2012年01月27日更新

#643 『J・エドガー』

J・エドガー


『J・エドガー』
2012年1月28日 より 丸の内ピカデリーほか全国にて
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.


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1924年に任命されて以来、1972年にこの世を去るまで、
FBI(アメリカ連邦捜査局)の初代長官であり続けた男、
ジョン・エドガー・フーバーの人生を綴ったクリント・イーストウッド監督最新作。


J・エドガーは、就任当時のカルビン・クーリッジからリチャード・ニクソンまで、
8代の米国大統領たちに仕え、FBIを今のような影響力を持つ巨大な組織へと発展させた人物。


エドガーは、ジョニー・デップ主演、マイケル・マン監督による実録犯罪ドラマ『パブリック・エネミーズ』にも登場。
エドガーは、強盗デリンジャーを捕まえれば、FBIを強く市民にアピールできると考え、
デリンジャーの逮捕に躍起になる(実際には射殺)。


『J・エドガー』にもこの辺の下りは出てくるが、
併せて鑑賞すると良いかもしれない。


『パブリック・エネミーズ』では、エドガーをビリー・タラップが演じていたが、
今回は、レオナルド・ディカプリオが、特殊メイクの力を借りつつ、
野心に燃える20代から、老獪な晩年までを熱演している。


J・エドガー


この他、エドガーの秘書を長年務めたヘレン・ガンディーを演じたナオミ・ワッツ、
エドガーの右腕であり公私ともに深い関係にあったクライド・トルソン役のアーミー・ハマー、
エドガーに多大なる影響を与えた母親に扮したジュディ・デンチ、
FBIにとって大きな転機となった誘拐事件の当事者である、
伝説の飛行士チャールズ・リンドバーグ役のジョシュ・ルーカスなど、
豪華演技派俳優を配している。
(アーミー・ハーマーは、昨年、マリファナ所持で逮捕されて一晩留置所に拘留されたそうな→不起訴処分)


J・エドガー


安心して見ていられる役者たち、
時代を行き来しながらも全く混乱をきたさない巧みな編集、
スタンダードな方法をとりつつ、時に流れるような動きをみせるカメラワーク、
細部にまでこだわった美術と衣装、


重厚なセットとロケーション、見事なメイクアップとCG、
シーンにマッチしたスコア(イーストウッド自ら作曲)と、
流石はイーストウッドと言いたくなる様な老練な演出が光りまくる。


しかしながら、巧いからといって、
必ず心に刺さるかというと、そうでもないのが映画の難しいところ。


エドガーは、現在に至るまで最も長く政府機関の長を務めた人物。
なぜ、半世紀にも渡り、しかも死ぬまでその座に君臨することが出来たのか?


その理由が解き明かされるわけだが、まぁ、汚いことしなければ無理ですよね。
その辺は大分興味深くはあるんだが、脅迫、圧力なんてのは、この手の世界では当たり前でしょう。
(それでもアメリカ大統領を脅すってのは、流石に凄いと思うが・・・)


エドガーが活躍していた頃、まだ生まれてもいなかった日本人である自分にとっては、
時代的にみても、国家的にみても、エドガーはやっぱり遠い人物だ。


J・エドガー


更にエドガーの私生活は謎が多く、本作で今までグレーだった部分が明らかになるわけだが、
マザコンチックな母親や同性愛的なクライド・トルソンとの関係など、安易に踏み込めない。


母の期待に応えようとするがあまり、権力に溺れ、
その地位を維持するためには、手段を選ばない強欲さを持つ一方で、
強迫観念に囚われ、猜疑心を募らせる哀しき男には、あまり共感できるところがなかった。


結果、「エドガーって、孤独な人だったのね」ということを知るに至り、
なんの感動も得られぬまま、劇場を後にする。
そんな作品でした。


J・エドガー


『パブリック・エネミーズ』も同じような感じだったんだけど、
パンピーである小生は、権力者、犯罪者が主人公の実録人間ドラマで、
心を揺さぶられることはあまりないようだ。
(そういえば、『アビエイター』もそうだったなぁ)


まぁ、『J・エドガー』に関しては、
イーストウッドは、いつもながら人間の持つグロテスクな部分を引き出すのが好きなんだなぁー、
という感想もあったけどね。
(ここで言うグロテスクは、エロ・グロのグロではない)


最後に、本作にリー・トンプソンがワンシーンだけ出ていた。
エドガーがジンジャー・ロジャースと出会うシーンで、
ジンジャー・ロジャースの母親役を演じている。


若い人たちは知らない女優さんかも知れないけど、
我々の世代だと響く人も多いのでは?


『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマーティンの母親役を演じた女優さんです。


『バック・トゥ・ザ・フューチャー』以降、日本ではそこそこ人気がありまして、
銀座ジュワイ・オクチュール・マキのCMにも出演していた。





実は物心ついて一番最初に好きになったハリウッド女優が、
このリー・トンプソンだったりする。


トム・クルーズと共演した1983年の『栄光の彼方に(All the Right Moves)』(未公開)で、
ヌードを披露していると知り、日本でビデオ化されるや否や(待望!)、
レンタルビデオ店に駆け込んだことをよく覚えている。
主演作『ハワード・ザ・ダック/暗黒魔王の陰謀』のテレフォンガードは、
今も大切に持っています。
(ネットオークションでは700円のようです)


そんなリー・トンプソンをスクリーンで見たのは、
『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3』以来かもしれない・・・。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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