Vault』に同梱されているライブCD収録の「Photograph」と聴き比べれば、
その差は歴然だ。
ジョーのヴォーカルに酔った後は、
フィードバックを受け継いでそのまま「Pour Some Sugar On Me」へ。
「Love is like a bomb, baby, c'mon get it on」という歌詞が始まるまで、
「Let’S Get Rocked」かと思ったが、この流れは秀逸。
この曲を聴くとジョー以外のメンバーも、みんな歌が上手いってことがわかる。
分厚いコーラスは、デフ・レパードの特徴の一つだ。
これまた好き勝手にいじくれないギターソロの終わりに、
フィルがいつもの手癖をチョロッと入れているのが、微笑ましい。
この曲は、かつて『コヨーテ・アグリー』という映画で使用されていた。
バーのカウンターで、この曲にあわせて酔っ払いながら主人公たちが踊り乱れるシーンだったと記憶している。
そう、ライブ会場でも「Pour Some Sugar On Me」が演奏されると、
観客は乱痴気騒ぎになるぐらい盛り上がるのだ。
このライブ盤からも、その臨場感が伝わってくる。
そんな「Pour Some Sugar On Me」の次は、本編の最後の曲と決まっている。
デフ・レパードは、オープニングの曲をころころ変えるが、トリは不動。
「Rock Of Ages」だ。
大好きな曲だし、ライブでは大盛りをみせるんだが、
“「Rock Of Ages」=終わり”なので、ライブでこの曲が始まると嬉しい反面、
いつもちょっと寂しい気分になる。
スタジオ盤だとイントロのリフの合間とかスカスカだが(それはそれで時代を感じる)、
ライブになるとギタリスト2人が、その隙間にオブリガートを入れるので、
断然かっこよくなる。
比較的自由度の高い曲なので、ギターソロではフィルが弾きまくり、
アウトロ部分では、ヴィヴィアンが「Go」のギターソロのフレーズを弾いている。
以上が、本編部分。
続くアンコールは「Let's Get Rocked」。
イントロがやや不安定な気もしなくはないが、
そんなスリリングなところもライブならでは。
Aメロ部分ではフィルもヴィヴィアンもフィードバックを使いまくっている。
今更気が付いたんだが、リフがほとんどない曲なんだね。
観客大合唱部分をさらりと終わらせ、簡潔に終了。
全体的にコンパクトにまとめているのが、本ツアーの特長だ。
次に「Action」「Bad Actress」が収録されているが、
アンコール2というところか?
「Action」は、疾走感があり走りがちな曲だ。
イントロのギターからボーカルが入って最初の「Do you want, do you want...Action?」まで、
助走をつけて!という感じだが、
数拍おいてからの「Gonna bring you down cause you're pushin' me」以降は、
どちらかというと後ノリ。
リック・アレンは、この曲に限らず、かなりテンポに気を付けてドラムを叩いているが、
「Action」はもうちょっと早くてもいいんじゃないかなぁ。
「Action」の後、そのまま間髪入れずに演奏される「Bad Actress」は、
中盤にあるフィルとヴィヴィアンのギターソロの掛け合いが聴き所。
2人のフレージングの違いがよく判る。
ここまでがライブで、次に新曲3曲と新曲の別バージョン1曲が収録されている。
■「Undefeated」
デフ・レパードらしからぬアフリカンドラムと民族ぽいかけ声から始まるイントロが新鮮。
最初のリフは今までありそうでない感じ。
音色も良い意味で生々しくて新しさを感じさせる。
ところがBメロに入ると、
これぞデフ・レパードなメロディラインとコーラスのゴージャスサウンド。
サビも同様だ。
これまたデフ・レパードらしいブリッジから、
アルバム『スラング』ぽいエキセントリックなパートを経てサビに戻ってくる。
最後はギター弾きまくりなんだが、フィルかな?
