『ジョン・カーター』
2012年4月13日より全国にて
配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
©2011 Disney. JOHN CARTER TM ERB, Inc.
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ひょんなことから神秘の惑星“バルスーム”へと行き着いた地球人ジョン・カーター。
地球を凌駕する高度な文明を持ったこの星は、
全宇宙を支配しつつある“マタイ・シャン”によって滅亡の危機に瀕していた。
愛する妻と娘を失い無気力状態のジョン・カーターだったが、
やがてバルスームの人々と心を通わせ、マタイ・シャンとの戦いに挑む。
ウォルト・ディズニー生誕110周年を記念し、
2億5000万ドルの巨費を投じて製作されたSF超大作。
先日、『カットスロート・アイランド』を抜いて、
過去最高の赤字映画になる可能性があると報道されたことでも注目を集めた作品。
『カットスロート・アイランド』の世界興行収入記録が不明なんだが、
アメリカ国内だけをみると、10,017,322ドル。
製作費が98,000,000ドルなので、約90,000,000ドルの赤字。
『ジョン・カーター』は、4月9日時点での全米の興行収入が67,973,000ドル、
全世界では263,573,000ドル。
ということで、全世界規模では制作費の回収を既に済んではいるが、
アメリカ国内では、今後多少増えるにしても現時時点で約1億8000万ドルの赤字。
広告費を含めれば、赤字額は更に増える。
それを差し引いたとしても、アメリカ国内史上、最大の赤字映画となる可能性は高い。
このような不名誉な栄光を手にした作品だけに、
ポンコツ映画かと思われてしまうかもしれないが、
決して、そんなことはなくて、至って普通な作品。
しかし、実はこの「普通」こそが、この作品の致命的な欠点だと思う。
娯楽大作を期待すると物足りないし、
逆にツッコミ所を求めて見ると該当するようなシーンがあまりない。
学校の成績表に置き換えるとオール3。
勉強は出来ないけど、体育だけは5という体育優良児でもない。
タイトル・ロールのジョン・カーターを演じたテイラー・キッチュは、
このところビッグタイトルへの出演が続き注目株なんだけど、
すでに30歳だし、大型新人という新鮮さはない。
かといって超大作のメインを張るには・・・。
(アメリカの場合、こういうキャスティングはよくあるけど)
あと今回の役柄上仕方がないことなんだが、
ちょっと汚ならしい容姿も割りを食っているような・・・。
(もちろん、ワイルドな男性が好きな女子も多いでしょうけど)
男も惚れるいい男かと問われれば、個人的には・・・。
(もちろん、ムサイ男性が好きな男子もいるでしょうけど)
ちょっと雰囲気は、『スピード』のキアヌ・リーブスを思い起こさせる。
『スピード』の時、キアヌは30歳。
キアヌもテイラーもそこそこキャリアがあって、
30歳で超大作に出演したわけだが、
本作においてのテイラーには、『スピード』の時のキアヌほどのインパクトがないように思う。
ヒロインを演じたリン・コリンズは、好みが分かれるところだが、
小生の嗜好としては微妙でした。
そして、勧善懲悪モノで特に重要となるのが、敵役なんだが、どうも足りない。
せっかくマタイ・シャンをマーク・ストロングが演じるのならば、
子供がトラウマになるぐらい、もっともっと嫌味で、陰険で、ズル賢しくて、
憎ったらしい強烈なキャラクターに成り得たんじゃないかなぁ・・・。
変に知的過ぎ。
そのマタイ・シャンに操られる形になるサブボスのサブ・サンに扮したのは、
ドミニク・ウェスト。
好きな役者さんだけど、悪役としてはかなり印象薄。
一層のことサーク族のタルス・タルカスをモーションキャプチャーで演じたウィレム・デフォーを配役した方が、
良かったんじゃないだろうか?
ちゅうことで役者たちも、無難・・・というか、普通。
最新のVFXを駆使したビジュアルは、
俯瞰ショットとか、時たま「おぉ」と思わせるところもあったが、
いままで他の作品でもっと凄い映像を散々見せられているので、これまた普通。
慣れて怖いですね。
物語は冒頭、惑星バルスームの情勢説明から始まり、
このまま惑星で話が進んでいくのかと思ったら、
突如、1881年のニューヨーク、更には南北戦争の時代へと飛んでいく。
ここからどうやって舞台を惑星バルスームに移すのか?という興味を引く。
しかし、惑星バルスームに移ってから、テンポが悪くなる。
特にジョン・カーターが、とある河に行く下りは退屈で睡魔という敵が襲ってきた。
なんとか睡魔を切り抜けた後は、徐々に加速し、
クライマックスはそこそこ盛り上がる。
序盤に置いた布石にも、しっかりとオチをつける。
その分、中盤のもたつきが悔やまれる。
監督は『ファインディング・ニモ』、『ウォーリー』のアンドリュー・スタントン。
オスカーを2度受賞するぐらいの演出力があって、描写も丁寧な監督さんだが、
今回はその丁寧さが返ってアダになってしまったのかも?
上映時間133分。
2時間以内に収めたら丁度良かったかも。
ずば抜けて良い点も悪い点もない。
鑑賞後、宣伝担当の方に感想を聞かれたが、話すべきネタがなかなか出てこなくて、
「う〜ん・・・」と言葉に詰まってしまった。
見ている最中アレコレと考えていたんだが・・・。
ということで本当に普通な作品でした。
でも、『ジョン・カーター』は、ちびっ子がトキメキそうな作品だ。
最近は大人の鑑賞に堪えうるSF映画が増えてきているので、
これぐらいのライトな方が、ちびっ子には良いんじゃないかなとも思う。
そういう作品があっても良い。
最後に、3Dで見たのですが、2時間越えの長編にも関わらずそれほど疲れませんでした。
体調が良かったのか、環境が良かったのか、映像の作りが良かったのか。
どうなんでしょう?