『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』
2012年2月18日より丸ノ内ピカデリーほか全国にて
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
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9.11で大好きだった父親を失った少年オスカー。
ある日、父親のクローゼットから謎の鍵を見つけたオスカーは、
その鍵に父親からの最後のメッセージが込められていると信じて、
鍵穴を探し始める・・・。
世界的なベストセラーを記録したジョナサン・サフラン・フォアの同名小説を、
『リトル・ダンサー』、『めぐりあう時間たち』、『愛を読むひと』のスティーブン・ダルトリーが映画化。
少年の複雑な心理:『リトル・ダンサー』
人と人との交錯:『めぐりあう時間たち』
過去と現在を行き来する巧みな編集:『愛を読むひと』
これまでのスティーブン・ダルトリーの作品にあった要素が、
今回も活かされている。
オスカーを演じたトーマス・ホーンは、
演技経験が皆無に等しいらしんだが、まったくそれを感じさせない。
オスカーは、元々、広汎性発達障害の症状があるうえ、
突然父親を亡くし喪失感に苦しむ。
鍵穴を探す旅を通して、様々な人たちと出会い、
学び、傷つき、成長していく。
オスカーの素がちょっと変っているうえ、
徐々に変化を遂げていく役柄なので、
演じるのは相当難しいはず。
トーマス・ホーンの演技は見所のひとつでしょう。
そして、驚異の新人トーマス・ホーンを支えるのは、
トム・ハンクス、サンドラ・ブロック。
出番はそれほど多くないけど、やはり存在感は抜群だし、
安心して見ていられる。
この他、ジェフリー・ライト、ジョン・グッドマン、バイオラ・デイビスら、
演技派が良い味だしているんだけど、
中でも大ベテラン、マックス・フォン・シドーが素晴らしい。
ひょんなことからオスカーの鍵穴探索に同行することになる唖者の老人を演じているんだが、
一言も発しないのに、あらゆる感情を的確に表現している。
感情だけでなく、老人が今まで体験してきたであろう苦楽が、
その表情や仕草から滲み出ている。
こんな無言の演技が出来る俳優は、そうそういないと思う。
巨匠イングマール・ベルイマン監督作品の常連だった名優と、
演技経験がゼロに等しいトーマス・ホーンの共演シーンを見て、
大スター同士の共演とは違った、喜び、楽しみ、そして凄みを感じた。
一方、役者たちが紡ぎ出す物語には、そこまで深く刺さることはなかったんだが、
要所要所でグッとくるセリフや展開がある。
母親を拒絶してしまうオスカー。
それでもオスカーに愛情を注ごうとする母親。
二人の関係が困難を乗り越え、より密になった瞬間に発せられるオスカーの
「何か大切なものを失った人がたくさんいた」というセリフが印象深い。
オスカーや母親のように、親近者を突然失った経験がない者でさえ、
このセリフには思うところが多々あるので、
突然身近な人を不条理な理由や災害で亡くした人には、
もっと響くものがあるのではないでしょうか?
あと人々がどうのように9.11に起きた事件を知り、
また巻き込まれたのかが、今までにない角度から語られていて、
そこがとても興味深かった。
最後に『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』というタイトル。
長いし、わけがわかりませんが、映画を見ればなんとなくわかると思いますが、
人によって解釈も違うかも。