『ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル』
2011年12月16日よりTOHOシネマズ日劇ほか全国にて
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
©2011 PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved.
ご存知、トム・クルーズ主演の人気シリーズ最新作。
“人気”と書いたが、トム・クルーズの宗教の問題や様々な奇行のためか、
2006年に製作された前作『M:i:III』は、アメリカで予想を下回る成績だった。
私生活に問題があり、人気に陰りが出ていると見なした製作スタジオのパラマウントは、
14年にわたるトム・クルーズとの契約を同年一方的に破棄した。
その後、トム・クルーズは、初のプロデュース作品『ミッション・インポッシブル』以降、
長年共同パートナーであったポーラ・ワグナーと共にユナイテッド・アーティスト社へと移り、
2007年『大いなる陰謀』、2008年『ワルキューレ』で主演・製作を務めるも、
大きな成功を収めることは出来なかった。
続いて、(多分)窮地に陥っていた(?)トム・クルーズは、
主役選びが難航していた20世紀フォックスの『ナイト&デイ』に主演するが、
興行的にまたもや失敗してしまう。
ここ数年、トム・クルーズの人気は下落し、
主演作品は興行的に苦戦を強いられていた。
となると「M:i」シリーズの存続はおろか、
トム・クルーズ主演作の製作自体も危ない。
そんな状況下で、どうやって古巣のパラマウントからGOサインを得たのか分らないが、
幸いこうして無事にシリーズ第4弾が製作されるに至った。
トム・クルーズもバカじゃないだろうから、
自分が今置かれている状況をよく理解しているはず。
あらゆる意味で勝負作だ。
半端なものは作れない。
トム・クルーズは、そんな気合と意気込みで本作に挑んだに違いない。
そして、その思いは見事に作品に反映されてた。
(って、トムの気持ちを勝手に想像して書いているだけだが・・・)
最近のトム・クルーズ主演作の中では、群を抜いて面白かった。
まず、今までの「M:i」シリーズは、
俺様トム様で超ナルナルだった(まぁ、他の主演作もそうだけど)。
ところが、今回はジェレミー・レナー、ポーラ・パットン、
サイモン・ペッグ等が演じるエージェントたちとのチームプレーが主軸になり、
それぞれが活躍するので、俺様トム様テイストが軽減(そうはいっても大分あるけどね)。
映画が好きになった頃とトム・クルーズの人気が爆発した時期とが、
ドンピシャで重なっており、トム・クルーズの映画を見て育ってきたようなものなので、
ずっとご贔屓な俳優さんだった。
プライベートに問題があって、世間が“あーだこーだ”と言っていても、
一人の俳優として大好きだったし、応援し続けてきた。
とはいえ、『ナイト&デイ』を見た時に、
トム・クルーズのナルぶりが流石にちょっと鼻につく感じだったので、
今回、俺様トム様の一枚看板とならずで良かった。
というのは冗談として、
チーム重視でミッションが遂行されるがゆえに、
今までのシリーズにはなかったような展開が随所に見られる。
それからシリーズ最大の見所であるアクションは、過去最高の出来映えだった。
話題になっているドバイの超高層ビル“ブルジュ・ハリファ”で繰り広げられるアクションだけでも、
本作を見る価値があるじゃないかな?
地上828メートルのビルの外側にへばり付くんですよ。
とび職人でもチ○コ縮むって。
そんな人間が本来いちゃいけないようなところで、
代役を使わずに、率先してスタントをこなしてしまうトム・クルーズに感動しました。
とにかくCG合成一切なしというのが信じられん。
トム・クルーズだけでなく、撮影チームも相当大変だったに違いない。
久しぶりにアクションシーンのメイキングが見たいと思った。
この他にもたくさんアクションシーンが盛り込まれているんだが、
特に印象に残ったのが、砂嵐の中で展開される大追跡劇。
追跡劇なのに視界ゼロ。
見えない相手を追いかけるというアイディア自体が素晴らしい。
これも撮影大変だっただろうな。
クライマックスとなるある場所でのボスキャラとの戦いも、
工夫が施されていて、その発想力に感心しました。
そして、砂嵐チェイスやクライマックスのアイディアを出したのは、
資料によると監督のブラッド・バードだという。
ブラッド・バードは、アカデミー賞長編アニメーション作品賞を受賞したピクサーの『Mr.インクレディブル』、
『レミーのおいしいレストラン』を手掛けた人物。
これまでブライアン・デ・パルマ、ジョン・ウー、J・J・エイブラハムが監督を務め、
それぞれ“らしさ”を発揮してきたが、
ブラッド・バード監督はアニメーションで培ってきた柔軟な発想力と、
『M:i』の持つ世界観とを見事に融合させている。
知り合いのライターさんは、クライマックスのシーンで『モンスターズ・インク』を思い出したそうな。
言われてみたら確かにそうだ。
ブラッド・バード監督は、ストーリーテラーとしても優れており、
追いかけるのが難しくなりそうな複雑な物語を手堅くまとめている。
物語が3作目と邪魔にならない程度に関連しているのもよい。
前作を見ていなくても、あまり困らないからね。
(もちろん、見ておいた方が良いけど)
先述のトム・クルーズ以外のキャストも個性豊かで魅力的だ。
中でもポーラ・パットンには驚いた。
最初、“なんでヒロインが彼女なん?”って思ったんだが、
見てみたらドンピシャな配役だった。
よくヒロインのことを「知的でタフでセクシー」と形容することがあるけど、
まさにその通りだった。
とぼけたキャラで笑いを誘うサイモン・ペッグ、
存在感抜群のジェレミー・レナーも本シリーズに新しい風を吹き込んでいる。
見る前に期待しちゃいけないと常々思っているんだが、
本作に関しては、どうしても期待指数が上がってしまった。
でも期待を裏切らない、満足度の高い作品でした。
この映画はスクリーンで見ないと!