9/10より丸の内TOEIほか全国にて 配給会社:東映 (C)2011「探偵はBARにいる」製作委員会 |
酒好きで美女に弱いが、受けた依頼はキッチリとこなす探偵“俺”と、
その相棒かつ運転手の高田の活躍を描いたハードボイルド。
まず、キナ臭い依頼を受けた探偵“俺”が、謎を解いていく過程が面白い。
シリアスさとユーモアが見事にブレンドされており、メリハリもある。
荒唐無稽さを排したリアル志向のアクションも好感が持てる。
ハードボイルドに必要不可欠な哀愁、悲哀もバッチリ。
舞台がちょっといかがわしい感じの札幌・ススキノというのも味がある。
探偵が依頼を受けるのが、そのススキノにあるバーの黒電話という設定も心憎い。
そして、何よりも本作が素晴らしいのは、キャラクター重視であることと、
その各登場人物を演じたキャスト。
物語と世界観を支えている。
主人公の探偵“俺”を演じたのは大泉洋。
正直言うと、今まで俳優としての魅了をあまり感じたことがなかったんだけど、
(ファンの方、すみません・・・)
今回、良かったっす。
だらしなさそうだけど、しっかりしていて、
不真面目そうだけど、実は真剣で熱いという探偵のキャラクターにぴったりだし、
内に秘めている思いや感情が伝わってくる。
また危険なアクションや雪に埋められるという見るからにしんどそうなシーンでも
スタントを使わず、自ら演じており役者魂を感じた。
探偵の助手の高田役には松田龍平。
ぐうたらで寝てばかりいるけど、喧嘩には滅法強く、
いざという時はとても頼りになる。
松田龍平がかつて演じた悪夢探偵と、
『ボーイズ・オン・ザ・ラン』での会社員・青山を足したようなキャラクターで、
意外性はないが、逆に言えばはまり役ってことだ。
この二人の掛け合いが絶妙なので、バディムービーとしてかなり楽しめる。
その他、ヒロイン役の小雪、
殺害され物語の発端を作るその夫を演じた西田敏行らが出演しているんだけど、
中でも出色なのが高嶋政伸でしょう。
探偵を苦しめる悪役を演じていて、かなりの怪演。
『ノーカントリー』のハビエル・バルデムみたいな変な髪型に黒い服装、
いつもガムをクチャクチャ噛んでいる。
不気味で、気持ちが悪くて、不快極まりない。
実は見る前にキャストをきちんと確認しておらず、
見ている最中誰が演じているのかわからなかった。
“随分と上手な役者さんだなぁ”って思っていたら、
エンドクレジットに高嶋政伸の名前が。
“あれ?出てたっけ?あっ、あの悪役!?”ってな感じでございました。
高嶋政伸をこの役にキャスティングした人も凄いし、
見事に要望に応えた高嶋政伸も凄い。
あと、怪しい青年を演じた浪岡一喜のいっちゃった演技も、大いに笑えた。
トータル、大人の鑑賞に耐えうるというか、
大人が大いに楽しめる娯楽作に仕上がっている。
よくよく考えると、この手の作品って最近なかったな。
テレビドラマの映画化じゃないってのも嬉しい。
北海道出身&在住の東直己の小説の映画化だが、
そこまで大々的に知られた本ではないってのも、
色がつかない分、かえってプラスに作用していると思う。
原作は“ススキノ探偵シリーズ”として、
1992年から現在までで11作も発表されているので、
映画も大泉洋と松田龍平のコンビでシリーズ化して欲しいな。
そのためには、まずは本作でヒットをかまさないと!!
■余談1
本作を鑑賞しに東映さんの試写室にいったら、
受付で「お土産です」と紙袋を渡された。
今まで何度も試写会に行ったことがあるけど、
お土産を頂いたのは初めて。
中身は「北海道開拓おかき」。
この「おかき」は劇中に登場していて、
いつも松田龍平演じる高田がポリポリと食べている。
私も家で、ビール片手にポリポリと頂きました!
かなり美味かったです!!
WEBで購入も出来るので、ご興味がある方は是非お試し下さい!
■余談2
本作の原作者の東直己の著書には、
北海道が舞台、主人公が探偵という設定の小説が多い。
“探偵・畝原シリーズ”も、
“ススキノ探偵シリーズ”同様、北海道が舞台。
“ススキノ探偵シリーズ”は一冊も読んでいないんだけど、
“探偵・畝原シリーズ”はそこそこ読んでいる。
これがかなり面白い。
シリーズを追うごとに登場人物たちも、
年を取っていくというパターンのもので、
1作目で小学生だった探偵畝原の長女が、
5作目あたりでは高校生として登場したりする。
更に、かなり重要な登場人物に一生残る傷を負わせ、
中には殺されてララバイというケースもある、
かなりハードな探偵モノだ。
既にシリーズは完結しているんだけど、
ラスト2冊を読めていません。
その他、元ヤクザが主人公のハードアクション、
“榊原健三シリーズ ”ってのもあって、
3作出ているんだが、3作目を読んでいない。
何故か、いつも中途半端です・・・。