『ウタヒメ 彼女たちのスモーク・オン・ザ・ウォーター』
2012年2月11日より有楽町スバル座ほか全国にて順次公開
配給:東京テアトル
©2012「ウタヒメ 彼女たちのスモーク・オン・ザ・ウォーター」製作委員会
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良妻賢母なのに、旦那は自分に無関心、
娘は引きこもりという家庭崩壊に見舞われている40代の主婦・美恵子。
美恵子の以前の職場の後輩で、バツイチの奔放女・かおり。
転勤族の夫とうまくいかず、ママ友とも馴染めない万引き症の一児の母・雪見。
バリバリのロックスタイルだが、謎だらけの自称元ロッカー・新子。
美恵子がコンビニでパートを始めたことから、
4人が出会い意気投合し、日々の鬱憤を晴らすためバンドを結成。
高校のチャリティ・コンサートへの出演の話が舞い込み、
4人はコンサートに向けて「スモーク・オン・ザ・ウォーター」を猛練習するが・・・。
というストーリーなのですが、
たいへん惜しい映画とでもいいましょうか・・・。
主人公の美恵子が抱える日常的な悩みは、多くの主婦が共感できると思う。
残りの3人が抱える問題も現実的で、同じように苦しんでいる女性は多いでしょう。
男の目から見ても「あぁー、わかるなぁー」と思える、
そんな多分に感情移入できるキャラが4人揃っている。
しかし、彼女に降りかかる災難や不満が、
バンドをやることによって、発散、解消されるまでの過程の描き方が、
いまいちシックリとこない。
その大きな原因は、バンドをやる目的とその結果に整合性が取れていないからだと思う。
美恵子は「スモーク・オン・ザ・ウォーター」を弾きたいと思うが、
楽器を始めようとか、バンドをやってみようとかは思っていない。
ギターを買ってきたのは、かおりだ。
そして、流れでバンドを組むわけだが、
バンドを組んで「スモーク・オン・ザ・ウォーター」を練習するのは、
あくまでも演奏できたら気持ちよさそうで、日々の鬱憤が晴らせそうだから。
ほかの3人も同じような感じだ。
つまり、バンドを組んだのは、
憂さを晴らすためであり、彼女たちが抱える悩みを根本的に解決するためではない。
目的が憂さ晴らしで、結果、それぞれの問題が解決させるのであれば、
その導線が必要になるんだけど、それがない。
あと問題を盛り込み過ぎなんだよね。
だからそれぞれのエピソードを丁寧に描ききれない。
問題がそれぞれリンクもしないし、バンドをやることの目的にもなっていないから、
全てがバラバラのまま終ってしまう。
問題の解消のさせ方もご都合主義なものが多かった。
途中、4人が仲違いしてしまうという新たな問題が発生するんだけど、
あっという間に仲直りしちゃうしね。
きちんとした流れを作るとしたら、ザックリ下記のようになる。
美恵子は日々溜まっていて、憂さを晴らしたい。
晴らすために女性バンドを組んだ。
一生懸命練習した。
練習を通して、4人の関係は日に日に濃密になり、互いの欠点を言い合えるようになった。
バンドに情熱を捧げる美恵子を見て、旦那と娘の見る目が変ってきた。
一方、美恵子もメンバーから指摘された短所を改めるよう心がけるようになる。
順調にことが進んでいたが、つまらないことで4人は仲違いをしてしまった。
美恵子はメンバーたちとの交流が途絶えたことで、
更に鬱憤が溜まり、自棄になってしまう。
しかし、旦那や娘からの後押しもあり(「最近のお母さん、輝いていたよ!」とか)、
メンバーたちの存在の有難さを再認識する。
美恵子は、もう一度バンドをやろうとメンバーたちに声をかける。
実は、他のメンバーもバンドを始めたことで、
新たな男性と知り合えたり、ママ友から見直されたりするようになっていたので、
美恵子から打診を実は待っていた。
(新子の悩みはネタバレになるから書きません)
4人はまた集まりコンサートに向けて再始動するが、
コンサート当日に、またトラブルが!!!!(新子の問題)
それをメンバーの結束で乗り越えて、見事な演奏を披露!
てな感じの流れにしないとさ。
あと、練習シーンが少ないし、コンサートシーンもあまり躍動感がないのが残念。
せっかく4人をそれぞれ演じた黒木瞳、木村多江、真矢みき、しずちゃんたちは、
3ヶ月猛練習をして演奏できるようになったのに・・・もったいない!
それから、やたらとカメラが動くのが気になって仕方なかった。
そこクレーンで撮る必要ある?って。
時たまゴッツウ寒い演出もあって、
役者が必死な分、これももったいないって。
ちゅうことで、微妙に全てが噛み合っていないので、惜しい映画なのです。
とはいえ、つまらないとか、不快な気分になるとかはない。
美恵子たちが抱える悩みもユーモラスに描いているので、全体的にライトで見やすい。
黒木瞳が歌う姿が見られるのも嬉しいし、
木村多江が今までと違うキャラクターを演じているのも新鮮。
宝塚で同期だったという黒木瞳と真矢みきの共演も魅力的だった。
でもって、やっぱりギターが弾きたくなりまして、
鑑賞後、ギター弾いちゃいました。
もちろん、ディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」です。
オイラもバンドやりてぇ〜!!!