10/1よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国にて 配給会社:プレシディオ (C)2011 RELATIVITY MEDIA. |
うだつの上がらない作家志望の男エディが、たまたま手に入れた薬。
それは脳を100%活性化させるという新薬だった。
薬を服用したエディは、究極の能力(リミットレス)を手に入れ、数々の成功を収めるが・・・。
派手さはないが、目まぐるしく展開する物語を斬新な映像でタイトにまとめた佳作スリラー。
この手の映画は、“見る者に自分だったらどうしよう?”と思わせることが大切なんだけど、
『リミットレス』は、まさに“自分だったら・・・”の作品だった。
NTZ48と呼ばれる新薬を飲めば、今まで読んだ本や新聞、見た映画はもちろんのこと、
過去に自分が見聞きした全ての知識を一瞬にして思い出し、自らの行動に直結することが出来る。
過去の知識だけでなく、新しく外国語や楽器の演奏もマスターすることも可能だし、
難解な方程式を解くこともお茶の子さいさいだ。
自分が不利な状況下に陥ったら、その場の状況を瞬時に把握し、
的確な話術や行動で、その窮地を脱することが出来る。
豊富な知識と話術と技術と行動力が“リミットレス”に手に入れば、
どんなことだって可能であり、巨額の富と権力、そして良い女を手中に収められる。
しか〜し!上手い話には裏がある。
多くの薬がそうであるように、NTZ48にも副作用がある。
ここでは詳しく書かないが、大量に服用し続けると死の危険性も伴うほどの強い副作用があるとだけ言っておこう。
飲めば何でも出来るけど、大きなリスクも伴う。
うーん・・・自分だったらどうしよう・・・。
でも、過去の知識の再起という部分では、今まで恐らくロクなことを見聞きしていないので、
大したプラスにはならんだろな・・・なんてね。
こんな感じで、自分の立場に置き換えながら見ることが出来るんだけど、
それを可能にさせているのが、エディを演じたブラッドリー・クーパーだ。
どん底のエディ、成功を手にしたエディ、薬の副作用に怯えるエディ、
更にその先のエディと、エディは様々な変貌を遂げる。
観客が激しく変化するエディに感情移入し続けるためには、
エディが常に共感できる、魅力的な人間でなくてはならない。
落ちぶれていた時は成功して欲しいと思えて、
成功を手に入れても嫌味に感じなくて、
混乱している時は窮地を脱して欲しいと切望する。
エディとの同化は、本作の肝だ。
様々なエディを演じつつ、観客の共感を維持させる。
エディを演じるのは相当難しいと思うんだが、
ブラッドリー・クーパー演じるエディには、ガッツリ感情移入出来た。
(しかし、ブラッドリーは男前ですなぁ〜)
また、変化に富むエディを表現する映像作りが素晴らしかった。
薬を飲んでいない時のエディ、飲んでいる時のエディ、服用したりしなかったりのエディと、
エディの状況によって、色彩やカメラワークを変えていて、その切替がまた絶妙。
こういう演出が出来る監督の頭の中ってどうなんているんだろう?って思う。
ラスト、エディがどのような状態にいるのか、ちょっと曖昧なんだけど、
映像の色彩とカメラワークが、今のエディを表すヒントになっているような気がした。
この他にも、あれ?って思うところがあったんだけど、
良く考えてみるとちゃんと整合性が取れていた。
物語よし、役者よし(ロバート・デ・ニーロが出ています)、映像よし、演出よしってな感じで、
痒いところにしっかりと手が届いている、そんな作品でした。