2012年02月16日更新

#646 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い


『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』
2012年2月18日より丸ノ内ピカデリーほか全国にて
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.


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9.11で大好きだった父親を失った少年オスカー。


ある日、父親のクローゼットから謎の鍵を見つけたオスカーは、
その鍵に父親からの最後のメッセージが込められていると信じて、
鍵穴を探し始める・・・。


世界的なベストセラーを記録したジョナサン・サフラン・フォアの同名小説を、
『リトル・ダンサー』、『めぐりあう時間たち』、『愛を読むひと』のスティーブン・ダルトリーが映画化。


少年の複雑な心理:『リトル・ダンサー』
人と人との交錯:『めぐりあう時間たち』
過去と現在を行き来する巧みな編集:『愛を読むひと』


これまでのスティーブン・ダルトリーの作品にあった要素が、
今回も活かされている。


オスカーを演じたトーマス・ホーンは、
演技経験が皆無に等しいらしんだが、まったくそれを感じさせない。


ものすごくうるさくて、ありえないほど近い


オスカーは、元々、広汎性発達障害の症状があるうえ、
突然父親を亡くし喪失感に苦しむ。


鍵穴を探す旅を通して、様々な人たちと出会い、
学び、傷つき、成長していく。


オスカーの素がちょっと変っているうえ、
徐々に変化を遂げていく役柄なので、
演じるのは相当難しいはず。


トーマス・ホーンの演技は見所のひとつでしょう。


そして、驚異の新人トーマス・ホーンを支えるのは、
トム・ハンクス、サンドラ・ブロック。


出番はそれほど多くないけど、やはり存在感は抜群だし、
安心して見ていられる。


この他、ジェフリー・ライト、ジョン・グッドマン、バイオラ・デイビスら、
演技派が良い味だしているんだけど、
中でも大ベテラン、マックス・フォン・シドーが素晴らしい。


ものすごくうるさくて、ありえないほど近い


ひょんなことからオスカーの鍵穴探索に同行することになる唖者の老人を演じているんだが、
一言も発しないのに、あらゆる感情を的確に表現している。


感情だけでなく、老人が今まで体験してきたであろう苦楽が、
その表情や仕草から滲み出ている。


こんな無言の演技が出来る俳優は、そうそういないと思う。


巨匠イングマール・ベルイマン監督作品の常連だった名優と、
演技経験がゼロに等しいトーマス・ホーンの共演シーンを見て、
大スター同士の共演とは違った、喜び、楽しみ、そして凄みを感じた。


一方、役者たちが紡ぎ出す物語には、そこまで深く刺さることはなかったんだが、
要所要所でグッとくるセリフや展開がある。


ものすごくうるさくて、ありえないほど近い


母親を拒絶してしまうオスカー。
それでもオスカーに愛情を注ごうとする母親。


二人の関係が困難を乗り越え、より密になった瞬間に発せられるオスカーの
「何か大切なものを失った人がたくさんいた」というセリフが印象深い。


オスカーや母親のように、親近者を突然失った経験がない者でさえ、
このセリフには思うところが多々あるので、
突然身近な人を不条理な理由や災害で亡くした人には、
もっと響くものがあるのではないでしょうか?


あと人々がどうのように9.11に起きた事件を知り、
また巻き込まれたのかが、今までにない角度から語られていて、
そこがとても興味深かった。


最後に『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』というタイトル。
長いし、わけがわかりませんが、映画を見ればなんとなくわかると思いますが、
人によって解釈も違うかも。

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プロフィール

1974年、東京都生まれ。少年時代、ジャッキー・チェンの映画に魅了され、映画小僧の道を突き進む。大学卒業後、映画宣伝代理店に入社。『リーサル・ウェポン4』、『アイズ ワイド シャット』、『マトリックス』などを担当。

2000年、スカパー!の映画情報専門チャンネル「カミングスーンTV」転職し、映画情報番組の制作を手掛けたのち、2006年、映画情報サイトの運用に従事。その後、いろいろあって、2013年7月よりCS放送「エンタメ〜テレHD」の編成に携わっている。

本ブログは、多ジャンルの情報提供を志すT-SHIRT-YA.COMのオファーを受けて、2003年4月にスタート。2007年12月にブログ化。
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