新しさとバンドらしさが融合したハイブリッドな曲だ。
■「Kings Of The World」
『ソングス・フロム・ザ・スパークル・ラウンジ』に収録されていた「Love」と同じ路線のバラード。
Bメロ以降はクィーンだ。
サビ前のヴォーカルの歌詞とメロディラインは、
なんだかエアロスミスの「What It Takes」(アルバム『パンプ』収録)に似ていなくもない。
ギターソロはどっちが弾いているんだ?
ちょっとわからない。
そのギターソロの後の「again」という歌詞の繰返しは、
これまたエアロスミスの「Livin' on the Edge」に似ていなくもない。
なんだかどっかで聴いたことのある感じの曲ですが、
例えそれがアメリカのバンドの曲であっても、
全体的にブリティッシュの香りがプンプン漂ってくるし、
やっぱりデフ・レパードのサウンドなんだよね。
■It’S All About Believin'
曲の展開は「Animal」にかなり似ているんだが、
デフ・レパードの場合、似て非なる曲が多いし、
何度も言うけど、それが魅力なわけですよ。
だからファンの多くはオルタナティブを意識した『スラング』とか、
ポップス色が強い『X』とかあまり好きじゃないでしょう?
■Kings Of The World(Different Version)
「Kings Of The World」のピアノバージョンなので割愛。
この新曲3曲は、
「次のツアーで必ず演奏する」とジョー・エリオットがインタビューで語っていたので、
ライブに向けて必聴ソングだ。
とはいえ、以前も新譜が出た際に、
「次のツアーでは必ずやるよ!」と言っていた新曲をやらなかったことがあるので、
演奏しない可能性も十分にありますが・・・。
■DVD
「Limited Edition」バージョンには、
ライブ、ツアードキュメント、プロモの映像が収められたDVDが付いてくる。
1曲目の「Rock! Rock! (Till You Drop) 」の後、
ドニントンでのライブの模様が流れる。
ここでのジョーのMCの内容が激ヤバイ。
デフ・レパードのファンだったら涙なくしては見ることが出来ないであろう。
もちろん、号泣ッス。
熱心なファンはもうこのアルバムを買って、
既にDVDも見ていると思うので、
ここは是非とも、「昔、デフ・レパードを聴いていたが、いまは聴かない」という方に、
見て頂きたい!
そして、ジョーがステージ上であまり喋らない理由もサラリと明かされる。
全くMCがないのも寂しいが、ダラダラと喋られるのも嫌なんで、
ジョーぐらいのボリュームが丁度良い。
全盛期のガンズ・アンド・ローゼスの東京ドーム公演で、
アクセル・ローズはわざわざ通訳をステージに上げて、
MCを日本語に訳させていたことを思い出した。
あと、80年代を共に生き抜いた、あのボーカリストとあのギタリストも登場。
メンバーたちとのやり取りは、時の流れを感じつつも、
やはり感動的だ。
ということで、演奏良し、音良し、ボリューム良しのライブアルバムでした。
でもDisc1は、CDに収録可能時間に余裕があるので、
日本公演で演奏されながらも、今回、もれた「Go」とか入れて欲しかったな。
と、強欲めいたことを言っておりますが、
初めてこのライブアルバムを聴いた時、
何回か涙がこぼれました。
あぁ〜、11月の来日公演が待ち遠しい。
そこでも泣くべ。
『ミラーボール』CD+DVD Limited Edition
Disc1
1. Rock! Rock! (Till You Drop)
2. Rocket
3. Animal
4. C'Mon C'Mon
5. Make Love Like A Man
6. Too Late For Love
7. Foolin’
8. Nine Lives
9. Love Bites
10. Rock On
Disc2
1. Two Steps Behind
2. Bringin' On The Heartbreak
3. Switch 625
4. Hysteria
5. Armageddon It
6. Photograph
7. Pour Some Sugar On Me
8. Rock Of Ages
9. Let’S Get Rocked
10. Action
11. Bad Actress
12. Undefeated
13. Kings Of The World
14. It’S All About Believin’
15. Kings Of The World(Different Version)