『ステキな金縛り』
2011年10月29日より全国にて
配給:東宝
(C)2011 フジテレビ 東宝
失敗ばかりの三流弁護士エミは、資産家の妻殺しの容疑で捕まった男の弁護をすることに。
男はアリバイがあると無実を主張。
そのアリバイとは事件のあった夜、旅館に泊まった際に、
落武者の霊にのしかかられ、金縛りにあっていたというのだ。
早速その旅館を訪れ同じく金縛りにあったエミは、
落武者の霊に法廷の証言台に立つよう懇願するが・・・。
世の中にこの人は凡人とは違う思考回路を擁する、
所謂、天才と呼ばれる人がいるけれど、三谷幸喜は間違いなくそのひとりだと思う。
まず裁判の重要な証人が、落武者の霊という発想を思い付くこと自体が凄い。
その発想をきちんと脚本に落とし込み、物語を成立させ、それを映像化してしまう。
しかも今回の撮影は、今まで以上にロケを敢行、
さらに舞台演出家の三谷幸喜が得意とする長回しを封印してカットを割っている。
限られた空間でドラマを成立させなくてはならない法廷ものは、
かなり高度な演出力がないと難しいとされている。
映画監督として新たなチャレンジをしているのだ。
技術的な面で進化を遂げている一方、三谷作品ならではの要素もしっかりと入れている。
まず、出演者が豪華。前作『ザ・マジックアワー』に引き続き、
深津絵里と西田敏行が弁護士のエミと落武者の霊をそれぞれ演じている。
深津絵里は、シリアスな『悪人』から一転して名コメディアンヌぶりを発揮。
頑張り屋さんで嫌味のないエミを好演。
西田敏行は、『ザ・マジックアワー』で禁止されていたアドリブが解禁となり、本領発揮。
それを受ける深津絵里とのやり取りも面白い。
エミの上司を演じた阿部寛は、相変わらず濃い。
一人二役に挑んだ竹内結子と深津絵里の競演も見所のひとつ。
法廷での対決シーンは、なかなか見応えありました。
この2人は三谷幸喜の映画には初登場。
同じく三谷組初参加となる浅野忠信、深田恭子もいい感じです。
あとはエミに対峙する検察官を演じた中井貴一が素晴らしかった。
その演技にゾクゾクしてしまった。
この他、佐藤浩市、篠原涼子が以前の三谷作品のキャラクターで登場するほか、
唐沢寿明、戸田恵子、小日向文世など三谷作品常連組が大挙出演。
中にはワンシーンしか出てこない人もいるけど、全員それなりのインパクトを残している。
それはやはりキャスティングの妙、役者たちが醸し出す雰囲気、
軽妙なセリフ回しに拠るところが大きい訳だが、これこそ三谷幸喜監督の持ち味だろう。
味といえば、三谷幸喜監督らいしクラシック映画に対する愛情も挙げられる。
エミの死んだ死んだ父親が好きで、弁護士になるきっかけになった映画として、
フランク・キャプラ監督の『スミス都へ行く』がオマージュどころか堂々と登場。
小日向文世演じるキャラクターもキャプラ好きで、物語のアクセント的な役割を果たしている。
因みに野田佳彦首相が政治家を目指すきっかけになったのは、『スミス都へ行く』だそうです。
更に因みに、伊藤Pが前の会社に入る際の面接で、
好きな映画監督を聞かれた時に挙げたのは、フランク・キャプラ。
20代の若者の口からフランク・キャプラという名前が出てきて、
面接をしていた人は驚きつつ、関心していた。
だから受かったのかな?
話が逸れました。
三谷幸喜監督が技術的に進化しながらも、
クラシック映画愛、証人が落武者の幽霊という奇抜なアイディアの法廷劇、
エミの成長ドラマと心暖まる物語、
豪華キャスト、ウィットに富んだセリフ、絶妙な間とらしさを炸裂させたのが『ステキな金縛り』です。
貪欲なるチャレンジ精神、そして、安心、安全のブランド力。
やはり天才だと思う。
コメント (1)
めっちゃみたい!!
投稿者: たま | 2011年10月29日 15:45