『スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜』
2012年3月31日より丸の内ピカデリーほか全国にて
配給:松竹
©2011 Ides Film Holdings, LLC
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民主党の次期米大統領有力候補マイク・モリスの選挙キャンペーンを牽引する広報官スティーヴン。
天下分け目のオハイオ州予備選が一週間後に迫るなか、
彼はライバル陣営の選挙参謀ダフィから極秘で呼び出される。
ダフィと密会したスティーヴンは、引き抜きの話を持ちかけられる。
同じ頃、スティーヴンは、選挙スタッフに加わっているモリーと親密な関係になる。
やがてこのふたつの出来事が、順風満帆だったはずのスティーヴンのキャリアを脅かし、
選挙戦そのものに大きな影響を与えていく・・・。
『コンフェッション』(02)、『グッドナイト&グッドラック』(05)に続く、
ジョージ・クルーニー監督第3作目。
先日、スーダン大使館前での抗議活動中に身柄を拘束されたぐらいなんで、
ジョージ・クルーニーは政治への関心が強い。
かねてからリベラルであると自称し、民主党支持派であり、
オバマ大統領の選挙選でもチラホラと名前が見受けられた。
そんなジョージー・クルーニーが、フィクションだとはいえ、アメリカ大統領選の裏側、
しかも民主党側を描くというだけで、なかなか興味深い。
アメリカのみならず、世界に大きな影響を与えるアメリカ大統領。
いわずもがな日本だって、アメリカとの関係は濃密だ。
ゆえに、アメリカ大統領選は他国の出来事だからと無関心でいられるものではない。
それなりに関心を持っておくべきことだと思う。
しかしながら、そうは言っても細かいことまで分からないかもしれない。
小生も詳しいわけではない。
民主党、共和党のそれぞれの党内でまず選挙を行い(予備選)、
その選挙の当選者が各党の代表者となり、その2人でまた選挙を行い勝った方が大統領となる(本選)。
県大会を勝ち抜き、全国大会である甲子園で優勝を目指す高校野球に似ているなぁ程度のレベルだった。
そんな乏しい知識しかない中で見たけど、まったく問題なかった。
上記プラス、タイトルにもなっている「スーパー・チューズデー」の意味を押さえたら、
より楽しめると思う。
ということで、簡単に映画の資料を基に説明しておきます。
本選の前の1年前から予備選がスタート。
2月から3月にかけて、毎週水曜日に連続して各州で予備選が行われる。
中でもNYやカリフォルニアといった大きな州で同時に予備選を行う日があり、
その日を「スーパー・チューズデー」と呼ぶ。
『スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜』は、
そのスーパー・チューズデーに向けて激化する時期の選挙戦の内幕を描いている。
映画の主人公スティーヴンは、民主党代表のマイク・モリスの主要スタッフであり、
彼を信じ、尊敬し、情熱を持ってサポートしている。
しかし、ある出来事がきっかけとなり、窮地に立たされる。
観客はスティーヴンの目を通して、選挙戦のダークサイドを垣間見ることになるんだが、
これは選挙に限ったことではない。
きっと政治全体や企業内でも、表には出てこない裏切りや裏取引、権力抗争といった、
アンタッチャブルな話があるはずだ。
ある程度の賢さと狡さがないと生き抜いていけない世界が、
この世の中にはたくさんあると思う。
幸いなのかどうかわからないが、小生はそんな立場ではないのですが、
窮地に陥るスティーヴンにしっかり感情移入させられ、ハラハラドキドキした。
立場は違えど、主人公にしっかりと感情移入させるのは、
監督の手腕か?
役者も素晴らしく、
スティーヴンを演じたライアン・ゴズリングの演技にはゾクゾクさせられた。
冒頭とエンディングが対比になっているんだけど、
スティーヴンの表情がまるで違う。
その表情の変化に大注目。
マイク・モリスを演じたジョージ・クルーニーもはまっていた。
モリー役のエヴァン・レイチェル・ウッドも魅力的。
この他、フィリップ・シーモア・ホフマン、ポール・ジアマッティ、
マリサ・トメイ、ジェフリー・ライトと演技派が勢ぞろい。
彼等が演じるのは、
一筋縄ではいかない政治の世界に身を置いた曲者たちばかり。
全員裏があるので、これぐらいの役者が演じないと説得力がないのでしょう。
社会派、しかもよく分からない大統領選だから・・・
というだけの理由で本作をパスするのはもったいないです。
人間ドラマとしても、サスペンスとしても楽しめるエンターテイメント作品。
さらに処世術の参考になるかもしれません。