『コンテイジョン』
2011年11月12日より新宿ピカデリーほかにて
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
“接触伝染病、病原菌、悪影響”を意味する“CONTAGION”というタイトル通り、
未知のウィルスによる世界的な流行とその混乱を描いたスリラー。
ウィルスによる感染者が発生。
咳と発熱を経て痙攣、脳内出血、そして死に至る。
その患者の数は瞬く間に広がっていく。
米国疾病管理予防センター(CDC)は、変異を続ける病原体の研究をし、ワクチンの開発を目指す。
世界保険機構(WHO)は、新型ウィルスの起源と感染ルートの調査に乗り出す。
しかし、感染は拡大の一途をたどるうえ、
人々に被害妄想と恐怖を植えつける扇動者が現れ、秩序が崩壊。
世の中は暴動、略奪が横行するパニック状態へと陥っていく。
今までも病原体パンデミックを扱った映画はいくつかあるが、
感染の広がりやウィルスの正体を暴いていく過程をじっくり見せるという点で、
本作は妻夫木聡、檀れい主演の『感染列島』に一番近いかもしれない。
しかし、『コンテイジョン』の監督はスティーブン・ソダーバーグだ。
『感染列島』の瀬々敬久監督のようなウェットな人間ドラマを得意としない。
いつものように淡々としている。
色彩を抑えたクールな映像も相まって、
作品に寒々とした荒廃感と寂寥感を生み出している。
マット・デイモン、マリオン・コティヤール、ローレンス・フィッシュバーン、
ジュード・ロウ、ケイト・ウィンスレット、
グウィネス・パルトロウというオスカー受賞&ノミネート経験のある実力派が集結し、
重厚な演技でドライな映画にリアリティーを与えている。
ひとつ事件に大して様々なエピソードを積み重ねていく群像劇、
豪華俳優共演、ドライな映像、
ソダーバーグと何度もコンビを組んでいるクリフ・マルティネスによる印象的なスコアなど、
ソダーバーグがオスカーを獲った『トラフィック』で培った経験が生かされている。
ただ、登場人物が多いせいもあるが、ソダーバーグらしい客観的な視点が、
今回もキャラクターへの感情移入をさせてくれない。
マット・デイモン演じる妻と子供を亡くし、
感染を免れた娘を守ろうとする男が一番入り易い存在なんだが、
嫁さんが浮気していたとはいえ、妻子が死んでいるというのにあんまり落ち込んでいる風に見えない。
もうひとりマリオン・コティヤールが扮したWHOの調査員も、
もう少し○○たちとの交流を描いてくれたら、
最後に込み上げてくるものがもっとあったと思う。
登場人物と一体化出来ないが故に、本来ならばかなりおっかない内容なのに、
そこまでスリルを味わえなかったのが残念。
とは言え、キャストの使い方は贅沢だし(特にグウィネス・パルトロウ)、
ウィルスよりも理性を失いつつある人間たちの愚行の方が脅威というテーマもよく、見応えは十分だ。
ウィルスではないし、人から人へ感染もしないけれど、
見えない恐怖に日々さらされている日本人は、この作品を見るとまた別の感情が喚起されるかもしれない。
自分は少なからず連想してしまいました。
ビジュアル好きです。