『善き人』
2012年1月1日より有楽町スバル座ほか全国にて順次公開
配給:ブロードメディア・スタジオ
©2007 Good Films Ltd.
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1930年代、ヒトラー独裁が進むドイツ。
ベルリンの大学で文学を教えるジョン・ハルダーは、
善き夫、善き父、善き息子、そして、善き人であることを心がけて生きてきた。
しかし、かつて書いた小説がヒトラーの目に留まったことから、
ジョンはナチ党へ入党せざるおえなくなり・・・。
映画化困難と言われてきたC・P・テイラーの舞台劇を元にした人間ドラマ。
ヴィゴ・モーテンセンは、繊細な演技で主人公ジョン・ハルダーを演じているし、
ジョンに恋するアン役のジョディ・ウィッテカーも魅力的だ。
その他、ジェイソン・アイザック、マーク・ストロングといった役者も、
演技派揃いで安心して見ていられる。
あまり奇をてらった作風ではなく、オーソドックスな作りではあるのだが、
何気にカメラアングルとかカメラの動きとかが凝っていたりして、
「おぉ!」と思わせるシーンがいくつあった。
そのトドメは、終盤、ジョンが訪れたある場所での長回し。
カメラ固定の長回しはちょっと苦手だが、
ステディカムを駆使した動きのある長回しはウェルカムだ。
カメラの動きはもちろんのこと、役者の立ち位置やタイミングなど、
細かい準備と入念なチェックを経てからでないと成立しない撮影スタイルなので、
その華麗なるテクニックを堪能したくなってしまう。
“うーん、なかなかいいじゃなーい”なんて感心していたら、
その長回しが唐突に終り、映画そのものも終ってしまった。
「えっ?ここで終っちゃうの!?」って。
善き人であろうとするジョンの苦悩がメインで描かれる作品なんだけど、
正直、あんまり葛藤してなくね?って。
善き人が、本当に善き人でなくなる瞬間を楽しみにしていたのに、
それがないまま終ってしまう。
まぁ、善き人の苦悩というよりは、善き人が無意識のうちに罪を犯していて、
実は悪い人だったというオチを狙った作品なので、
ジョンの葛藤をそこまで描写する必要は無いのかもしれないが、
どちらにしても中途半端に善き人なので、オチの効果があまりない。
演技とか撮影のテクニックとかセットとか美術とか衣装とか、
見るべきところがたくさんあるんだけど、
肝心のドラマがあんまり面白くないんだよね。
俺は不感症か?ってぐらい、ドラマの部分に何も感じることが出来ませんでした。