『ロボジー』
2012年1月14日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国にて
配給:東宝
©2012 フジテレビジョン 東宝 電通 アルタミラピクチャーズ
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家電メーカー、木村電器の社員、小林・太田・長井の3人組は、
近日開催されるロボット博で会社をPRするため、
社長から二足歩行ロボットの開発を命じられていた。
しかし、ロボット博まであと1週間というところで、
制作途中のロボット“ニュー潮風”が大破してしまう。
窮地に追い込まれた3人は、ロボットの中に人間を入れて誤魔化す計画を立て、
ロボットの外装に収まる独り暮らしの老人・鈴木重光を架空のオーディションで探し出す。
しかし、鈴木がロボット博で調子に乗ってしまったことから、
事態は思わぬ方向へと動き出し・・・。
『ウォーターボーイズ』、『スウィングガールズ』、『ハッピーフライト』と、
常に斬新な着眼点で、質の高い人情コメディを世に送り出してきた矢口靖史監督最新作。
今回は、ロボットに注目。
1996年にHONDAが開発した人間型自立二足歩行ロボット「P2」を見た矢口靖史監督は、
「まるで人が入っているみたいだ!」と衝撃を受け、
以来、ロボット映画を作りたいと考え続けていたという。
『ロボジー』は、ロボットの中に老人が入り騒動を巻き起こすという内容だが、
このロボットの中にジジイが入るという発想に関しては、
「ハリウッド映画では、“人が一皮向けると実は中はロボットだった”
というのが良くあるので、その逆にロボットの中に人を入れたら、
しかも、老人を入れたら楽しんじゃないかと思った」
と語っている。
他の人があまり興味を抱かないモノや、
興味を抱いたとしても映画化しないようなモノに、
独自の捻りを加えて映画化してしまう矢口靖史監督のセンスには毎回唸らされる。
多分、職業柄、映画のネタになるような話や事件を日々探しているとは思うんだが、
矢口靖史監督の嗅覚はやはり他の人とは違うのでしょう。
でもって、『ロボジー』ですが、
毎度、キャスティングの妙がある矢口靖史監督なので、
誰が主役なんだろうと見る前にチェックしてみたら、
一番最初に「五十嵐信次郎」という名前が。
「だ、だれ?」
上映前に手渡されたマスコミ向け資料で確認することも出来たんだけど、
基本的に予備知識を得ずに映画を見たい人なので、結局資料を開かず、
「五十嵐信次郎」が誰なのかわからないまま鑑賞し始める。
やがて、ジジイの鈴木重光演じる五十嵐信次郎が登場。
「あれ?この役者さんって、あの人じゃないの!?他人のそら似?」
ってぐらい、歌手・俳優として有名なある人物にそっくり。
五十嵐信次郎が誰であるかは、鑑賞後プレスで確認して、
「そういうことか!」と納得したのですが、
あえてここでは記述しないでおきましょう。
そのオーディションで200人の中から選ばれた73歳のシンデレラボーイ五十嵐信次郎が、
素晴らしい。
鈴木は「老いては子に従え」の真逆を行く頑固者。
あまり近寄りたくない偏屈ジジイだ。
そのくせ、人一倍自尊心が強く、
老人たちの演劇で主役をやりたい、
老人仲間にちやほやされたい、
そっぽを向かれている孫たちに認められたいと思っている。
お調子者で、すぐに図に乗り、他人に迷惑をかける。
しかし、そんな自分の振る舞いを省みて、
しょんぼりすることもある。
そんな人間味のある鈴木に、いつの間にか感情移入している自分がいたりする。
五十嵐信次郎、良い味出しています!
そして、良い味といえば、
役作りなのか、結婚して幸せだからなのかはわからんが、かなり太った濱田岳。
“ニュー潮風”開発チームの一人小林を演じているんだが、
頼りなくて、流れに身を任せてしまいがちの鈴木にピッタリだ。
もう一人、注目なのが吉高由里子。
元々コメディセンスのある女優さんだと思っていたけど、
今回、ロボットオタクで“ニュー潮風”に本気で恋をしてしまう佐々木葉子を演じ、
その才能を遺憾なく発揮している。
この手の“痛い”演技を嫌う人もいそうだけど、
意図的に大げさに演じているシーン以外、
あまりわざとらしさを感じさせないのが、彼女の魅力のひとつかと。
素の吉高由里子は不思議ちゃんのようなので、地で演じている可能性も高い。
この他、田畑智子、和久井映見、小野武彦ら安心安全のキャストを重要キャストとして配置している他、
田辺誠一、西田尚美、森下能幸、田中要次、徳井優、竹中直人など、
かつて矢口靖史監督作品に出演したことのある役者が、チョイ役(とうかほとんどゲスト)で出演。
贅沢ですな。
キャスト、物語などなど概ね良いのだが、
『ロボジー』は、今までの矢口靖史監督作に比べるとちょっとパンチが足りないように思う。
『ウォーターボーイズ』、『スウイングガールズ』にあった爽快さがない。
あと、あまり笑えない。
『ハッピーフライト』のように、
「へぇー、そうなんだ!」といたような新たな知識を知ることもない。
(二足歩行のロボットの原理とか出てきますが、難しすぎてわかるわけもなく)
その辺がちょっと食い足りない。
とはいえ、矢口靖史監督が、毎回、良質作品を作り続けているから、
余計にそう感じてしまうだけのことで、十分、面白い映画ではあります。
矢口靖史監督が、ブランド化したその代償という感じでしょうか?
コメント (1)
おれ、スウイングガールズ観て、劇場で泣いてた。
投稿者: ぶちょ | 2012年01月20日 14:50